夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

紅梅

2013-03-07 22:26:46 | 日記
今日の岡山県南部はよく晴れて、最高気温17℃。穏やかで春らしい一日となった。午後、暖かな日ざしに誘われ、そぞろ歩きしたくなり、倉敷の酒津(さかづ)公園へ。



酒津公園は、高梁川の改修工事に伴い、川から水を引いた用水路と配水池のほとりに整備された大きな公園である。平日の今日も多くの人々が訪れており、市民の憩いの場となっていることを感じた。桜の名所でもあり、池や用水に沿ってたくさんの桜の木が植えられている。
以前紹介した、「水辺のカフェ 三宅商店」はこの近くにあるのだが、今回はあえて素通りして、済興寺の前まで歩いて来たとき、門前に紅梅が美しく咲いているのを見つけた。



思わず近寄って眺めていると、甘く濃い香りがする。どこか官能的な香りで、源氏物語の浮舟が、出家して尼として暮らす日常の中で、紅梅の香りにふと、かつてわずかな間だけ愛し合った匂宮(におうのみや)を思い出す場面があったことを思い出す。浮舟は確か、
  袖ふれし人こそ見えね花の香(か)のそれかとにほふ春のあけぼの
という歌を詠んでいた。



白梅は清楚で気品があるように見えるのに、紅梅には優美でなまめかしい風情が感じられ、同じ梅でこんなに印象が違うのが不思議だ。

  昔には色もにほひも変はらぬをなほなつかしき梅の花かな