「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

死んだ人の臓器(もの) …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (23)

2010年09月01日 20時55分28秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○美和子の団地 (夜)

  美和子、 息せき切って 階段を駆け登る。
 

○佐伯宅・ 玄関

  喜び勇んで 玄関から家の中へ 駆け込む

  美和子。

美和子 「ジュン!!」
 

○同・ 淳一の部屋の前

  美和子、 走ってきて ドアをドンドン叩く。

美和子 「ジュン!!  あたし!  開けて!!」

淳一の声 「……何だよ、 騒々しい」

美和子 「聞いて、 いい知らせなのよ!」

淳一の声 「電気料金が 値下げにでもなった

 の?」

美和子 「移植ができるの!  ジュン、 助かる

 んだよ !!」

淳一の声 「………」

美和子 「ジュン、 聞こえた !?  脳死の人が

 肝臓提供してくれるって !」

淳一の声 「………」

美和子 「どうしたの !?  ジュン、 嬉しくない

 の !?  ドア開けて !! (戸を叩く)」

  おもむろに ドアが開く。

  強烈な光を背に 淳一。

  美和子、 思わず目を覆う。

淳一 「……… 姉キ、 おかしいよ ………」

美和子 「(目を押さえ) え …… ?」

淳一 「まるで、 その人が死んだの 喜んでる

 みたいだ ……」

美和子 「!? ……… ジ」

淳一 「オレ …… 受けないよ」

美和子 「え …… !?  何 …… !?」

淳一 「死んだ人の臓器 (もの)  もらってまで

 オレ、 生きたいとは思わない ……… (サン

 グラスをはずす)」

美和子 「(淳一の腕を掴み、 光が目に入らな

 い位置にやる) そんな …… !?  やっとの

 思いで ここまで来たっていうのに ……

 !!」

淳一 「オレは、 このままでいいよ ………」

美和子 「分かってるの!?  いつ脳障害が 起き

 るかもしれないんだよ!」

淳一 「(視線を背ける) 誰かが死んで、 オレ

 が生きるなんて ………」

美和子 「そんなこと 言ってるときじゃないで

 しょう !?」

淳一 「………」

美和子 「(淳一の肩を 大きく揺さぶる) ジュ

 ン、 受けてよ !  ねえ、 ジュンったら…

 … !!」

(次の記事に続く)