パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

三浦和義=スメルジャコフ説

2008-10-12 22:13:20 | Weblog
 久しぶりに電車の網棚で朝日新聞を拾い、読む。

 以前にくらべると、少し「まし」になった感があるが、社会面は相変わらずだ。三浦事件について、浅野健一という同志社大学の教授に以下のように代弁させている。

 「捜査に先行してメディアが過熱報道をして社会現象になったために、無罪が確定した後も疑惑を払拭できなかった。今回の逮捕で『やっぱりあの人は怪しいんだ』と報道が再燃した。『犯罪報道の再犯だ』」

 じゃあ、浅野教授(及び代弁させた朝日新聞社会部)に聞くが、三浦が無罪だと本心から思っているのか? そうじゃないだろう。

 自分の本心を隠して、お説教を垂れる。こういうのを無責任っていうんだ。

 今回の三浦の行動は、ドストエフスキーの『カラマゾフの兄弟』のスメルジャコフに似ている。

 スメルジャコフは、カラマゾフ家の家長でカラマゾフの三兄弟の父親であるフョードルの私生児であると噂される青年で、同家の下男として働いていた。

 ある日、フョードルが殺される。フョードルと金と女をめぐって確執のあった長男ドミトリーが捕まる。ドミトリーは、父が殺された前の日、酔っぱらって「あいつを殺す」と皆の前で叫んだりしていたのだ。

 そのドミトリーの裁判の前日、スメルジャコフがフョードルの二男、イワンに、フョードルを殺したのは私だ、と告白する。

 ドミトリーは、皆の前で「親父を殺す」と宣言して、実際に殺すつもりで父の家にやってきたが、いざとなると決心がつかず、物音を聞きつけ、窓を開けて外を見たフョードルを見て、怖じ気付き、その場から逃げ出すが、その息子である不審者が逃げて行く様子を見ていたフョードルの背後から、スメルジャコフが殴り殺したのだった。

 イワンは、スメルジャコフに、明日の法廷で、今自分に言ったことをすべて話すように頼むが、スメルジャコフはそれを断る。そして、「無理に法廷に引っぱりだしても無駄ですよ。私は、そんなことは一言も言わなかった、と言いますから。」と言う。

 そして、スメルジャコフはフョードルから奪った金をイワンに返す。イワンが、この金が証拠になる、というと、スメルジャコフは、「あなたはお金持ちだ。そのあなたが法廷に、お金を持ち出したって、自分の金庫から出したとみな思いますよ」と言う。

 いらついたイワンが、「ともかく、明日また法廷で!」と言って、別れようとすると、スメルジャコフが、「旦那!」と呼び止める。

 「なんだ?」とイワン。

 「おさらばです」とスメルジャコフ。(三浦の帽子の文句そのままだ)

 その数時間後、イワンは、スメルジャコフが自殺したことを知らされる。

 イワンは、法廷でスメルジャコフが真犯人だと主張するが、スメルジャコフが読んだ通り、陪審員を説得することはできず、ドミトリーは父親殺しで有罪となる。

 という話だが、どうだろう、裁判の前日に、それを聞いたらもっとも打撃を受けるであろうイワンにすべてを告白し、告白した上で自殺したスメルジャコフは三浦和義に似ていないだろうか?

 スメルジャコフの目的はイワンを侮辱することだった。三浦は?

 マスコミは三浦の自殺で真相は永遠に葬られたというが、そうじゃない。三浦が犯人であることはみんな知っている。そして、みんながそう思っていることを三浦も知っている。

 この二つの条件で行われたゲームが「三浦事件」だったのだ。(もうひとつ、三浦が犯人であることは、このゲームを支える無意識の基盤だ。三浦が無罪であり得ないというのは、無罪だったらゲームが成り立たたないからだ)

 で、ゲームの勝者はというと……残念ながら、三浦和義であったと言わざるを得ない。(ちなみに、浅野なんとかという教授は、このゲームのどこにも自分の位置を見出せない、まさに「アホ」な役回りでしかない。)