一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「経済の麻生」だったんだ

2008-11-14 | まつりごと

せっかくのチャンスなのでがんばっていただきたいと思うのですが。

14日から金融サミット 政権浮揚へ試金石、「外交・経済の麻生」アピール
(2008年11月14日(金)08:05 産経新聞)  

首相は13日夜、首相官邸で記者団に、これまでアジア欧州会議(ASEM)首脳会合や電話で各国首脳と会談を重ねたことに触れた上で、「日本への期待が大きい。日本の経験を示し、みんなのお役に立てるようにしたい。金融危機を脱出しないと実物経済の影響がさらに大きくなるので、これは避けたい」と語った。  
首相は9月の就任とともに直面した米国発の金融危機対応で、主導的役割を果たすことに強い意欲をみせてきた。周辺は「日本が比較的安定しているうえ、日本が不良債権処理で金融危機を克服したことが首相の自信になっている」という。「失われた10年」を経験したからこそ、責任も資格もあるという自負だ。首相がサミットで表明する国際通貨基金(IMF)への最大1000億ドル(約9兆6000億円)規模の資金拠出は象徴的意味合いを持つ。

「不良債権処理で金融危機を克服したこと」以上に「不良債権処理や金融危機克服に手間取った経験からの教訓」とストレートに言ったほうが話に説得力があるのではないかと思います。
さらにIMFに資金拠出するだけでなく政策的提言までしないと「金は出すけど汗はかかない」というどこかで聞いたようなことを言われるのがオチではないかと。

汗をかくなら戦闘支援でではなく、金融支援でかくべきだと思います。
ただ、そのための人材の方が少ないのかもしれません。

それに、金融危機克服が最優先といいながら、国内では給付金を進めるような人に国際経済の運営で指導的役割が期待されるのでしょうか。
お金の供給元である金融機関が滞って経済全体に回らなくなっているときに、出口である個人にお金をまくのは、用水路を整備する代わりに一回だけ畑に水をまきましょう、というようなものだと思うのですが。


最悪でも「比較的安定している」日本がそんなことでどうする、などと言われないようにしていただければと思います。


 

コメント (2)
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ババ抜き

2008-11-14 | あきなひ

8月のエントリで取り上げていた話の後日談のニュースがありました。

旧グッドウィル老人ホーム、耐震強度不足 都が是正指導
(2008年11月12日(水)19:00朝日新聞)

旧グッドウィル・グループ=GWG(現・ラディアホールディングス)=が東京都世田谷区に開設した有料老人ホーム・バーリントンハウス馬事公苑の耐震強度が不足していることが都の調査で分かった。

国土交通省のリリースはこちら参照。
これは2007年当時、まだ元気だったマンションデベロッパーのゼクスが多角化のために取得したものの、設計との食い違いが発覚し耐震性に疑義が生じて売主のグッドウィルと協議していました。
しかし一方で、ゼクスも本業の業績不信から経営改善の一環として有料老人ホーム事業をリストラせざるを得なくなり、資本提携を前提に分社化しすることを計画しているという苦しい状況に陥っていました。  

その後の経緯を見ると、資本提携についてはこのような物件の中途半端さにもかかわらず、無事8月29日に第三者割当増資による資本提携が実現したようです。
株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズとの資本提携に関する覚書締結の件当社孫会社の第三者割当増資完了に関するお知らせ
 

ところでその後、肝心の物件は耐震問題を抱えたまま売主との間でトラブルになってしまいます。
固定資産の譲渡契約の解除に関するお知らせ
(2008年10月21日 ラディアホールディングス株式会社)  

当社が保有するバーリントンハウスの固定資産(住宅型有料老人ホーム2 施設)は、2007 年 9 月21 日にゼクスと不動産売買契約を締結後、諸手続きが整うまでの間、物件の引渡しを延期し、ゼクスの子会社であります株式会社ゼクスアクティブ・シニアと定期建物賃貸借契約を締結し、同社にて施設運営を行ってまいりました。 
しかしながら、2008 年7 月26 日以降の期間については、定期建物賃貸借契約の締結、賃料の支払がなされなかったことから、・・・不動産売買契約は解除されました。  
施設運営に関しては十分配慮し、現在運営を行なっておりますゼクスアクティブ・シニアと協議してまいります。  
また、当該物件バーリントンハウスの現状建物と図面等に一部不整合と思われる箇所が見つかりました件につきましては、現在検証中です。結果が分かり次第速やかに開示いたします。  

