『VIVA ROCK』1987年3月号に、デヴィッドのインタビュー記事が載っていたのを取っておいたのが出てきたので、ここで紹介。
デヴィッドはこの前年にソロ2作目の『ゴーン・トゥ・アース』を発表し、ヨーロッパ、オーストラリア、日本へのプロモーション・ツアーも行っていた。このインタビューでは、自身の近況、新作アルバムへの自己評価、日本の印象、ジャパン時代のこと、そして、気になるミック・カーンとの関係などについて語られていた。
『ゴーン・トゥ・アース』(1986)は、2枚組の大作アルバムで、1枚目がボーカル編、2枚目がインストゥルメンタル編と大胆に分けられている。前作の『ブリリアント・ツリーズ』(1984)にはまだ残っていたロック色が薄れ、そのB面の3曲を発展させたような物憂い音楽世界とジャズっぽいアプローチが特徴的な作品である。ジャパン時代のスティーヴ・ジャンセン、リチャード・バルビエリに加え、ギターにロバート・フリップが参加しているのも大きな話題になった。
このアルバムについては、
『ゴーン・トゥ・アース』がどれだけ成功したかは、僕自身の基準で検討しなければならないことだから、今の時点では、まだ答えは出せないんだ。僕が創造者の立場を離れて、リスナーとして聴けるようになるためには、1年位は必要だろうね。だから今は、このアルバムが僕にとってどれだけの成功を収めたかは、まだ語れないんだよ。
と答えている。
日本については、日本料理が好きで、鉄板焼、天ぷら、寿司、あんこ、日本酒などが好きだと言っている。(あんこが好きというのがおもしろい。)また前年の暮れに京都を訪れたことに触れ、
京都では、いつも平穏な感覚を見つけるよ。京都は、いつも何度でも訪ねてみたい土地の1つなんだ。日本で、京都だけが、特別こういう価値を持っている土地だとは思わないけれど、僕の知っている土地の中ではそうなんだ。
と語っているのは、よく分かる気がする。
インタビュアーからの、「ミック・カーンのレコーディングを手伝っていると聞いたんだけど?」という問いには、
ミックのアルバムのために、2曲、彼と一緒に曲を書いて、ヴォーカルをやったよ。エンジョイしたな。
ミックと僕とは、学生時代からの長いつきあいだから、不仲の時があっても、それは一時的なことで、又会って仕事を一緒にするようになっても、ごく自然なことなんだ。
ミックは、とても才能ある人だと思うよ。彼のアルバムは、いつもその仕事の中で個性的な、クリエイティヴ・マインドを示しているしね。
と答えているのは、久しぶりに読んで、この頃こんなことを言っていたのか、と新鮮な驚きに感じた。
デヴィッドのインタビュー記事を読んでいて、自分の「基準」、「価値」という言葉が何度も出てくるのに気づいた。改めて彼が自分自身の価値基準で自分を律し、ジャパンのメンバーにもそれを強く求めていたこと、ジャパン時代に「ポップ・ミュージックの制限」や「スタイル、自我、イメージといった表面的な価値を基本とする妥協」をどれだけ桎梏に感じていたのかが伝わってくる気がした。一方で、
僕にとって1番大切なことは、学ぶということ。僕自身にとってだけじゃなくて、僕が世界の中で価値あると思う分野で学んで、進歩し続けることが最も大切なことなんだ。
と言い切る心の強さ、謙虚さと同時に自恃の念も伝わってきた。彼の思考や生き方と、作品世界とがこういう風につながっていたことを実感する。