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とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

DVD『マザーウォーター』を観て

2011-05-17 14:12:12 | 映画

 「京都を舞台にゆったりとした流れの中で豊かな生活を送る人々を描いた作品だ。『かもめ食堂』、『プール』を手がけた製作チームが集結し、今回は松本佳奈監督が演出を務めた。出演は小林聡美、もたいまさこ、小泉今日子、加瀬亮、市川実日子といった実力派が揃う。独特の京都の街並みや、何気ない風景、そして川のせせらぎに癒される。」

公式サイトにはこのように紹介されています。

 「マザーウォーター」とは本来の意味からするとウイスキーの仕込み水のことだったと思います。
 でも、この映画を観ていると"母なる水"と考えた方がいいのかもしれないと思いました。
 
いつものように何も起きなく、何の主張もない、この上なく生活感のない映画です。
これを癒しとでもいうのでしょうか?よくわかりませんが。
せっかちな私としては、このような空気感のの中ではとても暮らせそうにありません。

 まず出てくるのは、ウイスキーしか置いていないバーを経営しているセツコ(小林聡美)出たー!という感じの存在感を遺憾なく発揮しています。
 8オンスタンブラーに大きめの氷を入れてウィスキー(それも「山崎」いいウィスキーを使っています。)を目分量で注ぎます。
 それをバースプーンでゆっくりゆっくりかき回していきます。
それから市販のミネラルウォーターではない水を加えて、またゆっくりゆっくりまぜて、客へと差し出します。
 客が一口飲んだのを見計らって、自分は水をグラスに注いで、独特のタイミングでそれを一口飲みます。
 まさに「けっこうなお手前で!」といいたくなるような流れです。
 それを幾度となく観客にみせます。馴染みの客に加瀬亮が出てきます。

 続いては、喫茶店を営むタカコ(小泉今日子)が登場します。
 この喫茶店も大変小さな店で、席の数も知れています。
 客が来るとミルでコーヒーを挽いて1杯1杯入れてくれます。
 これがまた優雅でオトメ(光石研)ならずもずっと見ていたいと思わせる優雅さです。
 客が入っているのかどうなのかは、定かではありませんが、タカコのため息だけが聞こえてきそうなそんな店です。

 もう一つ水つながりでハツミ(市川実日子)の作る豆腐屋です。
 ここの豆腐は、買うと店の前のベンチでそのまま食べることのできるシステムです。
 道路に面したベンチで豆腐を食べるこの光景はありなんですかね?

 そして、その3人ともたいまさこをつないでいくのが水の大御所銭湯です。
 この店はオトメ(光石研)が経営者なのですが、のれんはいつとなくかかっているし、お湯はどうしてわかしているんだろうか?と疑問になります。
 銭湯には、1歳前後のポプラ少年とどういう関係なのかわからないけど、若い男が働いています。
 この3人の関係もよくわかりません。

 もう一つ忘れてはいけない人にマコト(もたいまさこ)がいます。
 この人はどの店にも顔を出して、全員をつないでいく大事な役目を果たしていきます。
 銭湯のポプラの面倒もよく見てくれます。
 マンションが映るんだけど、そこには未亡人らしき様子も見られないから、もしかしたらずっと独身だったのかも?とも思われます。
 でも、ポプラのかわいがり方からすると、前に子どもがいたのかも…とも思われます。
 
 八百屋で900円もするタケノコを買ったり、新鮮な野菜を選んで来て、家で野菜の天ぷらをあげて食べるようすなど、生活に困っている風はありません。
 いつもながら正体不明な人を演じています。

 夜はビールと天ぷらとそれも塩で食べるスタイル、朝ごはんに出汁撒き卵と暖かい味噌汁朝など、さすがフードスタイリストの飯島奈美さんらしい気配りです。

 全体が静寂な世界につつまれています。
 その中で静かな生活音だけが響くという映画造りには頭が下がります。

 最近、いい人ふうの演技ばかりやっているもたいまさこさんですが、
 とことこ散歩していて「こんにちは」と声をかけた小泉今日子に向かって例のしわがれ声で「今日も機嫌良くやんなさいよ」と声をかけただけで、
 すたすた歩いて行ってしまう姿に久しぶりに「吉野刈り」の時の意地悪おばさんの雰囲気が蘇ってうれしくなりました。

