夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

神戸の朝

2015-08-22 23:41:25 | 短歌
神戸に泊まった夜は、なかなか寝つけず、朝も日の出前から起きてしまい、散歩がてら旧居留地のホテルから歩いて海に行った。
阪神淡路大震災から今年で二十年にもなるが、私は当時、春三月に神戸を訪れ、三宮駅周辺の被害の凄まじさに、言葉にできないほどの衝撃を受けた。
神戸も今は復興を遂げて久しく、震災の記憶もやや薄れつつあるのかもしれないが、自然がいとも容易に人間の文明を破壊しうることへの恐怖は、あのときからずっと、私の心に刻みつけられている。

  当時見し廃墟のごとき三宮の街を思へば今は現つか
  かへりみれば今栄ゆるもうたかたの夢かと見つつ旧居留地を行く


この日は曇りで、朝から時折小雨がぱらつく生憎の天気であったが、やや湿り気を帯びた風を受け、潮の香りを感じながら、人気のない波止場で船の行き交う様子を飽きもせずに眺めていた。

  波止場には異国の船も行き来して鳴るエンジンの音響きあふ
  潮の香を吹き寄する風を受けながら行きかふ船の影を見まもる