世田谷美術館「奈良原一高のスペイン」最終日。彼の石造りのヨーロッパあるいは修道院の写真などに見られる硬質な峻厳さとは別の酩酊、情熱、祝祭的なスペインの写真。そこにあふれるパッションの裏に感じる暗さ。たとえば、「不合理ゆえに我信ず(Credo quia absurdum)」という言葉の持つ宗教的情熱の裏に潜む言いようのない暗さを感じてしまう。そもそも理性というのは明るく情熱は暗いのだ。キラキラ輝くヴァレリーの言う地中海的明晰さ。それに対して情熱の隠れがたい暗さ。パッションという言葉には受難の義もある。若い頃はヴァレリーに夢中になっていたのだけれど、今はそれとは真逆の暗さに惹かれてしまう。
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