一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

イグ・ノーベル賞(その2)

2005-10-10 | よしなしごと

イグ・ノーベル賞の続きです。
(その1はこちら

文学賞
電子メールを利用して「大胆な短編物語(詐欺スパム)」を配信し、少ない資本で富豪を引き寄せ、かなりの金額を手中にしたナイジェリアの「インターネット起業家たち」とその協力者に授与。
内容的には

いわくつきの巨額の資金を隠し口座に有する人物が、メールの読者に小額の出資を求め、彼らの大金へのアクセスが確保できたあかつきには、その一部を分けてあげます。

というものです(実物ははこちら
相当有名な詐欺スパムということは、けっこうひっかかった人がいるのでしょう。

日本でも「M資金詐欺」というのがありましたが「M資金を融資する前提として配当を前払いさせる」のと同じ手口ですね。
冷静に考えればおかしい話だとわかりそうなものですが、こういう話は琴線に触れる要素があるのでしょうか。

あ、思わせぶりでプレゼントをおねだりする女性とそれに鼻の下を長くして乗ってくる男、という構図と同じか・・・


平和賞
「映画『スター・ウォーズ』の名場面集」を見ているバッタ脳細胞の電気的活動の観察」を行った、英ニューカッスル大学のクレアー・リンド氏とピーター・シモンズ氏に授与。




これって、何でバッタなのか、とか、何でスター・ウォーズなんだと疑問がふつふつとわいてくるのですが、リンド氏の研究の紹介を見ると、

私は、接近してくる物体の中で自分と衝突する物体のみに反応するというバッタの視覚システムの回路の研究をしてきました。私はこの生物学的なニューロンの働きを研究するなかで、これを入力回路の設計に使えないかと考えるようになりました。バッタの持つ能力の技術的な応用の可能性が認識されるようになったのです。
最近私は、チューリッヒにある"Institute of Neuroinfomatics"のいくつかのグループと共同研究を始めました。われわれは、バッタの衝突回避感知能力を基にしたモデルを、ロボットにおける衝突回避システムと、衝突予測のアナログ集積回路の開発に利用しようと考えています。

とまあ、非常にまじめな研究です。
要するに、「向こうから近づいて来てぶつかりそうになる画像」が必要だったのですね。

でも、将来ミサイル迎撃システムとかに応用できそうなので、「平和賞」とも言っていられないかも・・・


経済学賞
「何度も何度も逃げて隠れる目覚まし時計の発明」で、米マサチューセッツ工科大学のガウリ・ナンダ氏に授与。この目覚まし時計を使うことにより、寝ている人は起き上がって、目覚まし音を止めることが必要となる。その結果、理論上労働可能時間が増えた。

実物はこんなかんじ


Clocky is a clock for people who have trouble getting out of bed. When the snooze bar is pressed, Clocky rolls off the table and finds a hiding spot, a new one every day.

とあるように、ふわふわしているのでそのまま床に落っこちて走っていくのでしょう。

注目すべきは受賞者のガウイ・ナンダ氏、HPを見ると、MITメディア・ラボとミシガン大を卒業した御年25歳のなかなかの美人です。

(つづく)
(その3(最終回)はこちら

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イグ・ノーベル賞(その1)

2005-10-10 | よしなしごと

毎年ノーベル賞と同時に発表される「イグ・ノーベル賞」が今年も発表されました。

イグ・ノーベル賞とは、サイエンス・ユーモア雑誌"Annuals of Improbable Research"(「ありえねー研究年報」?)が主催する賞で、「イグノーブル(Ignoble。品がない、あさましいの意)」と、「ノーベル(nobel)賞」を掛けた名称になっています。
人をまず笑わせ、そして考えさせる研究、絶対に真似できない・真似すべきでない業績を対象に、本物のノーベル賞受賞者や各分野の専門家、たまたまそばを通りがかった人などが選考するそうです(詳しくはこちら

今年はドクター・中松が受賞したというので新聞記事ニュースにもなりました。

公式サイトで今年の受賞者を見ると、さすが、という研究が並んでいます。

農業史賞
ニュージーランド・マッセイ大学のジェームズ・ワトソン氏の、第一次世界大戦終了時から第二次世界大戦が始まるまでの期間で、ニュージーランドの酪農における技術変化の側面について考察した「リチャード・バックレー氏の爆発したズボンの重要性の研究」。

1931年、ニュージーランドの農村部で突然無差別に男達のズボンが爆発するという怪現象が発生した。あるズボンは真っ二つに裂け、あるズボンはくすぶって煙を上げた。たちまち各地で同じ事例が報告され、ズボン爆発は全国を恐怖に陥れた。原因は、揮発性のある農薬が、綿など天然素材と化学反応を起こして発火したことだと後に判明した。この事件が農夫のズボンや農薬など様々な技術を改善させた。

のだそうです。

これはけっこうまともな研究ですね。
現象の面白さと論文の題名のお茶目さが受賞にふさわしいと評価されたんだと思います。


物理学賞

オーストラリア・クイーンズランド大学で1927年から続けられている「粘度が高いタール(石油ピッチ)の滴が落ちる様子を観察する実験」に対し実験を始めた故トーマス・パーネル教授と、実験を続けている同大学のジョン・メインストーン教授に授与。実験では、1滴のタールが落ちるのに、平均約9年かかっている。

名著『ゾウの時間・ネズミの時間』で同じ水中を泳ぐ場合でも人や魚にとっては水は流体抵抗として作用するが、極小の生物(ミジンコなど)には粘性抵抗として作用するという話があったような記憶があります。そのように、物体の性質は関係性によっても変わってくるので、個体と液体の境界上にある物体の性質の研究というのも重要なのでしょう(特に天然資源の豊富なオーストラリアですし)

話はそれますが、「境界線上にある物質」で思い出したのは、石垣島空港のゴミ箱が「燃やすゴミ」と「燃やさないゴミ」と表示されていたこと。
東京では「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」と言っているのですが、そもそも何であろうと十分な酸素と高温があれば物質を「燃やす」(=酸化させる)ことは出来るらしいのですが、焼却炉の性能によって自治体によって区分が異なるらしいです。なので「燃やすゴミ」という方が意志を感じるのでいいかもしれませんね。

ところで、故トーマス・パーネル教授はこの実験を48歳のときに始め、1948年に69歳で亡くなっているので、存命中は2滴の落下しか観測できなかったということになります。
スケールの大きな研究ですね・・・


医学賞
3種類の大きさ、3種類の固さが選べる去勢犬用の人工睾丸「Neuticles」を開発した米ミズーリ州オークグローブ在住の事業家グレッグ・ミラー氏に対して。

同氏は約10年前から販売を開始し、これまでに15万個以上の売り上げがあったという。人工睾丸には犬以外の動物向けの製品もあるという。ミラー氏は「両親の考えでは、子供のころの私はバカだった。受賞は光栄だ。両親が生きていて、受賞の様子を見てもらえればよかったのだけれど」と、しみじみ語った。

飼い主の気持ちをうまくくすぐる商品だと思います。
それとも人工睾丸をつけることで犬も「俺はタマなしでないぞ!」と精神的に元気になったりするのでしょうか?
ひょっとしたら走る時のバランスとかに微妙に影響するのかも。

(つづく)

※ 毎度の事ですが、話が横道にそれてしまって予想外に長くなってしまったので、続きは次回に。

(その2はこちら

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