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映画「ブラックスワン」を観て

2011-05-16 15:18:03 | 映画

久しぶりの洋画を観に行きました。

いつ以来だろうと真剣に考えても思い出せないくらいです。

CG満載のアドベンチャーものや、パニックムービーが好きでなくてついつい敬遠しがちでした。

今回は、シネコンのポイントを利用したタダ券の使用期限が迫ったこともあり、何となく興味のあった映画にしました。

あまり期待していなかった映画だったのですが、印象深い映画でした。

久しぶりの映画の割には、心にヒットした映画でした。

『レスラー』のダーレン・アロノフスキー監督、ナタリーポートマン主演と話題のコンビです。

映画の売りとしては、「内気なバレリーナが大役に抜擢されたプレッシャーや嫉妬から少しずつ心のバランスを崩していく」とされています。

公開されたばかりなので、あんまりストーリーに踏み込むことは避けたいのですが、感想を言おうとするとどうしても少し踏み込まざるを得ません。

そこらへんを考慮していただきたいと思います。

舞台はニューヨークの有名バレー楽団。ニーナ(ナタリー・ポートマン)は将来を嘱望されたバレリーナです。

夢は『白鳥の湖』のプリマを踊ること。

新シーズンのオープニングとなる『白鳥の湖』のキャスティング・オーディションが始まりニナはこれに全てをかけています。

よくある話なのですが、このストーリーは若きバレーダンサーの夢という話ではなく、様々なものが織り込まれたものなのです。

かつて、バレリーナだったけど、ニナを妊娠してバレリーナの道をあきらめた母親との確執、

つい先頃までニナのポジションにいた先輩プリマのベス、ニナにない奔放さと官能さを醸し出すライバルのリリーと関係性が様々に交錯します。

母親との確執で言えば、バレーとピアノの違いはあるけど『ピアニスト』の映画を思わせるものがあります。

幻想と現実を行ったり来たりするニナの頭の中の世界を映像で描き出します。

映画を観ている我々にとって、見えるもの全てが真実だけに後からそれが幻想だと言われてもなかなか戻れません。

そこがこの映画のややこしいところです。

もう一つ鏡の使い方がやたらややこしいのです。

鏡を使って幻想と現実を演じ分けるところも見られます。

バレーダンサーだから鏡を使うということだと思いますが、鏡と音楽というものがキーワードになっていると思われます。

ある人に言わせれば、ニナの母親でさえ現存しないニナの頭の中にだけある人物ではないかという解釈もあるそうです。

もう一つ、ニナは母親の魔法によって白鳥に変えられた娘という解釈も成立するようです。

白鳥から人間になるために様々な試練が試される。

それが、黒鳥を演じるための様々な試練ということになるということです。

何が現実で何が幻想かというストーリーの追い方ともう一つは純粋にニナの成長に合わせてバレーそのものはまり込んでいくこともいいのかもしれません。

ともあれ、見ている時間飽きることなくずっと画面に食い入るように見てしまう映画だと思います。

 

 

