季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

バナナ

2017年09月19日 | Weblog
バナナが超高級品だったなど、今の若い人には想像もつくまい。

小学校の遠足などに持ってくる生徒が出たら大騒動になった。それくらい高価だった。そう、出たら、そう書きたいほどの事件性を持っていたのである。

従って遠足などに持ってくるのは禁止であり、違反したら簡易裁判所行きは免れなかった。嘘だけどね。

それがいつしかひと山いくらで店頭に放置されるようになった。私の昭和史で書きたいほどの変化だ。

バナナで印象深かったのは我が師ハンゼンである。

ハンゼンはハンブルグに住み、鉄道を利用してリューベックの学校へ通っていた。僕もハンブルグに住み、レッスンの日には先生と同じ列車で行くことが多かった。

ボックス席に向かい合って腰掛けると、カバンを開きおもむろにバナナを取り出し、ゆっくり皮を剥くのだった。

そして大家然とした微笑みを浮かべては僕に「見たまえ、世界一清潔で安全な果物だよ」と語りかけるのを常とした。

僕ばかりではない、全ての生徒がこのセリフを聞いたはずである。ある種の生徒はハンゼンの教えは忘れ果ててもバナナ清潔説は決して忘れないだろう。

思うにハンゼンは農薬問題などは全く関心も知識もなかったに違いない。バナナから高濃度の農薬が検出されたニュースも知らぬままだっただろう。

今や懐かし思い出である。
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