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慢性腎炎 桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療278報)

2014-02-26 00:15:00 | 慢性腎炎 漢方治療

桂枝湯(桂枝 白芍 生姜 大棗 甘草)に黄耆を加えた方剤です。

医案に進みましょう。

患者:程某 48歳 男性

初診年月日1998115

病歴及び初診時所見

慢性糸球体腎炎歴3年、血清蛋白が低下気味で、尿蛋白3+、浮腫は明らかでない程度、身倦乏力、面色皓白、気短、心中空虚不快を自覚、大便後に加重する、患者は涼薬には耐えられない、舌淡紅、苔白、脈滑。

中医弁証:久病後営衛受損、陰陽失調

西医診断:慢性糸球体腎炎

方薬桂枝加黄耆湯加味:(付記、益気調和営衛の目的でしょう)

桂枝20g 黄耆30g 白芍30g 大棗5枚 生姜10g 小麦50g 甘草15

水煎服用、毎日二回に分服

経過

服用6剤後、諸症は全て好転を見る、この後、上方に利湿清熱、固摂薬治療100剤近く行う。尿蛋白±、諸症消失して病は緩解した。

ドクター康仁の印象

営衛不和(えいえいふわ)という漢方用語があります。

傷寒論の太陽病脈証并治に出典された用語です。現代中医学では衛強営弱(えきょうえいじゃく)に加え、衛弱営強(えじゃくえいきょう)という概念も提供しています。衛気が虚弱で、汗が自然に出てくる。発熱がなく、時々自汗がある。という概念です。

調和営衛(ちょうわえいえい)という漢方用語があります。

これは桂枝湯の治療目的のひとつと考えるとよいようです。

通陽発散の桂枝と養営斂陰の白芍、生姜と益気脾胃の大棗の2組で調和営衛します。営衛不和を改善する方法とも言い換えられます。衛強営弱を調和するものです。

はて、本案は衛営倶弱かもしれません。

現象を説明するには理論が必要です。独自の用語も出現してきます。中国伝統医学の基礎理論や独自な用語は、いわば、言語体系とも言うべきもので、英語を理解するときに英単語と文法の知識が必要であるのに似ていると私は考えます。しかし定義が概念的である用語での現象表現はあくまで概念的にならざるを得ません。

小麦とは浮小麦で甘/涼で益気止汗に作用します。黄耆の益気固表と一緒にすれば自汗に対応し、寝汗(盗汗)には単味あるいは養陰薬と配伍します。本案では養陰薬の配伍は無く、養営斂陰の白芍が配伍された桂枝湯ですから、黄耆と小麦で益気固表止汗と考えるべきでしょう。つまり衛弱に対する治療といえるでしょう。

固表により、風邪を予防し、腎炎の再発を防ぐ目的であろうと思います。もしくは診察の時点で、何らかの印象、例えば風邪を引き易い、風邪を引くと蛋白尿が増えるという印象を強く受けたのでしょう。

保険の効くエキス剤でしたら甘麦大棗湯(甘草、小麦、大棗)と桂枝湯を合わせて服用すればいいでしょう。

単独では6剤しか服用していないのですから、果たして慢性腎炎の基本治療方剤といえるかどうか疑問です。

本格的な治療をする前のコンディショニング(下地作り)の意味合いが強いと感じます。

2014226日(水)