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映画「岳」

2011-05-08 22:03:08 | 映画

映画「岳」を観てきました。

ビッグコミックオリジナルをずっと読み続けていてこの漫画はけっこうはまっていました。

映画化されると聞いてけっこう楽しみにしていました。

「剣岳」でも山の風景に感動していましたが、今回も実写ということで絶対映画館で観たいと思っていました。

ブログにも書きましたが、2日から東日本大震災のボランティアで宮城県石巻市に入っていて、

帰った次の日が公開だったのでその日のうちに行くことにしました。

次の日は、会議で滋賀県大津市に行かなければいけなかったので土曜日しかなかったことも理由の一つです。

本当に楽しみにしていても、心配なことが二つありました。

配役のことです。漫画の島崎三歩は、やたら元気でやたら明るくてそんな人物に小栗旬か…と思っていました。

彼は、クールというか世の中を斜に見ているような役ばかり演じてきていて、それが決まっているいる印象がありました。

もう一つ、ヒロインに長澤まさみが抜擢されたことです。長澤まさみはきらいじゃありません。むしろ好きな女優さんです。

そんな彼女が冬山に入る。ましてや山岳救助隊になることは想像ができませんでした。

でも、そんな心配は全くありませんでした。

見事に演じきっている二人がスクリーンの中にいました。

青空をバックにこれ以上ないくらいの笑顔を見せる小栗旬は今までのなかで一番いい顔をしていると思います。

それ以上に長澤まさみは体を張って演じきっていました。

髪の毛も短くして、ロッククライミングも見事にやっていました。

八方尾根らしき現場でそりを引くシーンでは男にまじって走っていました。

メイクもあまりしていなくて、頬に凍傷のメイクもしていつもの"可愛いだけの長澤まさみ"ではありませんでした。

三歩が冬の奥穂高(3.190m)の山頂に立つシーンなどは、実際に登らないと絶対に撮れないシーンです。

それだけに青空が実に気持ちがいいのです。

山のシーンだけでなく、様々なドラマを用意していてそこがなかなかホロリとさせます。

例えば父親を亡くした少年横井ナオタとジャングルジムの上で話すシーンです。

父親が遭難した場面をリアルに話すことは少年に受け入れられるのかちょっと考えましたが、いつしか場面に引き込まれていました。

命を救うシーンでの「よくがんばった」と命を救うことができなかったシーンでの「よくがんばった」はどう違うんだろう?

いろんなことを考えました。

山の中に存在する生と死の問題。装備と訓練が絶対必要な山。

最近の"山ブーム"の中でいろんなことを考えました。

私自身、最近膝が思わしくないので、高い山は少し遠慮しています。

でも、この映画を観ると、久しぶりに上高地から入って涸沢くらいは行ってみたくなりました。もちろん、テント泊で。

映画の中での三歩の名言はいろいろありました。

「悲しいことが起きるのが、山の半分、楽しいことがあるのも山の半分。二つ合わさって山なんだ。

学校もいやな勉強が半分、楽しい遊びが半分。生きるのも、死ぬのも半分、半分。

でも、どっちを多くするかは自分で決めること」

「山に捨てちゃいけないのはゴミと命」

もう一人忘れてはいけない名演技は山小屋の女主人役の市毛良江さんです。

実にいい笑顔でみんなを迎えてくれます。

いい映画だと思います。本当はもっとストーリーを語りたいけど、公開直後なのでじゃまをしたくありません。

ぜひ、映画館で観るべき映画です。

 

 

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「東京物語」1953年

2011-04-06 21:49:07 | 映画

 

東京物語』1953年 監督小津安二郎

 

久しぶりに観ました。

実際は何度も観ている作品です。

 

以前観た時は動きが少なく、笠智衆がやたら動かない映画だという印象がありました。

 

「まれにみる名画だ!」といろんな本に書いてあって、

若い頃に何度も観たのですが、正直言ってどこがいいのかわかりませんでした。

 

年寄り夫婦が尾道から東京に出て来て、子どもたちの家を転々とするだけの話にしか思えませんでした。

台詞も棒読みだし、演技らしい演技も感じませんでした。

 

でも、今日観ると違った風景に見えました。

私が年をとったと言うことかも知れません。

年齢を重ねてみないとわからない作品名なのかもしれません。

 

棒読みの演技だったり、動きのない演技の中にこそ人々の気持ちの彩が出てきているのです。

これもすべて計算の上で撮影しているのだから小津安二郎はただ者ではありません。

 

簡単にあらすじを簡単に紹介します。

 

周吉(笠智衆)、とみ(東山千栄子)の老夫婦は尾道で末娘(香川京子)と暮らしています。

東京に住んでいる息子と娘を訪ねてみることにします。

 

途中、大阪に住んでいる三男の敬三(大坂史郎)にも駅で会い、

東京で開業医をしている長男幸一(山村総)の家に行きます。

 

疲れて長男の家に着いても、それほど落ち着ける場所ではありませんでした。

二人が寝るために部屋を明け渡した孫の機嫌はあまり良くなく、

近くに住んでいる長女しげ(杉村春子)や死んだ息子の嫁紀子(原節子)も来てくれて歓迎されるけど、

どこか居心地の悪いものでした。

 

長男の家から長女の家に寝場所を変えても、なかなか落ち着けるものではありません。

 

しげは美容院をやっていて、忙しく面倒がみられないので、老夫婦を熱海に旅行に行かせます。

ところが、アクシデントがあって予定より早く帰って来た老夫婦につらくあたります。

 

仕方なく二人は、別の知り合いを頼って家を出ます。

とみは、戦争未亡人の息子の嫁の紀子の家に泊まります。

そこで、やっと暖かい心遣いをうけます。

 

周吉は同郷の士を訪ねて、酒を酌み交わすことで少しだけ心が慰められます。

 

結局二人は、尾道に帰ることにします。

 

ところが、二人が尾道に帰ったらすぐに東京の子どもたちのところへ「ハハキトク」の電報が届きます。

 

とみは幸一にみとられて静かにその一生を終わります。

 

駈けつけたみんなは悲嘆にくれますが、葬儀がすむとまたあわただしく帰っていきます。

 

