一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「ドキュメント 戦争広告代理店」

2005-10-20 | 乱読日記
「ドキュメント 戦争広告代理店」というおどろおどろしい題名ですが、中身はいたってまともです。
「オリエンタリズム」の後の通勤用図書として気分転換に「下流社会」に続いてはドキュメントを選んだのですが、かなり面白く、3日で読了。

ボスニア紛争において、ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国と契約したPR会社が、どのように世界中をセルビア非難に向かわせたかの過程を追ったドキュメンタリーです。
筆者はこれをテーマにした「NHKスペシャル」のディレクターで、番組も評判になっただけでなく、本書も講談社ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞を受賞しました。

ここに描かれているのは、決して虚偽を捏造するのでなく、クライアントに有利な(側面から見た)情報を世界中のメディアと政界のキーパーソンにいかに効果的に届けるか、ということについて徹頭徹尾実践的に行動するPR会社の姿です。

ボスニア・ヘルツェゴビナの外務大臣のスピーチの草稿やインタビューの受け答え方の指導、要人との会談のセットから、セルビアの悪者イメージを決定的にした「民族浄化(ethnic cleansing)」「強制収容所」というキーワード(ナチスを想起させながらも、ユダヤ人からの「同列に扱うな」という批判に配慮して「ホロコースト」や「大量虐殺(ジェノサイト)」という言葉はあえて使わなかった)の発掘から利用までとにかくその手腕には感心します。

それは「世界を陰で操る」とか「情報操作」というの世界ではありません。
考えてみればあたりまえのことなのですが、現代社会においてもマスメディアや政治家・官僚はすべての情報をもれなく把握しているわけではありません。
なので、それらの人々にタイムリーに情報を提供し、関心の優先順位を上げるように(しかも反感を買わないように)働きかけるということがいかに大事か、ということを改めて感じさせてくれます。

言ってみれば情報の仲介機能を効率的に果たす、ということですね。


考えてみれば、誰もが完全な情報を持ってはいない、なので、自分の考えを伝えるには努力が必要、というのは、身の回りの恋愛からM&Aや外交問題に至るまで共通して言える事です。

なのに、実際は「自分の気持ちが何で伝わらないんだ」といらだってみたり、「相手はすべてお見通しなんじゃないか」と恐怖におびえてみたり、ということが到るところでくり返されるのは、人間の性なんでしょうか。
(そういえばシェイクスピアの作品などにもあるくらいですから・・・)


PS 本としてはとてもいいと思う一方で余計な勘ぐりなんですが、TV番組の取材を本にした場合の印税って個人に入るのでしょうか?それともNHKに入るのでしょうか?個人に入るとしたら、受信料制度の趣旨からいってちょっとおかしいと思いますが・・・



ドキュメント 戦争広告代理店

講談社文庫




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頭痛のタネ

2005-10-20 | 余計なひとこと
ふだん飲むアルコール量が多いと二日酔いのとき頭痛は起こりにくい

僕の所業の正しさがようやく証明されたわけです(^^)





PS 「国際頭痛学会」ってネーミングはなかなかいい味出してますね。
   正式には"International Headache Society"といい、1981年創立
  法人化(@イギリス)が1995年と、比較的新しいのは、やはり現代人の病気だからでしょう。



  日本ではそのうち財務省が「国債頭痛学会」を作るかもしれませんね・・・
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