これに対して 
「ラディアホールディングス(旧、グッドウィル・グループ)の固定資産の譲渡契約解除に関するリリースに対する当社見解」
(2008年10月21日 株式会社ゼクス)

・・・平成19 年11 月になってBH馬事公苑及びBH吉祥寺の双方に耐震性に関する重大な疑義が発生致しました・・・が、ラディア側からの強い要望に基づき、・・・予定通り・・・BH馬事公苑・BH吉祥寺の所有権はラディアへ残したまま、㈱コムスンから事業の承継を実行いたしました。 
・・・事業主体とBHの所有が異なることに対応するため、事業を承継した株式会社ゼクスアクティブ・シニア(「ZAS」)は、・・・BHをラディアから賃借しました。  
・・・弊社は、当初2~3 ヶ月程度で耐震性に関する疑義が解消されると想定しておりました。しかしながら、実際は現在に至るまで11 ヶ月間にも及ぶ長期間、必要な資金を負担してBH事業の運営を継続し、その間の損失金額は現時点で累計金 12 億円を上回っており・・・ます。 
以上の背景により、損失のすべてを耐震疑惑に関し何の落ち度も無い弊社のみが負担するという不公平を是正すべく、同社に対し賃借料の支払い条件の変更等を踏まえた賃貸借契約の締結を要求してまいりましたが、それが拒絶されたため、賃貸借契約の不締結という事態が生じてしまいました。  
BHの建物のいずれかに耐震性に関する建築基準法第20 条違反が明らかになった場合、弊社が売買契約を解除することが出来ること、及び事業の承継に弊社が要した費用の一切を償還請求できる旨、当事者間で平成19 年11 月30 日に合意されています。ラディアの解除通知は行政判断が出る直前の段階でなされたもので、行政判断による抜本的解決を回避しようとする不当なものであります。
・・・しかしながら、弊社はこの問題で入居者の方々に御迷惑をお掛けすることは全く本意ではありませんので、固定資産譲渡契約の解除の問題とは別に、ラディアとBHに関する賃貸借契約を一刻も早く締結する所存でございます。  

要するに耐震の瑕疵担保リスクを押し付けあってのケンカということですね。 

お互いに本業が大変なのでこんなことで手間暇かけて争っている場合ではないようにも思いますし、争い方も大人げないですが(まあ、紛争になるのは大体大人げない対応がこじれることが多いですけど)、逆にそれだけお互い少しの損も出せないという徳俵に足のかかった状態なのかもしれません。  

ゼクスとしてはBHの2物件の介護事業(賃貸借契約)自体も締結せずに足抜けしてしまえばいいようにも思いますが、高級物は事業としてはドル箱なので捨てるわけにはいかないとかジェイ・ウィル・パートナーズとの提携の前提となった事業計画にも織り込んであるので捨てるわけにはいかない、という事情があるのかもしれません。  

一方で資本提携をしたジェイ・ウィル・パートナーズも既にわかっていたBH2物件の耐震リスクは織り込んで増資に応じたはずですが、ゼクス側はけっこう後手に回っています。
ジェイ・ウィル・パートナーズは、上のリリースによれば「日本政策投資銀行を含む本邦国内機関投資家および年金基金などが出資する合計約2,000 億円のファンドを運営し、シニア事業・ヘルスケア事業への豊富な投資実績を通じて培われた幅広い知見とネットワークを有している」会社だそうです。
この資料を見ると、ジェイ・ウィル・パートナーズは「地域再生ファンド」と銘打って地方銀行の不良債権の飛ばしオフバランス化(による外部の力を使った再生)をやっているようで、政策投資銀行、地方銀行、年金基金など比較的緩め鷹揚な投資家が多そうです。


実は最後にババ(Joker)を引いてしまっているのは彼らなのかもしれません。


※ タイトルはこのオチのためで、老人や介護施設を揶揄する意図はありませんので念のため。


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