若い京子には兄姉達の非人情がたまりません。

 

紀子は京子に大人の生活の厳しさを言い聞かせます。

でも、自分自身何時まで今の独り身で生きていけるか不安を感じています。

 

東京へ帰る日、紀子は心境の一切を周吉に打ちあけます。

 

周吉は紀子の素直な心情に心打たれて、老妻の形見の時計を紀子に贈ります。

 

翌日、紀子の乗った上り列車を京子は小学校の教室から見送ります。

 

周吉はひとり家でぼんやりしています。

 

そこで終わります。

 

東京までわざわざ出かけてきた老夫婦に対して、子どもたちが冷たいように見えますが、

 

そのことを決して悪く描いているわけではありません。

 

人ぞれぞれ生活があって、みんなそれほど楽ではなく、生活を守ることで精一杯の生活をしている。

そういうことを淡々と描いていきます。

 

時代が大きく変わろうとしている時代を反映している映画だと思います。

 

それにしても、原節子さん演じる京子さんの献身的な態度に対して、

杉村春子演じるしずのすれかっらし的な態度が何とも言えない対比になっています。

 

葬式の日に「形見がほしい」と言い出すしずに京子はひどく腹をたてます。

 

人の気持ちをあらわすシーンが随所にちりばめられています。

 

居場所がなくて、物干しに上がって遠くを眺めている笠智衆は秀逸です。

 

映画としての完成度の高さと小津監督の人間を見つめる視点の厳しさと優しさを感じる作品です。
 

小津監督と言えばローアングルです。

固定したカメラによって捉えられた映像の美しさはまさに秀逸です。

 

淡々と描かれながらも親子関係の隔たりや老いて時代から取り残されていく悲哀や諦観、そして生きていくことの孤独。

 ラストの妻に先立たれた主人公がひとり佇むシーンは生きていくことの無常さが感じられます。

 

やっぱり映画史上に残る名画だと思います。

 

クロサワ映画とは対極にある映画だと思います。

 

もちろんどちらも素晴らしいことには変わりはありません。

 

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「山田洋次が選ぶ日本映画100選」

2011-04-06 20:52:41 | 映画

山田洋次が選ぶ日本映画100選がNHKBSで始まりました。

 

山田洋次が選ぶというのが最大の魅力です。

 

最初の50本は「家族」をテーマにした作品をラインナップするそうです。

 

最初の1本目が「東京」(小津安二郎監督 1953年)で始まって最後の50本目が「家族」(山田洋次監督 1970年)だそうです。

 

番組のHPから山田洋次監督がメッセージを発しています。

 

ちょっと紹介しようと思います。

 

100本の作品を選ぶにあたって、二つの基準をたてました。一つは監督。映画を作るのは監督です。

 

日本映画を支えて来たたくさんの監督の作品が並ぶように工夫しました。

 

もうひとつの基準は、「家族」を描く映画と、「喜劇」という二つの柱を立ててそれぞれ50本ずつ選ぶということ。

 

これで今までの傑作100選とは少し違った形になるのでは、と思います。

 

 

 

まず1年目は「家族」を柱に50作品放送します

今日ぐらい、家族のあり方について日本人が悩んだり、不安を抱いたりする時代はないんじゃないか。

 

もうこれ以上先送りできない、という崖っぷちにいるように思います。
 

この50作品の中に、日本人の家族の歴史を見る事ができるはずです。

 
この50作品の映画を見て、家族同士が、家族について話し合って下されば幸いです。どうぞ楽しんで下さい。』

 

非常に楽しみな企画です。

 

山田洋次監督が出演された前夜祭のような番組では、いろいろうんちくのあることばがたくさんあって、勉強になりました。

 

ラインナップを観るとほとんど一度は観たことのある作品ばかりです。

 

でも、私はこの際全部観るつもりです。

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「大洗にも星はふるなり」

2011-02-28 22:39:58 | 映画

(2009年11月公開)
監督  福田雄一
キャスト出演  山田孝之 山本裕典 戸田恵梨香 他
 
何とも不思議な映画でした。
真冬の海の家という閉ざされた空間で、次々に現れてくる男たちが台詞を中心に演じていく映画です。
舞台劇という感じもしました。
限られた空間の中で、距離感がやたら近い男たちの会話。
違うのは、男たちの妄想のシーンがインサートされる時だけです。

