夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

奈良大学で学会。

2012-07-15 21:23:04 | 研究
関西の例会に参加。会場の奈良大学には、八年ほど前、勤務している高校の上司のお供で、訪問したことがあったが、構内はほとんど見学していなかったと思う。単科大学だが、規模が大きく、立派な建物なのに驚いてしまった。

3本の研究発表が行われたが、お三方ともにすばらしく、質疑応答も活発で、盛況な例会だった。特にお二人目のK先生のご発表は、以前から期待していただけに、聞いている方も気合いが入った。

藤原定家の名所表現と歌歴、建保期歌壇の問題についての研究発表だったが、必死にメモをとりながら、聞き漏らしのないようについていくのが精一杯だった。40分の発表時間に、やや早口で鋭い解釈や重大な問題点の指摘が流れるように繰り出されるのは、この上ない知的興奮であった。

今日、発表資料を読み返しながら、ノートを整理し、復習して改めて発表の素晴らしさを認識した。

  ①立論にあたっての着眼点の良さ。
  ②先行研究への幅広く適切な目配り。
  ③論証の際の手続きの確かさ。
  ④一首一首の解釈が鋭く的確でゆき届いていること。
  ⑤常に今問題にしている論点が、その歌人、作品、歌壇、時代との関わりから大きく捉え直されていること。
  ⑥発表技術の高さや発表資料の工夫。

など、精力的に研究され、大舞台も何度も経験されているK先生らしいご発表で、本当に勉強になったと思う。このように、学会発表の内容を後からおさらいすると、その時には気づかなかったことを思い出したり、理解が深まったりする。やはり、復習は大切だ。

そういえば、院生時代は、学会に参加できなかった院生仲間のために、「持ち帰り学会」とか「お土産学会」と称して、後日、みんなが集まれるときに演習室に集まり、資料のコピーを配って、研究発表の内容を報告する会が行われていたなあ。特に、遠隔地で学会が開催されると、留学生などはまず行けないので、参加した人から教えてもらうということが当然のように行われていた。言うまでもなく、学会で行われているのが当該分野での研究の最前線ということになるので、みんな、関心があったのだ。


さて、例会の休憩時間、S先生に会ってお礼を言うことができた。10年以上前に私が東京の例会で発表したとき、司会をして下さったのがS先生だったのだ。あのときは発表を失敗して炎上しただけに、S先生にも申し訳ないとずっと思っていたのだ。今回、そのテーマで研究し直したものが学会誌に掲載されたので、「今頃お礼を言うのも変なのですが、ありがとうございました。少しご恩返しができたかなと…。」ということを伝えると、「よかったですね」と言っていただいた。

短い時間だったが、大きな収穫をたくさん得た学会だった。