患者:林某 37歳 男性
初診年月日:2000年6月10日
病歴:
患者は慢性糸球体腎炎の病歴1年余、現地の病院で雷公藤総苷片及び中薬治療を受けるが効果は不十分。来診時、尿蛋白3+、潜血+、Cre225μmol/L(2.54mg/dL)、BUN11.5mmol/L(69mg/dL)、二酸化炭素結合力20mmol/L。
初診時所見:
患者倦怠乏力、腰酸腿軟、手足心熱、僅かに悪心あり、明らかな浮腫は無い、舌質紫苔厚、血圧160/100mmHg。
中医弁証:気陰両虚挟有湿熱瘀血
西医診断:慢性糸球体腎炎、慢性腎不全(高窒素血症期)
治法:益気陰、清利湿熱、活血
方薬:清心蓮子飲加味:
黄耆50g 党参30g 地骨皮20g 麦門冬20g 茯苓20g 柴胡15g 黄芩15g 車前子20g 石蓮子15g 甘草15g 白花蛇舌草30g 益母草30g 桃仁15g 丹参20g葛根20g 生地黄20g 大黄7g
水煎服用:1日1剤、二回に分服、同時に降圧剤を服用
経過
上方60余剤の3ヶ月治療を経て、尿蛋白転陰、尿潜血転陰、Cre75μmol/L(0.85mg/dL)、BUN7.8mmol/L(46.8mg/dL)、この後、数回検査をしたが、腎機能及び尿検査均しく異常なし。かくして病情は緩解した。
ドクター康仁の印象
前案(261報)では、浮腫があり、血尿が本案より強く、腎機能の低下も無かったのです。そこで清心蓮子飲加味として、以下が加味されました。
白花蛇舌草(清熱解毒利湿)30g 益母草(活血利水消腫)30g瞿麦(活血利水通淋)20g 萹蓄(利水通淋)20g 金銀花(清熱解毒利湿)30g 大薊(涼血散瘀止血)30g 小薊(涼血止血、解毒消癰)30g 白茅根(凉血止血、清熱利尿)30g
本案では浮腫は無く、腎機能の低下があります。そこで加味されたのは、以下、
白花蛇舌草30g 益母草30g 桃仁15g 丹参20g葛根20g 生地黄20g 大黄7g
益母草までは前案と同じ生薬配伍ですが、桃仁や丹参、葛根などの活血祛瘀剤の組み合わせが目立ち、活血、通腑泄濁の大黄が加味されています。生地黄で十分に養陰するという工夫もなされています。
素晴らしい見事な治療結果でした。尿所見が正常化し、Cre、BUNが正常域になったということが、その根拠です。
欲を言えば、服用していた降圧剤の名前と、1年後から数年後の追跡調査が欲しかったですね。
2014年2月10日(月)