簡単なストーリーを紹介すると

茨城県、大洗町のクリスマス・イヴの夜です。
真冬の海の家に5人の男が1通の手紙で集められます。
ナルシストの杉本(山田孝之)、サメマニアの松山(山本裕典)、浮気願望が強い猫田(ムロツヨシ)、ハイテンションの仁科(小柳友)、ちょい不良?オヤジで海の家のマスター(佐藤二朗)の5人です。

彼らは、数ヶ月前の夏、この海の家で生活を共にしたバイト仲間でした。
5人は全員、皆の憧れのマドンナ・江里子(戸田恵梨香)から
「クリスマス・イヴの夜、海の家で会いたい」という手紙を受け取っていました。
自分だけが手紙を貰ったと思っていた彼らは…。
 
江里子が本当に会いたがっているのは自分だとアピールを始めます。
そこへ海の家の取り壊しを求めて弁護士の関口(安田顕)が現れます。

いくつもの離婚訴訟を手がけてきた関口は、
5人のくだらない言い争いに決着をつけようと、各々が語る江里子との妄想のエピソードの真実を、
あらゆる物的、状況証拠から推理して次々と暴いていきます。

関口のわけのわからない暴き方がコメディーの王道です。
でも、この関口がラブバトルに参戦してくるから、ストーリーはめちゃくちゃになっていきます。

さて、この結末はどうなるのか…

会話が大変面白く感じました。
ストーリーは考えずに観なければいけない作品だと思いました。
ぜひお勧めというほどでもありませんが、余裕があれば観るのもいいかも…。

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DVD『川の底からこんにちは』

2011-02-27 00:30:39 | 映画

川の底からこんにちは
2010年5月公開
監督・脚本 石井裕也
出演 満島ひかり

キネマ旬報のベスト10で興味を持った作品です。
2010年日本映画ベスト・テン第5位でした。
もちろん、こんな田舎では劇場で観ることの出来ない作品です。
だからDVDで発売されるのを真剣に待っていました。

DVDを観た感想から言えばとにかく面白い。
こういった笑いは大好きかも知れません。

一番好きなシーンは実家のシジミ加工工場を立ち直らせるべく作った社歌を歌うシーンです。
歌詞が最高にナンセンスなのです。

上がるよ上がるよ消費税 金持ちの友だち一人もいない
来るなら来てみろ大不況 その時ゃ政府を倒すまで 倒せ倒せ政府
シジミのパック詰め シジミのパック詰め 川の底からこんにちは

一度や二度の失敗と 駆け落ちくらいは屁のカッパ
駄目な男を捨てられない 仕事は基本つまらない
中の下の生活 所詮みんな中の下 楽しいな 楽しいな

シジミのパック詰め シジミのパック詰め 川の底からこんにちは

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この歌を工場のおばちゃん勢揃いで歌うのです。
その先頭に佐和子(満島ひかり)が見事に歌い上げるのです。

あらすじを簡単に

主人公の木村佐和子(満島ひかり)は18歳の時に、駆け落ちして、東京に出ます。
でも、1ヶ月で捨てられてしまいます。
でも、田舎にはかえりづらいので、東京でずるずると生活していきます。

職場は5回変わり彼氏も5人目という浮遊生活のような暮らしをしています。
今の仕事はおもちゃ会社への派遣社員です。

現在の恋人は、子持ちバツイチの会社の上司です。
ほんとに好きかと言うと、言い切れない。
“中の下”の自分にはこの程度の男がお似合いだって思っています…。
このあたりの演技をさせると満島ひかりは抜群です。

「しょうがないっすよね」「私は中の下の女ですから」が口癖で
世の中をすねてみているような人です。
「しょうがない」と言いながら麒麟淡麗を飲みまくる姿は
決して可愛い感じではありません。
でも、ストレートに生きているところだけは見事なのです。
腸内洗浄で何もかも流してしまいたいと思うくらいストレスはたまっています。

佐和子の恋人の健一は作ったおもちゃを腐されて、
自分の努力の足らなさを棚に上げ、会社の厳しさから逃げるために辞表を出し、
子供のために東京を離れてエコライフを送りたいなんぞと言い出し、
逃げ出すようなダメ男なのです。

佐和子の父が肝硬変で倒れてしまったのを機に、
家業を継ごうとこの2人が実家に帰るところから新たなストーリーが動き始めます。
工場には、それはそれは見事なおばちゃんたちが待っています。

突然出てきた佐和子に好意的なものは何一つ無く、
完膚無きままに佐和子を無視します。
人まであろうと平気で作業着に着替えたり、
ボソボソしゃべる佐和子に「声が小さくて聞こえません!」とか、
「年寄りばっかりで耳が遠いのよねぇ〜〜」などと言ったりします。

