一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

被告人質問 (模擬裁判体験記13)

2007-12-07 | 裁判員制度
ようやく1日目最後の予定の被告人質問までたどり着きました。

被告人が証言台に立ちます。
最初は弁護側からの質問。

例によって質問事項をそのまま書いた詳細な書面が配られます。
でもそれをそのまま質問せずに、飛ばしたり詳しく訊いたりするので、かえって混乱してしまった感もあります。

質問内容は被告人が事件を起こした廃品回収業者で働くようになった頃からの話、志村さんとの昔からのつきあい、疎遠になった事情(被告人はよくわからない)というあたりから入ります。

そして当日の行動をまずは飲酒量を中心に質問するところから入ります。

仕事から帰ってきてから食事をせずに缶入りのウイスキー水割り(250ml)を2,3本飲んだあとに、飲みたりないのでコンビニに寄ったところ(そこで缶チューハイ(350ml)を2本飲んだ)志村さんが自分と別の友人と楽しそうに酒を飲んでいたことに腹を立てた心境などを語ります。

そして
・コンビニから帰ると、志村の部屋に行った。詳細何を話したかは細かくは覚えていないが、一度話をつけようと思った。
・包丁を持ち出したのは脅かしてやろうと思ったため。
・寮から出てきた志村さんは被告人に「何の用だ?」とぶっきらぼうに訊いたので、被告人は腹を立てたものの、そのときちょうど殺意があったとは言えない。
・また、被告人は志村さんを刺して傷つけてしまったが、最初から「殺してやろう」という意図は全くなかった。
・刺した瞬間のことは記憶がない。おそらくかなり酔っていたせいだろう。
・志村さんには申し訳ないことをしたと思っている。
・今回実刑になると廃品回収会社をクビになってしまう
と話しました。

弁護側の主張「普段より酒に酔っていた。犯行自体は詳しくは覚えていないが、殺す意思はなかった」ということをきちんと主張していました。


次は検察官の質問。
これもレジュメが配られます。
こちらは例によって簡潔な項目に分けて。
裁判ではなくて仕事のスタイルとしては、私は検察官の方が好感を持てます。
また、前に触れた判例時報の座談会の下馬評に反し「書面主義から口頭主義・直接主義に」というスタイルの変化を検察官の方がきちんと踏襲しているのが印象的でした。

質問内容は

・酩酊度合いについて
仕事が終わったあと居酒屋で飲んだ(16時頃)あと、一度寮に帰って、加東さんに豆腐の差し入れをし、そのあとなじみのホームレスに空き缶をあげに行った、という被告人の行動を確認します。最初の飲酒と二度目の飲酒の間に時間が開いていたこと、間にきちんと正気の行動を取っていたことを立証し世としています。

・コンビニから戻った後包丁を持ち出した心境
コンビニで知らない人と楽しげに酒を飲んでいる志村さんを見て不愉快に思ったこと。外に呼び出すときになぜ包丁を持ち出したか。
少なくともそのときに脅そうというつもりはあったんでしょう?という質問に対し被告人は「はい」と答えました。

・現場でのやり取り
刺したことを「覚えていない」というが本当か、弁護側の主張のように「もみ合いになって刺さった」というのならもみ合ったことは覚えているのか、と、ここのところは執拗に尋問します。
被告人も最後に「もみ合いになったような記憶はある」と認めるに至ります。

・加藤さんとのやりとり
加東証言を補強するような尋問内容です。

・現場に到着した警察官とのやりとり
ここにくると被告人の記憶がなぜか戻ります。


最後に裁判官・裁判員の質問

肝心のところだけ記憶がない、というところに質問が集中します。
かけつけた加東さんに「志村を殺す」と言ったことについても(加東さんがかけつけてきて止めに入ったこと自体)覚えていない、と言います。

証言内容自体は不自然なのですが(まあ、模擬裁判なのである程度は仕方ない部分もありますが)被告人役の受け答えからは訥々とした人柄がしのばれ、そんなに悪い人ではないのではないか、という印象を受けてしまいます。


ちょっといじわるな素人質問をしてみました。

「貴方は『刺したのを覚えていない』と言いますが、同時に『反省している』とも言ってます。覚えていない何について反省しているんですか?」

被告人は困った顔をして口ごもってしまいました。
傍聴席の弁護士と思しき人がのけぞってウケているのが見えます。

あとで評議室で休み時間に裁判長から聞いたところでは、この「反省」というのはお約束事で、完全否認の事件でない限りは情状を少しでも有利にしようと、必ずするものだそうです。

主張が認められなかったときの「予備的な反省」というのは、お約束事にしても妙な感じがしますが、考えてみれば妙に突っ張って有罪にされたときに心象が悪いのも不利ですよね。

こういうところにも「大人の世界」が顔を出すわけですが、皆が言うならあまりプラスの効果はないような感じもするように思いました。


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