花粉瞿麦湯(かふんくばくとう)については既にネフローゼ症候群の栝萋瞿麦丸(かろくばくがん)治療(250報 251報 252報)でご紹介しましたので戻って検索すれば大半がご理解いただけると思います。花粉瞿麦湯も栝萋瞿麦丸も同じです。
「栝萋瞿麦丸」の原典は金匱要略で「消渇小便不利脈証併治編」であり、条文は「小便不利者、有水気、其人若渇、栝萋瞿麦丸主之」であり、原方は栝萋根、瞿麦、附子、山薬、茯苓の組成です。栝萋瞿麦も薬性は共に寒です。氏は栝萋根由来の天花粉を使用しています。二文字で花粉と記載している場合は天花粉を指します。氏の栝萋瞿麦丸にも附子(熱)が配伍されていますので、天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿) 瞿麦(活血利水通淋) 附子 山薬 (甘草) 茯苓湯とそのまま覚えた方が、記憶が確かになります。
方証は、ネフローゼ症候群では、全身水腫、口干咽燥、小便不利、胸中煩熱、手足心熱、腰痛畏寒の上熱下寒証ですが、乏力など気虚症状が強ければ最初は黄蓍の増量、次に党参加味、咽痛が強ければ清熱解毒利湿利咽の山豆根20g 重楼30gの加味、便溏、少腹痛を伴えば健脾燥湿の白朮、温裏散寒の炮姜などを加味ということでした。
主治:肺熱脾虚腎寒証
効能:清上温下利水
さて、本日の医案(慢性糸球体腎炎)に進みましょう。
患者:王某 30歳 男性
初診年月日:1989年5月29日
病歴:
慢性糸球体腎炎歴二年余、尿蛋白2+~4+。嘗て中西薬治療を受けるが効果不明確。近日病情加重、患者浮腫、尿少、尿量400ml/24hr、腰酸乏力、下肢冷、口干、時に咽痛あり、舌紅苔白、脈細にして無力。尿蛋白4+、嘗て、ステロイド、利尿剤で緩解なし。
中医弁証:肺中燥熱、腎陽虚上熱下寒、気化不利
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:清肺温腎利湿法
方薬:栝萋瞿麦丸加減
天花粉20g 瞿麦20g 附子15g 山薬20g 茯苓15g 澤瀉20g 黄耆30g 蒲公英30g 甘草15g
水煎服用、毎日2回に分服。
二診 1989年6月14日。
上方12剤、尿量増加して2000ml/24hrになる。浮腫全消、余症明確に好転、尿蛋白2+、やや乏力、納差、舌淡紅、脈滑、健脾益気、清利湿熱の調剤に改め治療。全快となった。
ドクター康仁の印象
個人がほぼ一生をかけた仕事内容を短時間で総括して自分のものに出来るのですから、得だとは思いませんか?それこそ温故知新です。
1980年代の医案は弁証が中心で、使用される生薬数が少ないですね。
2014年2月23日(日)