夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

秋萩帖

2015-09-15 22:12:29 | 日記
ちょうど先週の今日、台風の近づく中を上野の東京国立博物館に行った。
大人気の特別展「クレオパトラとエジプトの王妃展」はあえてスルーし、本館の日本美術のみ見る。それでも、朝10時から午後3時まで、ほぼ半日がかりでの鑑賞となった。


まず、特集の「後水尾院と江戸初期のやまと絵」が非常に充実した内容で、見応えがあった。
重要文化財の後水尾院の和歌懐紙、同じく重文の二条為明筆『古今和歌集』、『伊勢物語絵巻』(絵:住吉如慶、詞:愛宕通福)、土佐光起筆『三夕図』。
『徒然草画帖』(絵:住吉具慶)は、教科書の挿絵としてよく取り上げられるものだ。

「宮廷の美術 平安~室町」では、古筆の優品として、伝源俊綱筆「新古今和歌集切」、藤原俊成筆「古今和歌集断簡」(了佐切)、伝藤原行成筆「和漢朗詠集巻上断簡」(久松切)、伝藤原佐理筆「古今和歌集巻第四巻首」(筋切)が展示されていた。眼福というも更なり。
最後のは、

  秋来ぬとめにはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる

の歌が書かれていたのが、この季節にふさわしくてよかった。(外は大雨だったけど。)

しかし、なんといっても、この日の圧巻だったのは、国宝の伝小野道風筆『秋萩帖』。この作品は、一昨年の夏にここで『和様の書』展があった時に見たが、その時は一部分の展示だったように思う。
『秋萩帖』は色の違う料紙21枚を継ぎ合わせた長い巻物で、全長8メートルあまり。それが本館2Fの特別展示室で、ほぼ全部広げた状態で展示されているのを見ることができた。草仮名の名筆はやはり優美で、博物館から帰る頃には、外はどしゃ降りになっていたが、雨の中をわざわざ見に来てよかったと思った。