本日も清心蓮子飲加減の慢性腎炎治療です。随時( )内に私の印象とコメントを入れます。
患者:趙某、35歳 女性 工場労働者
初診年月日:1988年1月6日
病歴:
患者が述べるには、4年前肉眼的血尿があり、急性糸球体腎炎と診断を受けて、病情は好転した。以後、反復発作が有り、発作は軽重し、尿RBC10~50個/HPの間で、尿蛋白は+~2+。中西薬治療を受けたが完全緩解に到らず、氏を受診した。
初診時所見:
患者精神萎縮、全身乏力、腰部酸楚、舌淡で水っぽく、脈沈。尿RBC20~30個/HP、蛋白2+。
中医弁証:気陰両虚、気虚を主として、湿熱留恋、血溢脈外
(血溢脈外とは血が経脈から溢れて血尿となったの意味です)
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:益気養陰利湿熱止血
方薬:清心蓮子飲加減:
黄耆30g 党参20g 地骨皮15g 麦門冬15g 茯苓15g 柴胡15g 甘草10g 白茅根30g 小薊30g 藕節20g
{益腎固渋の石蓮子、清熱利尿の車前子が除かれています。黄芩も除かれています。氏がよく配伍する白花蛇舌草30g 益母草20gの組み合わせも有りません。
原方から車前子(甘淡/寒 利水通淋、止瀉、清肝明目、清肺化痰、清肝明目)と黄芩(清熱解毒利湿)を去り、なおかつ益腎固渋の石蓮子も去り、白茅根(凉血止血、清熱利尿)と小薊(涼血止血、解毒消癰)、藕節(収斂止血)の加味という組成です。こうなると本体の清心蓮子飲からは随分離れた印象になります}
水煎服用:1日1剤、二回に分服
二診 1988年1月18日
上方服用6剤、乏力が改善するのを感じたが、尿RBC20~30個/HP、尿蛋白2+、余症の変化は明らかでなかった。上方より、小薊、甘草を去り、車前子、旱蓮草(養陰清熱止血)を加味した。
黄耆30g 党参20g 地骨皮15g 麦門冬15g 茯苓15g 柴胡15g 白茅根30g 藕節20g 車前子15g 旱蓮草20g
水煎服用:1日1剤、二回に分服
三診 1988年2月3日
上方服用6剤で、尿RBC(-)、尿蛋白1+、やや腰酸があり、余症は軽減した、舌淡紅、脈沈以前より有力。湿邪は除かれ、知柏地黄湯加茜草(涼血化瘀止血)、藕節、海螵蛸(烏賊骨に同じ、収斂止血、固精止帯、収温斂瘡、制酸止痛)、旱蓮草で治療効果を固めた。連続服用十四剤で、諸症は消失し、尿検査正常、患者に治癒と告げた。随訪1年病情穏定、再発は無い。
ドクター康仁の印象
治療効果は見事でしたが、清心蓮子飲の君薬ともいえる石蓮子が一切登場しないのはどうしたものでしょう。
最終的には陰虚火旺に対する補腎陰退虚熱の知柏地黄丸に更に養陰し、止血作用もある旱蓮草、その他の涼血、収斂止血剤の加味方に落ち着きました。
印象は一言、「不可解」です。
どこかにブラックボックスがあるでしょう。
2014年2月13日(木)