「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子が好きだった雪……

2007年03月02日 01時07分07秒 | 心子、もろもろ
 
 2月が終わりました。

 気象庁が定義する 「冬」 は 12月から2月までなので、

 この冬は とうとう東京に 雪が降らなかったことになります。

(3月中旬に 寒さがぶり返すそうですが。)

 心子は雪が好きだったんです。

 拙著 「境界に生きた心子」 に書いた、雪にまつわるエピソードを抜粋します。
 

『 二日後、心子からメールが届いていた。

 <マンションの屋上から 飛び下りるとき、雪が降ってきたの。

  雪が心子の心を癒し、私は何とかこの時間だけ 呼吸してます>

 心子は 雪が好きだった。

 死へと墜落する心子を、雪が束の間 引き止めた。

 心子は僕と 雪見酒が飲みたいと言っていた。』
 

 それから 年が明けて、心子が旅立った後のことです。

『 葬儀の二日後、東京に雪が積もった。

 心子の好きな雪が。

 心子に見せてあげたかった。

 窓から 心子の写真と並んで 雪景色を眺めたあと、写真を抱いて 雪の中を歩いた。

 心子の上にも 白雪は降り注いだ。

「しんこ……見えるか? 

 真っ白い雪だよ。

 きれいだね……」

 この雪が もう少し早く降っていたら、

 心子を思い止まらせることが できただろうか……?

 その晩、僕は心子と 雪見酒を飲んだ。

 心子が一緒に 飲みたいと言っていた。

 涙酒だった。

 しんしんと、雪は降り続けた。

 永久の旅路に発った 心子を弔うかのように……。』

 
 心子も この冬は雪が見られず、淋しがっているかもしれません。

 せめて3月中旬に 降ればいいですが……。
 
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