平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

着信アリ

2006年08月05日 | 邦画
 ホラー映画の作り方

1.現代における恐怖とは何かを考える。
 この作品の場合は「携帯電話」。
 自分の携帯に自分から電話がかかってきたら?
 それが呪いの電話だったら?
 確かに自分から電話がかかってきたら怖い。
 自分の入れていない着メロだったらなお怖い。
 着信表示や着メロといった携帯の機能をうまく活かして、携帯を見事な恐怖アイテムにした。
 携帯のメモリー機能も恐怖を生み出すのに機能した。
 呪いの連鎖はこうしてなされる。
 次に呪いがかかってくるのは携帯のメモリーに登録されていた人たちの中のひとりなのだ。
 なるほど、面白い。
「リング」は呪いのビデオだったが、当時確かにビデオは現在で言う携帯の様なアイテムだった。ビデオをダビングして連鎖するというのも、携帯のメモリー機能が果たした役割と同じだ。

 携帯の次はどんなアイテムが恐怖のアイテムになるのだろうか?

2.呪いを作ったのは誰か?呪いの原因は何か?を考える。
 以下ネタバレ。
 ホラー映画で怖いのは、その呪いの原因がわかることだ。
 人間の暗い怨念・情念があるから呪いがある。
 そして暗い怨念・情念は見る者を恐怖させる。
 この作品「着信アリ」の場合は、水沼美々子。
 美々子は子供。
 ぜんそくを患っていて、弱い者を虐待する嗜好を持っている。
 美々子は妹を虐待する。そして妹が泣き出すと飴玉を与えてなだめる。
 母はビデオカメラを回して、美々子の虐待現場を確認。
 美々子を憎み、美々子がぜんそくで苦しみ出すと彼女を放置して殺してしまう。 この殺された怨念が「呪い」となった。
 美々子は母親を殺し、母親の電話から呪いの電話をかけ続ける。
 「着信アリ2」ではこの美々子の設定をさらに深め、レイプによって生まれた子だとした。
 美々子が呪いを実行する時にぜんそくの吸引機の音を鳴らすのも怖い。
 
3.ミスリードをする。
 呪いの原因は美々子。
 しかし、美々子が呪いの張本人であることを明らかにする前に別の犯人を提示した。
 美々子の母親だ。
 主人公たちは母親が子供たちを虐待していたと思いこみ、母親を捜す。
 母親は自分が「いい母親」であることを示したくて、子供を虐待すると病院に連れて行き「いい母親」を演じたというのだ。
 この心理自体、妙に説得力があるから母親が呪いの張本人であると思ってしまう。

4.呪いは続く。
 「リング」同様、呪いの原因が突きとめられ、呪いは治まったかにみえたが、実は終わっていなかった。
 これはホラー映画の常道。
 美々子は主人公・中村由美(柴咲コウ)に憑依して生き残った。
 ラスト、ナイフを片手にいっしょに謎を解いた山下弘(堤真一)に飴玉を与える由美の顔は冷たく怖ろしい。

5.その他
 この作品では「呪い」が実行される瞬間を視聴率獲得を狙う番組プロデューサーが番組にするというシーンがあった。
 「霊能力者VS呪い」である。
 美々子の呪いは霊能力者を吹き飛ばし、視聴者が見守るテレビの中で実行されてしまうが。
 番組にするという発想自体、いかにも秋元康らしい。
コメント
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