未唯がわが家にやってきたのは、平成2年の9月初旬だった。
専門誌で探したミニチュア・ダックス専門のブリーダーを訪ねて、数匹の子犬と面会。
一番小さな子を抱き上げると、じっと私を見つめて視線を逸らさない。それが未唯だった。
兄弟のなかで最も鼻が短く、一番ダックスらしくない感じもした・・・・。
家にやってきたのは、生後45日。その頃は、手のひらに載るくらい小さかった。
あの日以来約18年間、常にわが家の中心で可愛さを振りまいてきた未唯。
当時は、「ヨーロッパ式犬のしつけ方」という本に傾倒して、厳しく躾けたもの。
キッチンやダイニングには入らないように、夜はサークルの中で眠らせるように・・・・。
でも、未唯の可愛らしさに負け、少しずつ、少しずつ制約は緩んでいった。
一ヶ月もすると、膝に抱えて食事をしたり、同じ布団で一緒に寝るようになったり・・・・。
未唯は賢い子で、教えたことはすぐに覚えた。
飼い始めた当初、妻は、毎日のようにその日の教育成果を披露してくれたもの。
そんな未唯、小さな頃から出かけるときはどこにでも連れて行った。
飛行機にも何度も乗ったので、未唯は、自分で貯めたペットマイルで旅行したこともある。
私たち夫婦に対する気遣いをする一面もあって、本当は妻が一番好きだったのに、
夜、ベッドに入ると最初の5分間は、私の脇の中にもぐり込んで過ごし、
その後、妻のそばに行って朝までぐっすり眠るのが未唯の日課だった。
朝は、妻と一緒に起き出して、朝食を作る妻の足にまとわりつく。
私が起きる時間になり、妻が「お父さんを起こしてきてね」と声をかけると、
ダダッと走ってベッドに飛び乗り、私の顔をペロペロ舐めて起こしてくれたものだ。
寝起きの悪い私も、これには参った。くすぐったくて眠っていられない。
それでも起きない時は、未唯は自分のほっぺを私の口や鼻に押しつけて起こそうとする。
私たちが、「未唯のほっぺ押さえ」と呼んでいたこの技、
起こしても起きない私に対する抗議の頭突きだったのかもしれない(笑)
未唯は、私たちの話す言葉を、かなり正確に理解していたと思う。
いつも未唯に話しかけると、小首をかしげながら聞きいってくる。
表情が豊かな子だった。
以前は、気の置けない友人たちとよくアウトドアに出かけたもの。
いつも一緒だったので、たくさんの人たちから、いっぱい可愛がってもらった未唯。
年老いて具合が悪くなったとき、そんな友人たちから温かい応援のメッセージを頂いた。
2度の手術にも耐え、私たちと過ごすために最後まで一所懸命頑張ってくれた未唯。
最後の1年間は、一日一日が天からの授かりもののような毎日だった。
よく頑張って青森から引越し、私たちの終の棲家まで一緒についてきてくれた未唯。
九州では大好きなおばあちゃん達に出迎えられ、私たちの新居で一晩過ごした翌日、
妻と母が見守るなか、りんごジュースを一口飲んだあと、静かに旅立った。
昨日の夜、母と姉が未唯のために花を届けてくれた。(ロールケーキまで・・・・)
今日は、平成21年4月18日。早いもので、もう未唯の一周忌です。
未唯と過ごした17年と9ヶ月は、本当に密度の濃い充実した家族生活でした。
未唯がいなくなった今も、妻と語り合う未唯の思い出は尽きることがありません。
これから先も、未唯が私たちの記憶から遠ざかることはなく、
いつも一緒にいるような気がしています。