夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

平家物語絵巻展 Ⅱ 続き

2015-09-20 17:59:48 | 日記

この展覧会の目玉は、日本で唯一、『平家物語』の全文章を収めた林原美術館蔵『平家物語絵巻』を実見できるというだけでなく、館内でその高精細デジタル画像を見ることができる点にもある。

これは、林原美術館と関西大学との共同研究により、世界トップクラスの技術で、『平家物語絵巻』の超高精細画像を作成したもので(巻十一上のみ)、館内に置かれたパソコンの画面を指で触れるだけで、自在に画面を操作しながら絵巻の画像を鑑賞することができる。

大型のプロジェクターに映し出して絵巻の画面を眺めることも可能で、40倍ほどまで拡大することにより、従来はわからなかった細部まで鮮明に見ることができるのは感動ものである。

たまたま私が行ったときは、美術館のスタッフの方がそばに付いて、色々解説してくれたのだが、たとえば、屋島の戦いで那須与一が扇を射落とす有名な場面では、与一の矢が当たったことにより、ちぎれた扇の一部が波間に漂っているところまでが確認できるのである。

詳しく見たい微細な部分も、タッチして即座に拡大することができるし、原画で2㎝ほどの人物の頭部を40㎝ほどまでクローズアップしても、画像はクリアなままなので、研究に役立つのはもちろんだが、これを教室に持ち込んで学生たちに説明してやったら、彼らがどれだけ喜び、古典に興味を持ってくれることだろうと思った。

元来、技術というものはこのようにして活かすべきものだ。
このプロジェクトの場合は、パナソニックが技術協力してくれたらしいが、私も絵巻や歌仙絵をデジタル画像化し、授業などで利用したいと思わずにいられなかった。