函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

ケ・セラ・セラ

2010年09月20日 12時04分02秒 | えいこう語る
83歳のS叔父が、老人施設に入居した。
奥さんはすでに入居していて、叔父は一人暮らしをしていたが、安否を気遣う子供たちに説得され、ついに入居を了承したようだ。
車の運転は得意で、今でも買い物に出かけるのに、人気のない山道は80キロ以上のスピードを出すと話していた。
若い時からお酒と犬が大好きで、朝犬小屋のそばで寝ていたなどという話は、よく聞いたことがある。
晩酌は今でもワイン半分は飲む。飲みすぎじゃないかときくと「ワインは身体にいいから」と笑っていた。
叔父の親友は、以前函館財界の大御所だったMさんだ。
二人は若かりし頃、函館湾内で手作りの水上スキーに乗り、漁船に引っ張らせたそうだ。もちろんスピードが出ないので沈んだという、そんな茶目っ気のある話も本人から聞いた。
親友のMさんといえば、自分の巨大な肖像画を有名画家に描かせ、美術館に展示したのを観たとがある。
対するS伯父といえば、奥さんから聞いた話だが、初デートの日、船長さんの制服を着てきたという。遊びすぎてお金がなく、これといった背広もなかったので、知り合いから借りてきたらしい。
古き良き時代の函館を、楽しく遊んだ友だったようだ。
また、S伯父は、私たち親族では誰もが認める恐妻家だった。
そのせいか知らないが、宴会では「奥様お手をどうぞ」のしゃれた歌を得意とした。
妻へ捧げる歌なのか、キャバレーで遊んだ時代の女給さんへのメッセージなのかは、無粋なので尋ねたことはない。
※函館の繁華街五稜郭。よく見れば味気のない街並だ。
やはり函館駅前周辺の大門が、私も含め古い函館市民にとっては、心の故郷のようなの繁華街なのだ。


S叔父の妹から、私に電話があった。
施設に尋ねていったら、元気でいたという報告だ。
施設内で友達になれそうな方を紹介してもらったという。
東北地方で医者だった方だという。ユーモアに富に、人付き合いのいい叔父には、ふさわしそうに思える。
「兄さんの冷蔵庫には、ワインがたくさん入っていた」と、叔母は笑っていた。
でも帰り際に「ケ・セラ・セラ」とおどけたそうだ。
笑顔の素敵なドリスディーが歌ったのを、日本では江利チエミやペギー葉山が歌って大ヒットした曲だ。
「♪ケ・セラ・セラ なるようになる 先のことなどわからない♪」
叔母はちょっぴり寂しい思いで、帰ってきたという。
ワンコイン・ワインが上質なワインに感じる「カリフォルニア産枝つき干しブドウ」を土産に、叔父に逢いに行こうと思う。