「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「3万人の命に」 (1)

2009年12月18日 23時31分30秒 | 自死について
 
 朝日新聞夕刊の1面に  「3万人の命に」 という、

 自殺に関する記事が 連載されています。

 NPO東京自殺防止センターでは、 夜の間中 ボランティアが電話を受けます。

 ビルの屋上、 ひとりぼっちの部屋などから かかってくるそうです。

 ボランティアは 敢えて切り出します。

 「自殺したいのではないですか?」

 危ないと思うと、 直接会いに行きます。

 「死なないで」 と 説得するのではなく、

 「心配している人がいますよ」 と 告げに行くのです。

 「人は 死にたい時にも生きたい。

 矛盾しているけど、 そこに賭けるんです」
 

 記事では 自殺遺族のことも書いています。

 自殺で家族を失った 遺族は、 罪や恥の意識に 苦しめられます。

 親族からも 「隠せ」 という 圧力を受けるといいます。

 全国に300万人という 遺族に、 支援はほとんどありません。

 「自分が 本人の悩みに 気付いてあげられなかったから」

 「追い詰めたのは自分だ」

 病気や事故の 遺族とは異なり、 誰にも言えずに 苦しみ続けます。

 そんな人たちが 安心して話せる場を 作ろうと、

 各所で 自殺遺族の会ができています。

 あるいは、 「自殺って言えなかった」 という本を 出版したり、

 首相官邸を訪問して 自殺対策を訴えた 自殺遺児たちもおり、

 06年には 自殺対策基本法が成立しました。

 「あの人は死んでよかった」 と話す 遺族もいるそうです。

 「苦しみぬいての選択は 認めてやりたい」 と。

 もはや 自殺は悪でもないし、 気付いて防ぐべきことでもない といいます。

 これも 命を見つめた末の 境地なのでしょう。

〔 朝日新聞 「3万人の命に」 より 〕