一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「伝家の宝刀」の抜き方

2007-06-08 | あきなひ
前の記事は経営者はいざとなったときの毅然とした態度やアピアランスも重要という話をしたのですが、その逆を行っているのがグッドウィルグループですね。

折口社長はあの「悪役顔」のうえに、面会するにはセキュリティチェックを7回も経なければいけないとか、エピソードには事欠かないようです。
介護問題では不正のありようはかなり悪質なようですし、マスコミが例によって袋叩きモードになっているのでこちらのほうはこの程度にしておくとして、(もっとも2000箇所にのぼる非正規労働者がほとんどの拠点を、収益目標を与えながら営業の適正さを確保するためにいかに内部管理体制を構築するかというケーススタディとしてはもっと分析してみる価値はあると思いますが)気になったのが厚生労働省のスタンス。


最近行政の許認可・監督業務における裁量の広さと基準のあいまいさや世論を意識したかのような厳罰化が進んでいるように感じますが、今回もその流れの一環のような印象を受けました。


今回、すべての営業拠点の指定停止と更新拒否という、ほとんど退場を迫る中で、事業譲渡を取りやめるよう行政処分したうえで「更新までは営業の継続を」などと求めていますが、それは企業の自発性に期待するもので、経済原則からは無理がある要求だと思います。
そもそも次に事業の認可が得られないことが確定している事業者が、なんで所管官庁の言うことを聞くと思うのでしょうか。

もともと巨額の不正請求を今まで見逃していたことの挽回だか言いわけだかのために厳しい処分で帳尻を合わせようという魂胆が透けて見えるような気がします。
そうでなかったとしたら、単に監督権という「伝家の宝刀」の抜き方を間違えた
のでしょう。


消費者にとってはサービスの継続性が重要な事業なのですから、そもそも処分の仕組みにしても、営業の承継・継続が可能(またはそれを義務付ける)ような監督処分の方法を取るべきなのではないでしょうか。
制度設計としても、たとえば保険金の不正受給であるなら懲罰的な罰金を科す(利益優先の会社には効果があると思います)とか、行政刑罰を重くして入れて経営陣の自覚を促すというようなメカニズムがあってもいいと思います。


もともとはどの業種の許認可の枠組みから持ってきたしくみなのかはわかりませんが、たとえば医療機関のように数が十分多くて代替がきくのであれば、保険診療機関指定の取り消しなどの退場処分をしてもそれほど混乱はないと思いますが、大手数社の寡占+小規模事業者という組み合わせでしかも労働集約的な業種でいきなり「おとりつぶし」をしてしまうと結局消費者が困るわけで、そのへん業種や業界の性格や構造を念頭に置いた制度設計であり今回の処分だったのか、という疑問が残ります。

厚生労働省では対策本部を設置するようですが、そのこと自体が監督処分の妥当性への疑問や制度の不備を浮き彫りにしてはいないでしょうか。
コメント (2)
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ブルドックソースの矜持

2007-06-08 | M&A

頭の上の蝿を追うのに精一杯で世の中の動きについていけていないここ数週間ですが、いろんなことが起きていました。

ブルドックソース(「ブルドッグ」じゃないんですね)がスティール・パートナーズ(これは既出のネタですが、"steal"でなく"steel"なんですね)のTOBに対する買収防衛策の実施を決めました。

ブルドックソースの買収防衛策は(参照)は今月末の株主総会で特別決議を経て定款変更決議をする、というガチンコのものです。

以前にも書いたのですが、個人的には定款変更(=特別決議)でなく取締役会で導入を決議した上で行う株主総会での「宣言的決議」というのに違和感を感じているので、このブルドックソースの姿勢は立派だと思います。
(「男気」と書こうと思っていたのですが、9時のニュースを見たら、女性社長なんですね。しかも池田章子社長はインタビューにも臆することなく堂々としているところは非常に立派でした。なので、「矜持」と言い換えさせていただきます。)

上のブルドックソースのリリースを見ると、スティール・パートナーズへの質問の回答が、TOBに賛同するに至るほどのものでなかったということでしたので、スティール・パートナーズの回答(参照)を見ました。
確かに説得力のない、あたかも自らをグリーンメイラーと言わんばかりのものでした。  

SPJSFは、日本において会社を経営したことはなく、現在、その予定もありません。SPJSFは、多くの会社に対し投資を行う投資家であり、経営陣に対してその事業計画を実行する時間を与え、必要な場合には彼らと協働することを目指しております。SPJSFは投資した会社の日常的な業務を自ら運営する意図はありません。SPJSFは、当該事業計画が達成されなかった場合は経営陣に説明責任を求め、事業計画を上回る業績をあげた場合には彼らに報奨を与えるべきだと考えております。我々の目的は、経営陣に歓迎され、かつ、成功、公平性、規律、権限委譲及び説明責任を有するオーナーとなることです。  

現時点においてSPJSFは対象者の経営を行うつもりはありません。本公開買付けの結果によって取得する我々の株式保有割合に関係なく、現段階では、対象者の日々の業務を行う経営者としてではなく投資家として行動する予定です。しかしながら、我々の可能な限りの専門知識及び資源を提供するつもりであります。  

我々は、場合により、ある企業の一部ではなく全部を所有する長期的な機会があると判断するときに、投資対象企業の全株式(オーナーシップ)の100%取得を試みます。対象者に関する公的に入手可能な情報を精査した結果に基づき、対象者がその事業を発展し続け、株式価値が増すことを確信するに至りました。よって、我々は今が対象者の全株式(オーナーシップ)を100%取得するのにふさわしい機会であると決定した次第です。  

本国の承認を得るためなのでしょうが、英語でドラフトしたものを直訳にしているような文章も悪印象ですね。
弁護士の翻訳だと思いますが、弁護士の翻訳が直訳調になるのは仕方ないとしても、これを日本の株主にも理解されるような「色気」のある日本語に自分でリスクを負っても修正するような日本側のスタッフがいない、ということなんでしょう。

確かにそういう会社が支配株主になると、ロクなことにならないと思います。


ということで、本件はスティール・パートナーズ側は分が悪そうです。  

これをみて、結局経営陣の自らの経営に対しての自信と腹のくくりができていれば、それが一番の株主やマスコミへの説得力になるのではないか、と改めて思いました。

PS
特にTBSの経営陣のあたふたを見ると、その思いを強くしますね・・・

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