今日も暑いですね。
今日は第二次世界大戦が終結してから80年目の節目の終戦記念日です。

80年目というのはとても大きな意味をもち、実際に戦地で戦闘を体験した人は100歳前後となり、すでに亡くなられている方がほとんどで、戦地に行かずとも内地で戦時の体験をした方も、人間の記憶がはっきり定まるのが5歳前後からですので、最も年少の方でも85歳前後となります。すなわち戦争の実体験を語ることの出来る方がそろそろ寿命を迎えられ、今後は実体験を語ることの出来る人がほとんどいなくなっていく、というのが『80年』の持つ重みです。
今後は戦争体験のない人が、本や映画からの想像で戦争について考えていくことになります。かつて戦地での戦闘を経験した人、戦争体験のある人の話を色々聞きましたが、話を聴いた全ての人が『戦争は絶対反対』でした。僕自身も戦後生まれで、戦争の実体験はありませんが、戦争を体験した方の話を聴いたり、書かれた書物を読み、また世界を飛び回っていた頃、ヨルダンで中東戦争で家を追われたパレスチナの戦争難民のキャンプを実際に見て、いかに戦争がすべてを奪う悲惨なものか知りましたので、今までのブログ記事でも書きましたが、戦争は絶対反対です。戦争に勝者も敗者もありません。どちらも人道上の『敗者』です。
日本は太平洋戦争で、日本人だけで310万人もの戦没者を出しておきながら、なぜこのような悲惨な戦争を起こしたのか、だれに責任があるのか、どうすれば戦争を起こさないのか、この80年間、国家として、詳細に検証・評価・反省もせず、責任もうやむやにして、国民の総意を形成してきませんでした。連合軍による極東軍事裁判はありましたが、これは戦勝国が敗戦国である日本を一方的に裁いたもので、不条理な部分も多々あり、日本国民が評価・責任を明確にしたものではありませんでした。
日本人特有の『死者に鞭打たない』や『済んだことは仕方がない』というある種の淡白さと潔さと諦念と無責任体制から、あまり過去のことをあれこれ評価しない性質があるのかもしれませんが、それではいつまでたっても歴史から学んだり、教訓を得ることは出来ず、過去の失敗をまた繰り返します。旧軍人で潔い人は敗戦の責任を感じて自決しましたが(それすらもしないで、責任を逃れ、戦後も国会議員などになり、のうのうと生き延びた旧軍人や高級官僚は大勢おり、彼らよりはましですが)自決したからそれで全ての責任から解放される、という軽い、都合のよいものではありません。
自衛隊の存在意味、憲法改正、天皇制、日米安保など戦後を代表する大きな問題は国家として検証し、総意を形成することを怠ってきたために生まれました。そして、今日蔓延しているのは、自称左翼の『日本はアジア諸国を侵略戦争で苦しめたので謝罪を続けなければならない。憲法9条改定は絶対反対』や、かたや自称歴史修正主義者や右翼の『欧米列強からの侵略からの自衛として開戦はやむをえなかった。日本はアジア諸国を欧米の植民地支配から解放した。独立国であるなら防衛のため、当然軍隊は持つべき。』というような、歴史学的検証に基づかない感情的でイデオロギー的な個人的な持論ばかりで、議論は平行線を辿るだけで、問題が解決することはありません。この現象も日本が国家として歴史学的に事実をしっかり検証し、評価してこなかったことが原因です。
一方、枢軸国として、日本と同じ運命をたどったドイツでは、日本と同じように戦争指導者層の責任逃れや逃亡などもありましたが、戦勝国が裁くニュールンベルグ裁判だけではなく、ドイツ国民がドイツを評価、判断するドイツ国民による裁判もありました。(アウシュビッツ裁判など)日本では戦争を検証する自国民による裁判は皆無です。ドイツでは自国民による裁判などで、国民としての総意が形成されましたので、戦後の政策はそ総意に基づき、策定されていきました。もちろん完璧ではなく、課題も多々ありましたが。
冒頭書きましたように、戦争の直接体験者が少なくなっている中で、最近では先の参議院選挙で当選した参政党のS議員が『核兵器は安上がりなので日本も核武装すべき』という驚くべき発言が登場する始末です。ヒロシマとナガサキで被爆した多くの被爆者および子孫がいまだ苦しみ続けている、唯一の被爆国の日本の国会議員からこのような発言が出るとは怒りを通り越してあきれ返りますが、彼女は戦争の実態についてあまりにも無知なのでしょう。一度ウクライナへ行って戦場を体験したらよいと思います。
彼女にも読んでもらいたい本があります。それは『沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか』 林 博史 著 集英社新書 です。

ヒロシマやナガサの悲惨な状況については、ノーベル平和賞を受賞した被団協の方々のご努力によってかなり知られるようになりましたが、日本本国で唯一戦場になった沖縄については、1972年までアメリカの統治下にあり、情報も規制されていましたので、あまり知られていません。林氏は、歴史学者の立場から文書・証言を調査・分析し、沖縄戦の実態を伝えています。