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ネフローゼ症候群 茯苓利水湯加減治療 張琪氏漢方治療(腎病漢方治療257報)

2014-02-05 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

茯苓利水湯と言えば、茯苓が先で茯苓 澤瀉 猪苓の順になるのではないかと思いますが、氏の茯苓利水湯は木香 檳榔 青皮と先に行気薬が配伍されています(初診時)。

患者:金某 18歳 男性

初診年月日200058

主訴:腹部張満、尿少、双下肢浮腫一週間

病歴:ネフローゼ症候群歴一週間

初診時所見

腹部張満、尿少、双下肢浮腫、納差を伴う、胃脘部不快、苔白膩、脈滑、腹部膨隆、腹液証+、尿蛋白3+、血清総蛋白5.7/dL、アルブミン1.9/dL、総コレステロール11.50mmol/L445m/dL)、トリグリセリド3.90mmol/L331.5m/dL)。

中医弁証:脾虚不運、気滞水蓄

西医診断:原発性ネフローゼ症候群

治法健脾行気利水

方薬茯苓利水湯

木香10g 檳榔25g 青皮10g 陳皮15g 紫蘇15g 茯苓40g 白朮30g 党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜10g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 2000年 5月 22

腹液、浮腫ともに消え、尿蛋白+、尿量正常、自覚症状無し、舌紅、咽赤。

方薬:茯苓利水飲加減:(上方より木香 檳榔 青皮の行気薬を除き白花蛇舌草、金銀花、連翹を加味した)

方薬:茯苓利水湯加減

陳皮15g 白花蛇舌草30 金銀花30g 連翹30g 紫蘇15g 白朮30g 茯苓40

党参20g 海藻30g 川厚朴15g 乾姜20g 砂仁15g 澤瀉20g 猪苓20g 益母草30g 黄耆30

7剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 2000年 529

尿蛋白転陰、連続2回尿検査異常なし、血脂は降下し正常になり、血清アルブミンは3.1/dL、病情は緩解した。

ドクター康仁の印象

僅か3週間で浮腫、腹水、蛋白尿までが消えたのですから見事な治療です。

茯苓利水湯の出典は「医宗金鑑」で原方は茯苓30g 猪苓20g 木瓜(酸/温 行気止痛、健脾消食、止瀉、平肝舒筋、和中袪湿)10g 澤瀉20g 檳榔20g 党参20g 白朮20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15g 陳皮15g 麦門冬15gです。本案では木瓜、麦門冬は配伍されていません。

茯苓30g 猪苓20g 澤瀉20gは利水、檳榔20g 木香10g 海藻30g 紫蘇15gは理気(行気)であり、気滞は水停を起こし、気がめぐれば水行する、という中医理論から、行気と利水を同時に行った訳ですね。海藻(消痰軟堅 利水退腫)30gの配伍は腹水があるばあいに張琪氏は愛用するようです。黄耆、党参、白朮、茯苓は益気健脾利水の効果で祛邪(利水)と補益を兼ねるものです。二診では既に浮腫が全消したのですから、行気利水の木香 檳榔 青皮を除き、舌紅、咽赤に対して金銀花 連翹の清熱解毒薬を加味しました。白花蛇舌草も清熱解毒利湿薬ですが、免疫調整という弁病的な考慮もあるかもしれません。乾姜を配伍した理由は氏がやや脾胃虚寒の印象を持ったのかも知れません。あくまで推測ですが。畏寒肢冷、便溏などの腎陽虚を兼ねる場合には附子を配伍するでしょう。

2014年2月5日(水)