本日も清心蓮子飲加減の慢性腎炎治療です。随時( )内に私の印象とコメントを入れます。
患者:劉某 9歳 女児
初診年月日:1989年6月18日
病歴:
慢性糸球体腎炎病歴1年余。嘗て中西薬物治療を受けたが完全緩解にならなかった。
初診時所見:
眼瞼に浮腫有り、尿色淡黄、尿量24時間1500~1800ml、排尿後下腹部疼痛、腰痛、全身乏力、納谷不香(何を食べても美味しくないという意味に近く、気虚の証です)、口干(口が乾燥する意味で一般には陰虚の証です)。尿蛋白2+、WBC3~4個/HP、RBC10~20個/HP、舌淡紅、苔薄白、脈滑無力。
中医弁証:脾気虚、腎陰虚、湿濁内停且つ化熱の勢い有り
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:益気養陰兼利湿熱
方薬:清心蓮子飲加減:
黄耆20g 党参15g 石蓮子10g 地骨皮10g 麦門冬10g 茯苓10g 柴胡10g 益母草20g 白花蛇舌草20g 甘草10g
水煎服用:1日1剤、二回に分服
二診 1989年6月25日
上方服用6剤、腰痛、乏力全て減軽、尿蛋白1+、WBC0~1/HP、RBC2~5個/HP、まだ納少(食が細く、多く食べられない)、舌淡紅、脈滑。既に効果が出ているので、上方加減をした。
方薬
黄耆20g 党参15g 地骨皮10g 麦門冬10g 茯苓10g 柴胡10g 石蓮子10g 甘草10g 白花蛇舌草30g 車前子15g 黄芩10g
(黄芩と車前子を加味し、益母草を去っています)
清熱利湿解毒の効を加重し、継続服用する。
三診 1989年7月9日
上方12剤の服用で、腰痛、下腹部痛消失、眼瞼浮腫を認めず、気力増加、尿検査正常、舌淡紅、苔薄黄、脈滑。上方加減。
方薬
黄耆20g 党参15g 地骨皮10g 麦門冬10g 茯苓10g 柴胡10g 石蓮子10g 甘草10g 白花蛇舌草30g 車前子15g 黄芩10g 赤芍(清熱涼血活血)10g 益母草(活血利水消腫)20g
(二診の方薬に赤芍を加味し、益母草を再度加味しています)
十余剤を連続服用するように患者に話して治療効果を固めた。
半年後再診、再発は無い。
ドクター康仁の印象
最初から清心蓮子飲原方に柴胡、白花蛇舌草、益母草、赤芍を加えた三診の方薬で対処しても結果は同じではなかったのではないかというのが私の推測です。その時の張琪氏の患者から受ける印象と氏の直感までは汲み取れません。利水薬の車前子、清熱解毒薬の黄芩を引っ込めたり再処方したり、活血利水消腫の益母草を中止して2週間足らずで再処方していますが、どうにも小生の頭では説明がつきません。
日本では、
排尿時に下腹部痛(原文では少腹部痛)があれば「膀胱炎の軽いものですよ」と言われそうな気がします。
腰痛は「高度な発熱があれば腎盂炎も考えられますが、前からあるのなら整形外科ですね。とりあえず抗生物質処方しておきますので様子見てください」となりそうです。整形外科でNSAIDを処方され、結果、NSAIDで腎機能の悪化を招くことにもなりかねませんね。本質から離解していく典型があります。
くわばら、くわばら。
明日も飽きずに慢性糸球体腎炎の清心蓮子飲加減治療を進めます。
飽きずにお付き合い下さいね。
さても、
「湿濁内停且つ化熱の勢い有り」つまり湿熱(下焦)内蘊になりつつあるということですが、微妙な弁証用語ですね。
2014年2月12日(水)