折口社長はあの「悪役顔」のうえに、面会するにはセキュリティチェックを7回も経なければいけないとか、エピソードには事欠かないようです。
介護問題では不正のありようはかなり悪質なようですし、マスコミが例によって袋叩きモードになっているのでこちらのほうはこの程度にしておくとして、(もっとも2000箇所にのぼる非正規労働者がほとんどの拠点を、収益目標を与えながら営業の適正さを確保するためにいかに内部管理体制を構築するかというケーススタディとしてはもっと分析してみる価値はあると思いますが)気になったのが厚生労働省のスタンス。
最近行政の許認可・監督業務における裁量の広さと基準のあいまいさや世論を意識したかのような厳罰化が進んでいるように感じますが、今回もその流れの一環のような印象を受けました。
今回、すべての営業拠点の指定停止と更新拒否という、ほとんど退場を迫る中で、事業譲渡を取りやめるよう行政処分したうえで「更新までは営業の継続を」などと求めていますが、それは企業の自発性に期待するもので、経済原則からは無理がある要求だと思います。
そもそも次に事業の認可が得られないことが確定している事業者が、なんで所管官庁の言うことを聞くと思うのでしょうか。
もともと巨額の不正請求を今まで見逃していたことの挽回だか言いわけだかのために厳しい処分で帳尻を合わせようという魂胆が透けて見えるような気がします。
そうでなかったとしたら、単に監督権という「伝家の宝刀」の抜き方を間違えた
のでしょう。
消費者にとってはサービスの継続性が重要な事業なのですから、そもそも処分の仕組みにしても、営業の承継・継続が可能(またはそれを義務付ける)ような監督処分の方法を取るべきなのではないでしょうか。
制度設計としても、たとえば保険金の不正受給であるなら懲罰的な罰金を科す(利益優先の会社には効果があると思います)とか、行政刑罰を重くして入れて経営陣の自覚を促すというようなメカニズムがあってもいいと思います。
もともとはどの業種の許認可の枠組みから持ってきたしくみなのかはわかりませんが、たとえば医療機関のように数が十分多くて代替がきくのであれば、保険診療機関指定の取り消しなどの退場処分をしてもそれほど混乱はないと思いますが、大手数社の寡占+小規模事業者という組み合わせでしかも労働集約的な業種でいきなり「おとりつぶし」をしてしまうと結局消費者が困るわけで、そのへん業種や業界の性格や構造を念頭に置いた制度設計であり今回の処分だったのか、という疑問が残ります。
厚生労働省では対策本部を設置するようですが、そのこと自体が監督処分の妥当性への疑問や制度の不備を浮き彫りにしてはいないでしょうか。