まだまだ続く不幸の中から、佐和子は川底から這い上がってきます。
そこから先の社歌が出てくるのです。

人は変わり続けるから面白いのかもしれません。
父と娘も変わるし、でもこの二人はとてもよく似ているかも知れないと
思わせるところがいいです。

父の車いすを押しながら川べりを歩く佐和子はとてもいい感じです。
「ワンピースを買うといい」「佐和子はワンピースがとても似合うから」と言われてはにかむ佐和子はとても魅力的に見えます。

こういったちょっとしたシーンを入れ込むのがいいですね。

もう一つ子どもと、一緒にお風呂に入って言う台詞がとてもいいのですが、全部言ってしまうと観ての楽しみがないからこのへんにしておきます。

このDVDはなかなかだと思います。
ぜひ観てください。

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映画「あしたのジョー」

2011-02-20 22:17:20 | 映画

知人からのリクエストもあり、「あしたのジョー」を観てきました。

当初は観る予定には入っていない作品です。
なぜ観たくないのかと言えば、原作のイメージがあまりに強すぎるからです。

結果どうだったかというと、『偉大なる駄作』と宣言してもいいかもしれません。

映画全体は劇画そのもので、特殊効果も存分に使われていたのでアニメなのか実写なのかわからないような映像になっています。

何もかも嘘っぽいし、チープな造りになっています。

最も違和感があったのが、ドヤ街の存在です。
川を隔てて世界が全く違う街が延々と続くような世界がどこにある?
山谷がモデルなのだろうけど、これだけ延々と続くのは戦前の中国くらいじゃないのでしょうか。

このあたりのところに脚本家なのか監督なのかわからないけど、価値観があるのだと思うと嫌になってしまいます。

このあたりの価値観が、白木葉子(香里奈)の設定になっています。
昔ドヤ街の養護施設に住んでいて…そんな設定は原作にはなかったのにどうして付け加える必要があるんだろう?
無駄な説明になっています。

作品としては駄目出しをしたいのだけど、役者たちは真剣に取り組んでいるから、質が悪いのです。

力石透を演じた伊勢谷友介なんか、この人でないと力石は演じられないだろうと思わせるほど、ストイックな演技をしていました。
この役を演じるために体重を10Kg以上落として臨んだという話を聞いています。
この役者は目が違います。

どの映画に出ていても必ず目立ちます。
大河ドラマの高杉晋作役も好きでしたが、「出口のない海」の時の貧しい農村出身の学生役を演じて
「死んで軍神になって故郷に帰りたい」と言っていた演技が印象に残っています。

もう一人、丹下段平を演じた香川照之はもう参りました。
TVのお笑い物まねショーのような雰囲気で登場して、心底段平になりきって演じきっていました。

漫画で言えば、腰が曲がって膝も曲がった老人のような設定でしたが、香川照之の段平は足腰がしゃんとしていて、顔とのギャップが大きい感じです。
でも、もとボクサーでという設定からすれば、香川段平の方がリアルなのかもしれません。

ジョー役の山下智久は、体は見事に作っていたけど、私にはピンと来ませんでした。
女性客相手の興行的には、必要な配役だったかもしれません。

もっといけなかったのは、白木葉子を演じた香里奈です。
あのだらだらとしたしゃべり方は、白木葉子のイメージからはかなり外れていたように思います。
もっと凛とした人に演じてほしかったですね。

あの当時、巨人の星の飛雄馬の姉の星明子と白木葉子という存在は、少年たちには意味ある存在だっただけにもう少し人選してほしかったです。

そういう意味からは作品としては、ダメだけど演技賞の候補にあがるというややこしい設定になるかもしれません。

余計な話だけど、ジョーと力石が出会うのが少年院というということになると、この二人大丈夫なの?
どうみても少年院に入るような年齢じゃない。
それに少年院に入っている人たちもほとんどおじさんです。
立派な刑務所だと思いました。

ボクシングのシーンは、そこそこ迫力はあると思いました。
でもアップのショットの連続では、ほんとのボクシングとはちょっと違うような気がしました。

もっとも大事なジョーと力石の試合は、ほとんど巨人の星のアニメを観ているような気がしました。
アップのシーンとぶつ切りのストップモーションの連続です。
エンターテイメントとしてはこれでいいんだろうなと思います。

試合が終わって力石が亡くなってしまってからの映画はとたんにつまらなくなっていきます。
ほとんど必要のないシーンばかりです。
最後の終わり方は、「もしも興行的にうまくいったら"二匹目のどじょう"を」という臭いをプンプンさせながら終わっていきます。

