「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「妻は多重人格者」(集英社)

2006年01月04日 20時19分28秒 | 心理

 映画監督である花田深さんのドキュメントです。

 著者の奥さんが知らない間に多大な借金をしまくり、やくざに追われて一家崩壊の危機にさらされてしまいます。

 ところが、実は奥さんは多重人格(解離性同一性障害)で、別の人格が本人に復讐するために借金を重ねていたというのです。

 奥さんが子供のときに受けてきた虐待はむごいもので、読んでいて涙が出るほどでした。

 債務地獄で夫婦心中するまで追い込まれた挙げ句に、町沢静夫氏の下で治療を受けることになります。

 著者と各人格が話し合いをして、次第にお互い理解し合っていきます。
 各人格が主人格の奥さんと統合されるか、或いはどこかへ消えていくという過程は非常に興味深いものでした。

 人格が統合される場合は納得して合体するので、再び悪さをすることはなく、また元の人格の記憶も保っているそうです。

 一方、人格が消えていく場合ですが、人間の意識の中は奥に入っていくほど無限の宇宙のような広がりがあり、人格はそのどこかで永遠の眠りにつくのだといいます。
 その記述は圧巻でした。

 この本を書店で見つけたのは拙著の校了直前だったため、拙著の参考文献としては載せられませんでしたが、著者に手紙を書かせてもらい、お返事をいただきました。

 ドラマ化の話もあるということで、その企画のプロデューサーは奇遇にも、僕もお世話になったことのある人でした。

 そのシナリオ担当の脚本家も偶然僕の知り合いでしたが、作品がオンエアされるまでには本当に多くのハードルがあり、実現するかどうかまだ分からないようです。

 境界性人格障害は一般の人には、多重人格よりさらに理解をされにくいものだと思います。
 僕もいつの日か拙著の映像化を夢見ますが、気が遠くなるほど困難な道のりだと思います。