本日も升陽益胃湯による慢性糸球体腎炎の治療を紹介します。
患者:陳某 23歳 女性
初診年月日:1990年3月12日
病歴:
患者慢性糸球体腎炎歴一年余、かつてステロイド、シクロフォスファミドの治療を受けるが効果不十分、遂に氏を受診し入院となった。
初診時所見:
双下肢に陥没性浮腫、顔面も浮腫みっぽい、面色萎黄、腹部やや膨隆、食少納呆、全身乏力、やや畏寒あり、尿少、毎日尿量250ml程度、舌体胖苔滑潤歯痕有り、舌質淡、苔薄白、脈沈細。腎エコー検査:双腎区炎症性変化あり、左腎積液、腹水有り。尿蛋白3+、尿糖2+、尿中WBC5~10個/HP。ヘモグロビン7.8g/dL、コレステロール3.37mmol/L(130mg/dL)、トリグリセリド2.66mmol/L(226.1mg/dL)、血清総蛋白3.3g/dL、アルブミン1.5g/dL、グロブリン1.8g/dL、BUN正常範囲。
中医弁証:脾気欠虚、精気不升、湿熱阻遏
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:益気健脾、除湿熱、升陽挙陥
方薬:昇陽益胃湯加減:
党参20g 茯苓20g 白朮20g 黄耆30g 川黄連10g 半夏15g 陳皮15g 澤瀉20g 防風10g 羌活10g 柴胡15g 白芍15g 生姜15g 大棗5個
水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
経過:
一ヵ月後、患者の下肢の腫脹は減軽、食欲好転、尿量正常、さらに継続服用1週。
浮腫は全消、諸症は治癒に近くなった。尿蛋白+、尿糖(-)、尿RBC、WBC皆消失。ヘモグロビン8.2g/dL、コレステロール1.69mmol/L(65.4mg/dL)、トリグリセリド1.68mmol/L(142.8mg/dL)、血清総蛋白6.8g/dL、アルブミン2.6g/dL、グロブリン4.2g/dL。この後、患者は皮膚病にて転院した。
ドクター康仁の印象:
本当ですか?と感嘆するくらい見事な仕上がりです。
古典的升陽益胃湯+生姜 大棗でした。
面倒くさい中医論はこの際やめておきましょう。
このような若い女性患者が張琪氏の治療によって快癒した(に近くなった)というお話です。
2014年2月19日(水)