でも、力石が出ない山Pだけのあしたのジョーの続編は意味ないでしょう。

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映画「ふたたび」

2011-02-13 22:21:32 | 映画

時々行く『テアトル徳山』のHPでちょっと興味をもったので久しぶりに映画に行くことにしました。
別に面倒で行かなかったのではなくて、土曜日日曜日のたびにいろんな野暮用が入ってしまい、しばらく映画館に行かずじまいでした。
HPを見ると
「人生でやり残したこと、ありませんか?
往年のジャズの名曲と共に、希望に満ちたラストステージが今、幕をあける。」
よく見ずに、JAZZが画面にあふれている映画ならぜひ劇場で観たいと思いました。
渡辺貞夫も出演するということで、思い切りSWINGできるものと期待していました。

映画が始まると突然、文字が画面いっぱいにあらわれて『ハンセン氏病』の説明が始まります。
「えー!音楽映画じゃなかったの?」と動揺しました。
島の岬で一人トランペットを吹く人の後ろ姿が印象的なオープニングです。

場面変わって、ミニスカートの足のアップから入って、階段を勢いよく走っていく女子大生らしき女の子の目的地は大学のJAZZ研究会。
そこでは、トランペットをリーダーとするバンドが演奏しています。
トランペットを吹くのはこれから重要な役回りを演じる大学生の貴島大翔(鈴木亮平)です。

そこからパズルを1枚1枚はめていくように、映画の全体像を見せていきます。
少しまどろっこしいような気もします。

大翔が車(赤いチェロキー)で家に帰ると、若い女性が家を訪ねていて、父良雄(陣内孝則)母律子(古手川祐子)が深刻な顔をしています。
父・良雄が重い口を開きます。
亡くなったと伝えていた祖父は生きていて、ハンセン氏病療養所から50年ぶりに戻るから、我が家へ引き取ることにすると説明します。
大翔は大学の図書館でハンセン氏病のことを調べます。
若者の正義感からすぐに祖父を迎えに行くと宣言します。

ここからこの映画の主人公である貴島健三郎(財津一郎)が登場してきます。
健三郎は一時帰宅ということで家に帰ってきます。

大翔には、生まれて初めて会う祖父・健三郎との接し方がわかりません。
頑固一徹。会話もありません。
ところが何の気なしに聴かせた一枚のレコードに、健三郎の表情が一転します。
それは、健三郎がかつて所属していたCOOL JAZZ QUINTETTEのレコードでした。
しかし、健三郎は多くを語りません。

健三郎を迎えた家庭はぎくしゃくした関係になります。
健三郎は一時帰宅の目的は他の所にありました。

彼の願いはかつてのバンド仲間たちに何も言えないまま姿を消したあの日の許しを請うこと。

そして、あの日果たすはずだった、憧れのジャズクラブ“ソネ”でのセッションを実現させることでした。

そこから、健三郎と、大翔(ひろと)とのロードムービーが始まります。

一番好きなシーンは、車がこわれて二人坂道を歩くシーンです。

まだまだストーリーを語りたいところですが、これ以上語ると映画を観た時に楽しみが半減してしまうのでここらへんでやめます。

財津一郎の演技が迫真に迫っています。頑固で偏屈。50年間心に抱えてきた想いを果たそうと、

思うように動かなくなった手に杖を握らせ旅する姿は、家族や仲間たちの心を動かしていきます。

映画全体のテーマは“出会ってすぐに旅に出る祖父と孫”を軸にした"家族の絆"であり、

何十年も立っても忘れられない"友との絆"をテーマにしていると考えます。

でも、その背景にハンセン氏病という重たいテーマが横たわっているので、そちらのほうへも気持ちを向けてしまいます。

健三郎の登場によって結婚を間近に控えた大翔の姉は婚約者と別れることになります。
大翔も恋人に祖父のことを話した時からぎくしゃくし始めます。
今も現存する差別の問題も見え隠れしながら、そのことはさらっとかわします。

