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日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【39】(2024/6/29)

2024-06-29 00:25:21 | 桐生タイムス
日々のトレーニングが大事

 現在、訳了し、出版に向けてゲラ校正に備えている本が話題作を含めて6冊、出版の予定はまだないが英語に訳了した日本小説が1冊、すべてを終えて出版を待つだけの本が1冊、その上で急いで翻訳を進めている大作が2冊ある。まさしく自転車操業であるし、わたしの場合、本業(書籍編集)の合間を縫っての翻訳作業なので、最大限効果的な時間の使い方が求められる。だが、仕事をいただけるのは本当にありがたいことだし、何と言ってもわたしは「永遠の英語学習者」なので、さらに質の高い仕事ができるように、日々のトレーニングが重要だ。英文のニュース記事はなるべくたくさん読んで聞くようにしているし(毎週Asahi Weeklyは隅々まで読んでいる)、オンライン英会話で毎日レッスンしている。そして気になった英語表現は、第32回の本欄(2023年11月25日)でも紹介した18年間毎日更新しているブログ「GetUpEnglish」にまとめている。
 訳了している、出版に向けて待っているものはあるものの、契約によって現在は口外できないものばかりなので、今月の「永遠の英語学習者の仕事録」はGetUpEnglishに書いた記事から気になる英語を紹介したい(出版を公表してもよい本からは引用した)。

★   ★   ★

 第31回(2023/10/28)の本欄で紹介したDouglas Wolk, All of the Marvels: An Amazing Voyage into Marvel’s Universe and 27,000 Superhero Comics(2022)に、次の表現があった。 

Ever since then, Galactus has mostly been a presence of overwhelming, impossible catastrophe in Marvel’s comics, a world-exterminating force, older than the universe itself, against which there can be no resistance. His presence signifies that a story in which he appears is meant to be taking place on the level of what one character in Fantastic Four #49 calls “the great cosmic game of life and death.” Which is to say: he is all the way out of Squirrel Girl’s league.  
 以来、ギャラクタスはマーベル・コミックスにおいて抑制不可能な災害をもたらす圧倒的な存在として描かれてきた。宇宙創成以前から存在し、宇宙そのものを滅ぼしうる力を備え、何者の抵抗も許さない。このギャラクタスの登場によって、ひとつのストーリーが、『ファンタスティック・フォー〈49〉』のあるキャラクターが言うように、「偉大なる宇宙の生と死のゲーム」のレベルで展開する。つまり、ギャラクタスはスクイレルガールがまったく手に負える相手ではないのだ。

 最後のhe is all the way out of Squirrel Girl’s league.にご注目いただきたい。be out of …'s leagueは、「~とは格が違う、~には手が届かない」だ。次のように使われる。

"She’s out of my league, as she’s so intelligent and successful."
「彼女はすごく頭がよくて大活躍してるから、僕には手が届かないよ」
"The luxury car was out of my league due to its high price."
「その高級車は目が飛び出るような値段で、手が出なかった」

★   ★   ★

 mentalは大きくふたつの意味があり、ひとつは「心の、心的な、精神の、内的な」、もうひとつは「知的の、知力の、知能の、頭脳を使う」だ。
 英日翻訳においては大概このふたつの意味で状況に応じて処理すればよいが、「心の、心的な、精神の、内的な」の意味で使われている場合、たとえばSFなどの文脈ではよく考えて訳語を選ばないとまるで意味をなさないことがあるので注意しよう。
以下の文はどう訳せばよいか?

"The superhero's mental powers allowed her to move objects with her mind."
 
 たとえば、「そのスーパーヒーローは精神の力で物体を動かした」などとしたら、とても変だ。
 このmentalは「意志の力で」という意味で使われていると考えればよい。であれば、次のように訳せるだろう。
 
 そのスーパーヒーローは念力で物体を動かした。

 mentalを使った用例をもうひとつ挙げる。

"He practiced for years to develop his mental abilities, eventually mastering telekinesis."
「彼は何年も修練を積んで念力を高め、最終的にテレキネシスを習得した」

 本欄第35回(2024/2/24)に紹介した Marvel Anatomy: A Scientific Study of the Superhumanに、次の表現があった。 

The Human Torch can harness ambient atmospheric energy, sheathing his body in superheated plasma. Johnny Storm retains mental control of the positive ions and free-roaming electrons that surround him in this state, enabling him to isolate the flames to specific body parts or even just his fingertips. On average, the flame aura generated by the Human Torch’s plasma sheath extends up to five inches from his epidermis and burns at temperatures up to 780 degrees Fahrenheit. He has been observed to maintain his full-body flames for nearly 17 uninterrupted hours.
 ヒューマン・トーチ/ジョニー・ストームは周囲の大気エネルギーを操作し、自分の体を超高温のプラズマで包み込む。この状態で体を取り巻く正イオンと自由電子を超能力で制御し、炎を指先などの特定の部分に集中することができる。プラズマ・シース(プラズマ放電が作り出す空間電荷層)が作り出す炎は最大12センチほど広がり、最高温度約摂氏415度で燃焼する。炎に包まれたまま17時間過ごせることも確認されている。

 All of the   MarvelsMarvel Anatomyもすでに訳了し、ゲラ校正に備えている状態だ。前者はおそらく800ページ近く、後者は大判サイズ240ページの大作になる。校正もしっかりしなければならない。

GetUpEnglishは2006年4月1日に開始し、以来18年間、日々の更新は時々遅れつつも、1日も休まず更新を続けている。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2024年はジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』以降、話題書を含めて英日翻訳6冊刊行予定、日英翻訳も1点。



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