一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

パナソニック、三洋電機へTOB

2008-11-03 | M&A

このニュースを見て改めて我が家を見わたしたところ、パナソニック製品も三洋製品もほとんどなかった(ドライヤーくらい)のが意外でした。

パナソニックの子会社化合意 「三洋」ブランド存続 金融3社とTOB価格詰め
(2008年11月3日(月)08:05 産経新聞)

パナソニックが三洋電機を子会社化することで、両社首脳が基本合意したことが2日、分かった。三洋の社名やブランドを残し、雇用も維持する方針で、7日にも正式発表する。パナソニックはTOB(株式公開買い付け)による年内の子会社化を目指しており、連休明けの4日から三洋の主要株主の金融機関3社と具体的な協議に入る。

今後は、パナソニックが三洋の企業価値に基づき、TOB価格をいくらに算定するかが、最大の焦点となる。
金融3社の一部は三洋株の高値での売却を主張しており、交渉が難航する可能性もある。

三洋電機は三井住友銀行、大和証券SMBCグループ、ゴールドマン・サックスグループの3社が優先株を引き受けていて普通株換算で約7割の議決権を持っているので、金融3社が応じるか否かがTOBの成否を分けるわけです。

ただ、金融商品取引法上は、大株主との「TOBに応じる」という合意が「売買予約」とみなされると市場外取引=TOB規制違反になる可能性があります。
しかし、友好的TOBを大株主への事前打診なくガチンコでやるのも現実的ではないので、「売買予約契約成立に至らない程度の事前打診と意向の表明」あたりにとどめているわけです。

また、インサイダー取引の問題もあります。
金融3社が三洋電機の未公開の重要事実を知ってTOBに応じた場合や、逆にパナソニックが金融3社との「交渉」において重要事実を知ってそれをそれが未公開のうちにTOBをかけた場合はインサイダー取引規制に該当します。
後者についてはTOBの直前に三洋電機から公表してもらえばいいのですが、金融3社側はパナソニックとの交渉にあたって開示したものに限らず知っている経営情報が重要事実に該当する可能性があるので、なかなか微妙です。
特に価格交渉においては不利な材料は必要以上には提示しないのが一般的である一方で、「重要事実」の認定が村上ファンド事件に代表されるように厳しくなっている中で「パナソニックとの交渉では言及しなかった(当然三洋電機からの公表もない)もののなかで重要事実に該当するものがない」という「悪魔の証明」をしないと完全には安心できないというのはなかなかしびれるものがあると思います。

理屈で言えばそうなってしまうのですが、全くの事前打診なしでやるというのも現実的でないので、結局このへんはそれぞれの当事者の法律的立場に配慮していわば「プロレス」でないと成り立たないということになります。

だからこそ「友好的TOB」と言うのかもしれません。


逆に言えばこのへん重箱の隅をほじくれば、(裁判で有罪にはできなくても)なんらかの因縁はつけることができるわけで、検察や証券取引等監視委員会に目をつけられないように普段から品行方正にしていることも大事といういことですね(これを裏返せば「国策捜査」を是認することになってしまいますか(汗))。
今回は関西の「大店」同士の話なので、検察や証券取引等監視委員会が最初から目をつけたりはしていないとは思うので、そのへんの安心感はあるんでしょうか。

もっとも、検察として、今までの「プロレス」のレベルがやりすぎだ、という状況認識があれば別かもしれません。
また、三洋電機の創業家の経営陣からの追い出しの後遺症でお家騒動体質が残っていると(真偽は別としての)内部告発のリスクがあるかもしれません。


さらに、今回のように報道が先行すると配慮しなければいけない要素が増えるので、そっちの面もやっかいですね。
特に今回のように追加報道が重なってくると、証券取引所からも「TOBするなら早く公表しろ」と矢のような催促がくるでしょうし(報道のように7日発表だとすると週明け宙ぶらりんの日数が多すぎますね)。


コメント
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