啓発映画のような臭いも感じながら、観てしまうのは仕方ないことかもしれません。

大翔役の鈴木亮平は、なかなかいい心の揺れを表現していたと思います。

2人を見守る女性看護士と健三郎のかつての恋人という2役に挑戦したのは、

映画『252 -生存者あり-』で注目され、日本で本格的に女優活動を開始したMINJIです。

さらに、往年のジャズバンド「COOL JAZZ QUINTETTE」のメンバーに、藤村俊二、クレイジーキャッツのベーシスト犬塚弘、

歌手で一世を風靡した佐川満男らが、味のある演技で脇を固めます。

渡辺貞夫がライブハウスの店長として登場して流ちょうなサックスを聞かせてくれるのはご愛敬ということで。

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『ニライカナイからの手紙』を観ました

2011-01-30 22:44:37 | 映画

テレビで『ニライカナイからの手紙』を観ました。

2005年.監督:熊澤尚人
出演蒼井優、南果歩、平良進、、金井勇太

沖縄を舞台にした映画は、いつも空気感が違うように思います。『ニライカナイからの手紙』は八重山諸島の竹富島を舞台にした映画です。
竹富島には古くからニライカナイの伝説と「うつぐみ」の精神が根付いているそうです。
「かしくさや うつぐみどぅ まさる」(協同一致の精神は、個人の知恵に勝る)という考え方は竹富島の古くからの基本的な考え方だそうです。
生活の基本とも言って良いと書かれている本もあるくらいです。
朝必ず、自分の家の周りの道路をみんなで掃き清めるシーンがたびたび出てきますが、これもこういう生活習慣の中の一つなのでしょう。
そういう人々の暮らしの中で、描かれていく映画です。
心を動かされないわけはありません。
きれいな海岸で、母と幼い少女が砂遊びをしているシーンからスタートします。
船着き場の古いポストの前で母は娘に「ニライカナイの伝説」を語る。
そのことが、物語の伏線になっていきます。
女の子の名前は安里風希(成長してからは蒼井優)で、母(南果歩)は幼い風希を竹富島に一人残し、東京へ帰っていきます。
その後、風希は島で唯一の郵便局長である祖父と暮らしていきます。
棚の上には父親らしき人の写真が飾ってあり、カメラが置いてあります。
風希の父はカメラマンだったのかもしれないという設定で、観客にはわかりなさいと暗示しているような気がしました。
母親はその後誕生日の日に「大好きな風希へ」と手紙が届きます。
でも、母親が島に会いにくることはありません。
風希は,竹富島の村の人々に包まれ,成長していきます。
高校を卒業するころになると、進路を巡って悩みます。
ここまで育ててくれた祖父は、20歳まで島にいるように言います。
父の形見であるカメラを使って撮影に興味をもって、土産物屋でも作品を販売している風希は、反発します。
東京に行って、カメラの勉強をしたいことと、母親に会ってみたいという思いから、祖父の元から旅立ちます。
東京に出てからは、当然のようにきびしい毎日が続きます。
母の手紙の消印局を訪ねても,母の住所を知ることはできません。
しかし母の手紙にあった「20歳の誕生日に会って全ての事情を話す」という言葉を頼りに,風希は自分の写真を撮り始めます…。

映像的はとても美しい映画です。
沖縄竹富島の風を感じることの出来る映画です。

14歳から20歳を演じた蒼井優はとても魅力的です。
途中から、「ニライカナイの伝説」が頭から離れなくて、結果が見えてきますが、蒼井の演じる風希の気持ちが、結論を急ぐのを止めてしまいます。
「蒼井優と一緒にその時のことを感じたい」と感情移入させてしまいます。

竹富島の人々の描き方も良心的です。
エンディングを前にして、哀しみにうちひしがれた風希の下へ、島の人々が次々に現れます。
ささやかな贈り物を手に彼女を訪れ、声をかけその身体にそっと触れ、挨拶をして帰っていきます。
何時までも続くその人々の列です。
そんなやつはおらんやろー!と思いながら、これが「うつぐみ」の精神なのかと思わせます。
ただ、少しだけ気になったのは、郵便局の幟やゆうぱっくの箱です。
何度も何度も出てきます。
この映画が出来た頃はちょうど郵政民営化でごたごたしていた時期だと思います。
「郵政民営化になると、離島の郵便局はなくなりますよ」と言わんばかりの感じです。
直接映画の流れとは関係のない、人のいい郵便局長の存在や、おじいおばあの家を一軒一軒訪問している映像、

「役場から手紙が来たからお金がもらえると思ってきた」というおばあを郵便局に招き入れて、

違うことを説明する場面など、ちょっとやりすぎじゃないの?と思わせる場面があります。
撮影協力なのか、資金的援助があったのかわかりませんが、そこは見ないようにした方が良いと思います。

郵便局のくだりは差し引いてみても、蒼井優の演技はいいです。
映画を観ると竹富島に行きたくなりました。

 

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