去年の11月17日にコレドをクローズしてから四人目の男性客に会った。一人目はコレドの音響機器などを引き取りに来てくれた演出家のTさん、二人目は劇場で偶然あってそのまま俺のツレのLさんと三人で飲みに行ったS新聞のUさん、三人目はクリスマスの広尾の街でバッタリ出会ったT電力のNさん、そして四人目が高校の後輩で広告会社に勤めているSさんなんだけど、他の三人と違って彼だけは俺の方から会いたいと連絡をとって会って貰ったのだ。ええっ、オンナ好きの桃井がわざわざ会いたいと連絡を取ってだって?おかしいですよね。はい、正直いいます。会いたかったのはSさんではなくて(ごめん、Sさん)彼の奥さんでデザイナーのKさんだ。まさか桃井が人妻不倫疑惑?なんてことはなく、残念ながら正真正銘の仕事。実は今度の店を作るにあたってバーとしての基本コンセプトや内装デザインにつていては一級建築士のFさんにおまかせすることにしたけど、隠されたコンセプトというか店を作る動悸づけともなった俺の祖母であるJarjan(なのか「じゃあじゃん」なのか)のイメージをどうやって醸しだすかと云うことをこの数日あれこれ考えていたのだけど、ちょっと行き詰まってきたので、ここは去年作った二本の芝居でデザイナーとして世話になったKさんのセンスも借りてみようかと昨日思いついて連絡を取ってみたのだ。でも、彼女は去年七月に出産したばかりの赤ちゃんがいる。会うとなったらベビーシッターが必要だ‥‥ということでベビーシッターとして父親のSさんに来て貰うことにして70日ぶり位におめにかかったと云う訳だけど、ベビーバギーに乗った生後半年の赤ちゃんに話しかける様に六十年前に亡くなった俺の祖母のイメージについてアンディウォーホールやマリリンモンローをひきあいに出しながら打ち合わせする俺とKさんとSさんの姿はちょっとした芝居模様。そういえば俺は遺作シリーズリース③のタイトルを「デンティスト(歯医者さん)」に決めた。でも、まだタイトルを決めただけで、何処で何時誰とやるか、いやそれより何よりどんな芝居にするか決まった訳じゃない。でも、いつもそうなのだ。シリーズ①の「ロバくんとポニーちゃん」も遺作シリーズ②の「パラソル」もタイトルが先行していた。さて「デンティスト(歯医者さん」はどんな芝居になるのだろうか?いや、その前に自分で自由になるシアターを失ってしまった今、どうやったら実現出来るのか?誰かプロデューサーになって考えて下さい。