2月が終わりました。
気象庁が定義する 「冬」 は 12月から2月までなので、
この冬は とうとう東京に 雪が降らなかったことになります。
(3月中旬に 寒さがぶり返すそうですが。)
心子は雪が好きだったんです。
拙著 「境界に生きた心子」 に書いた、雪にまつわるエピソードを抜粋します。
『 二日後、心子からメールが届いていた。
<マンションの屋上から 飛び下りるとき、雪が降ってきたの。
雪が心子の心を癒し、私は何とかこの時間だけ 呼吸してます>
心子は 雪が好きだった。
死へと墜落する心子を、雪が束の間 引き止めた。
心子は僕と 雪見酒が飲みたいと言っていた。』
それから 年が明けて、心子が旅立った後のことです。
『 葬儀の二日後、東京に雪が積もった。
心子の好きな雪が。
心子に見せてあげたかった。
窓から 心子の写真と並んで 雪景色を眺めたあと、写真を抱いて 雪の中を歩いた。
心子の上にも 白雪は降り注いだ。
「しんこ……見えるか?
真っ白い雪だよ。
きれいだね……」
この雪が もう少し早く降っていたら、
心子を思い止まらせることが できただろうか……?
その晩、僕は心子と 雪見酒を飲んだ。
心子が一緒に 飲みたいと言っていた。
涙酒だった。
しんしんと、雪は降り続けた。
永久の旅路に発った 心子を弔うかのように……。』
心子も この冬は雪が見られず、淋しがっているかもしれません。
せめて3月中旬に 降ればいいですが……。