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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

結婚できない男 第8回

2006年08月23日 | 恋愛ドラマ
 冒頭はタイタニックを作る信介(阿部寛)。
 嬉々とした表情、ディティルへのこだわり。
 独りの生活もいいと思えてくる。

 こんな生活の信介に闖入者。
 ケンちゃん。
 みちる(国仲涼子)が虫垂炎で4日入院することになり、英治(塚本高史)の所に預けられる。だが、恋人の沙織(さくら)に「私と犬とっちを選ぶの」と言われて信介の所に。夏美(夏川結衣)のマンションは犬がNGの様だ。
 こうやってめぐりめぐって信介の所にやって来る展開は、この作品の脚本家・尾崎将也さんの得意なところ。柴又のバスツアーで偶然夏美に出会う下りもこんな感じだった。

 さて、ケンちゃんとの共同生活。
 次第に心を通わせていく下りが面白い。
 信介は「模型の方が餌も食べないし気楽でいい」と言うが、模型やケンちゃんには大きく違うものがある。
 ケンちゃんには意思があるということだ。
 それは信介が大事にしているもの(ステレオや金魚など)も同様だ。
 ケンちゃんには意思がある。
 散歩で黒い犬を怖れる。
 信介の部屋に入りたがらない。だが、きゅうりを投げるとそれを追いかける。
 餌をなかなか食べない。(ちなみに餌を入れた皿は夏美のお父さんの結婚式の引き出物)
 ゴミ箱をひっくり返して悪戯をする。
 器用に首輪を外す。
 ワーグナーよりもモーツァルトが好き。

 信介は模型とも大音響の音楽とも意思を交流させコミュニケーションしているが、ケンちゃんほどの交流・コミュニケーションはない。
 模型・音楽は信介の一方的なコミュニケーションでリアクションはない。
 あったとしても信介の想定の範囲内だ。音楽は同じスコアで演奏される。マニアな信介は次にどの様なメロディが奏でられるか当然知っているだろう。
 しかし、ケンちゃんは違っている。
 どんなリアクションをしてくるかわからない。
 時には信介を怒らせたり悩ませたりすることもするだろうが、ワクワクすることもある。
 だから「こいつを研究したくなりました」と夏美に言って、引き続きケンちゃんの面倒をみようとする。

 信介の家に、信介の生活に犬が入り込んだ。
 それまで入っていたのは、無機質なステレオや模型。
 次に物言わぬ金魚。
 そして今回は犬。
 入り込んで来るもののレベルがどんどん上がっている。
 次はいよいよ人間か?
 しかし人間はケンちゃん以上に複雑で厄介だ。
 信介はほんのわずかな時間でケンちゃんの思考・行動パターンを理解したが、人間はそうはいかない。
 文句も言えば、様々な感情もぶつけてくる。
 そんな厄介なものを信介が受け入れられるか?
 夏美は信介の治療のためほんの少しの時間、信介の部屋に入ったことがあるが。

 この様にこの作品は小道具の使い方がうまい。
 ステレオや模型が、金魚すくいの金魚が、隣のケンちゃんが、こんな使われ方をするとは思わなかった。
 これらはすべて結婚しない男・信介の心を映し出している。
 信介の人とのコミュニケーションを求める心を映している。


★あらすじ(公式HPより)
 拡大鏡を覗き込み、信介(阿部寛)が真剣な表情で模型を作っている。細心の注意を払いながらペイントし、完成したものを満足げに見ると、ある部品がなくなっていることに気がつく。辺りを探すが見当たらず、相変わらずとひとり言をつぶやく日々。
 ある日のこと、腹痛で中川病院に行ったみちる(国仲涼子)は夏美(夏川結衣)に急性虫垂炎と診断され、手術入院することになってしまう。みちるの愛犬・ケンを預かることになった英治(塚本高史)だが、恋人の沙織(さくら)に「私と犬とどっちを選ぶの」と言われ、険悪ムードに。困り果てた英治に、ケンの世話を頼まれた信介は「ありえない」と断るが、英治に付き添ってきた夏美に「二度と私のところに診察、受けに来ないで下さいね」と言われて動揺する。結局、信介は「犬にお愛想はしません、エサやって、散歩させるだけです」と、渋々承諾。信介は、ケンを自分の部屋に入れたものの、ケンが室内を動き回らないように紐でくくりつけるのだった。
 一方、手術直前にケンが心配で英治に電話しようとしたみちるは、ケンが信介に預けられていることを知らされ、不安いっぱいの表情を浮かべながら手術室に消えて行くのだった。
 仕事中にも関わらず、信介と英治はパソコンの遠隔操作で信介の部屋にいるケンの様子をチェック。すると、ケンが紐を外し信介の部屋をウロウロし始めた。部屋はゴミが散乱し、クライアントとの打ち合わせどころではなくなる信介。一方、不安そうなみちるを見た夏美は、「やっぱり私が預かります」と信介に電話をする。しかし仕事に身が入らない信介を見かねた摩耶(高島礼子)が、すでにケンを引き受けることになっていた。「仕事に集中して欲しかったのよ」という摩耶だが、実は子供のころからの犬恐怖症で、結局、預かることはできず。
 信介はケンをさらに厳重に紐でくくりつけると、「今度、イタズラしたら保健所行きだ」と念を押し、大切な模型を高い場所に移動させるのだった。
 夜、信介がマンションに戻ると、玄関でケンが出迎えていた。「何かやったな」と部屋を見回すが、中はキレイなまま。出迎えてくれていたことがきっかけとなり、散歩中に通る大型犬のやり過ごし方やボール投げなどで、次第にケンとのふれあいが楽しくなり始める信介。夏美が預かると言っても「こいつを研究したくなりました」と信介は申し出を断る。だが、その矢先、部屋に飾っていた大切な模型が床に落ちて壊れてしまう。「これは触るなって言ったろ!」と側にいたケンを叱りつけた信介は、「愛想が尽きました」と言って夏美にケンを預けるのだった。
 しかし数日後、部屋にいた信介は、模型を置いていた場所が、ふとした拍子で簡単に物が落ちることに気がつく。信介はケンと散歩中の夏美に電話し、散歩のアドバイスをしていると、その間にケンがいなくなってしまう。それを聞いてタクシーに飛び乗る信介。
 夏美が散歩していた辺りを必死に探していると、男の声で「ケン!ケン!」と叫んでいるのが聞こえてきた。その声はまさしく信介だった。信介は以前、ボール遊びをした川にたどり着くと、何かが流れて来るのを見つけ、迷わず川の中のそれに向かって行くが、それはゴミ。夏美もそんな信介の必死な様子を見守っていた。すると、夏美と少し離れたところにちょこんと座るケンがいた。驚きながらも「ケンです!」と喜ぶ夏美に、信介は「見りゃわかる」と言うと、水浸しになりながら帰ってしまった。夏美はケンに「あなたと桑野さん、目が似てる」と微笑む。
 後日、退院したみちるがマンションに戻ってきた。信介に「ご面倒をおかけしてすみませんでした」と言うと、「さあ、我が家だよ」とドアを開けるが、ケンは信介の部屋の方を見つめている。みちるの部屋に入っていくケンを見届けて、ドアを閉めた信介は「忘れよう」と独り言をつぶやくのだった。
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