( )内に付記や私の印象を適時いれます。
利湿解毒飲(りしつげどくいん)については、ネフローゼ症候群 利湿解毒飲(りしつげどくいん)加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療259報)で紹介しました。
中医弁証:湿熱毒邪蘊結下焦に対して、清熱利湿解毒を以って治療するとあり、
方薬:利湿解毒飲加減:(張琪氏の創方)、方意は活血利水消腫、清熱解毒利湿利咽、組成は
瞿麦(活血利水通淋)20g 萆薢(苦/平 利水滲湿)20g 土茯苓(菝葜 山帰来に同じ、清熱解毒泄濁除湿利関節)50g 白花蛇舌草30g 薏苡仁25g(健脾利水滲湿) 滑石20g 白茅根(凉血止血、清熱利尿)25g 山薬20g 益母草(活血利水消腫)30g 金桜子(酸渋/平 固精、縮尿、渋陽止瀉)15g 萹蓄(利水通淋)20g 竹葉(清熱除煩、生津、利尿)15g 山豆根20g(清熱解熱毒利湿利咽) 重楼30g(清熱解熱毒利湿利咽)
さて医案に進みましょう。
患者:楊某 38歳 男性
初診年月日:1991年6月19日
病歴:
1ヶ月前にに腰痛、尿蛋白4+、RBC満視野/HP、顆粒円柱2~3個/HP。ハルピン市某医院で「慢性糸球体腎炎。急性発作」と診断され、入院治療1ヶ月、(浮腫は消退し)腰痛軽減。但し蛋白尿は2+~3+、RBC10~20個/HP、顆粒円柱0~1個/HP。血圧21.3/13.9pK(159,75/104.25mmHg)
初診時所見:
腰痛 腰痛は軽度、尿色深黄、尿混濁、咽干、全身乏力、眩暈、舌質紅、舌苔厚膩微黄、脈滑。
中医診断:脾腎陽虚 湿熱内蘊
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:急即治標、補脾益腎利湿熱併用
方薬:利湿解毒飲加減
茯苓25g 萆薢20g 白花蛇舌草30g 萹蓄(利水通淋)20g 白茅根(凉血止血、清熱利尿)30g 竹葉(清熱除煩、生津、利尿)15g 生山薬25g 薏苡仁20g 小薊(涼血止血、解毒消癰)25g 甘草10g
水煎服用 毎日1剤
経過:
前方7剤を服用、尿の混濁は減軽、尿色は転浅した。余症の変化は顕著なものは無い。さらに継続服用7剤で、尿は既に混濁無し、尿色淡黄、尿蛋白2+、RBC5~10個/HP、舌苔黄白膩、脈はまだ滑。
この後、益気養陰、清利湿熱法、標本兼治2ヶ月余、尿蛋白マイナス~±、その他正常、自覚症状無し、清心蓮子飲を服用して治療効果を固めた。半年後再検、病情穏定。
ドクター康仁の印象
茯苓は土茯苓の誤植ではないかと思います。健脾利水もさることながら、清熱解毒泄濁除湿利関節の土茯苓が本案には適していると思いますし、過去の医案からも、土茯苓と萆薢のカップルの配伍が多いからです。茯苓の配伍が間違っていると指摘しているのではありません。誤植があったのでは?と推測しているだけです。
利湿解毒飲→清心蓮子飲の流れは覚えておいていいと思います。
それにしても、本体の腎病が一体何なのか、ただの慢性糸球体腎炎で済まされるのかですね。1991年ですから弁証と弁病の端境期です。
氏のお気に入りの活血利水消腫の益母草の配伍が無いのも不思議ですね。
「補脾益腎利湿熱併用」と記載されていますが、どの生薬が益腎なのでしょう。単に字面では金桜子などの益腎固渋薬に益腎という用語が出てきますが、配伍しても、残存蛋白尿に対してなんら不思議ではないですね。
2014年2月24日(月)
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