LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

IN PARIS (8)

2007-02-25 | ENCOUNTER
2月2日金曜日。

このたび大変お世話になったD様はじめ劇場スタッフの方々へのお礼に
私たちはシャンゼリゼ通りの菓子店で買ったマロングラッセを開演前に届けました。

そしてD様といつものようにロビーでお会いして、
今日も花束を届けに行く旨の了解を得た直後でした。

D様から私たちに
「あなたがたは明日が最後ですか?」と尋ねられました。
私たちが
「はい。残念ながらそうなのです。」
と答えたところ、
「じゃあ、明日お芝居が終わったらまたドロンさんに会いますか?」
とD様の方から仰って下さいました。

もちろん私たちは
「はい!ぜひお願いします。」
と答え、D様も
「オッケー。では明日お芝居が終わったらロビーで集合して下さい。」
と言われました。

初日に楽屋までお招きくださっただけでなく、
さらに最後の日にもう一度ドロンさんにお会いできるなどとは、
私たちは夢にも予想していませんでした。



2月3日土曜日。

今日は土曜日ということで、
お芝居は夕方4時半からの部と夜の8時半から部の計2回公演となります。

午後8時半からの部は既にソールドアウトになっており、
私たちは午後4時半からの公演の予約を取っていました。

3日目、4日目の席はいずれも2階席でしたが、
劇場全体がこじんまりとしているためか、
舞台から遠い印象は全くなく、
むしろ俳優さんたちの動きが立体的に観れるため、
1階席とはまた違った楽しみ方ができました。

そして4回目となる花束贈呈を終えた私たちは、
いよいよD様の誘導により2階へと向かいます。

今日のドロンさんは楽屋ではなく廊下で私たちを出迎えて下さいました。

初日の楽屋で私たちの前に現れたドロンさんは、
とても元気で余裕たっぷりだったのですが、
さすがに毎日舞台に立ち続け、しかもまだ2回目の公演をこの後に控えているとあって
今日のドロンさんはかなりくたびれたご様子で、
低いトーンの声で「フ~!」と言いながら、
映画で時折見せる「千鳥足」の歩き方で私たちの前に現れました。

そんな疲労困憊の状態でも私たちが今日が最後ということで、
わざわざ別れの挨拶にと出迎えてくださったドロンさん。
今回は女性陣一人ひとりに例の3点セットだけでなく、
もう1点(ご想像にお任せします。)のプレゼントをされていました。

そして私とはいつも通り力強い握手(本当に力が強いのです。)を交わし、
「あなたたちはいつ日本に帰るの?」
と尋ねます。私たちが
「明日の飛行機で発ちます。」
と答えると、
「明日なの?それじゃあもう1回今晩の公演が観れるんじゃない?」
と笑って答えてくださいます。
それに対して私がまじめに
「いえ、残念ながらチケットの予約が取れなくて・・・」
と言いかけますと、ドロンさんはそれを遮って、
「わかってる、わかってる、冗談だよ(笑)」
と言います。

私は目の前にいるへとへとのドロンさんに対して、
失礼ながらお年寄りの方をいたわるように、彼の腕の後ろから背中に手を回して、
「お疲れのご様子ですね?」と言いました。
それに対してドロンさんは笑顔で頷いてくださいます。

そのときドロンさんの背中に回した自分の右手の感触に驚きました。
ちょうど彼の左の肩甲骨の下の辺りに触れたのですが、
とてもがっしりとしていて、しかも外側に出っぱっているのです。
71歳になっても連日の舞台公演をこなす
あの超人的な体力の一端をこのとき窺い知ることが出来たように思います。

さていよいよお別れのときが来ました。
ドロンさんは初日の時と同じように一人ひとり丁寧に挨拶をして下さいます。

私は初日以来ドロンさんにいろいろとお世話になったことに対するお礼状を
午前中にホテルで書いて用意しておりましたので、それを胸ポケットから取り出して、
「このたびはいろいろとありがとうございました。
ここに私の感謝の気持ちを書き記しましたのでどうぞお受取り下さい。」
と言いました。
その間ドロンさんはまるで息子を見るように(実際ドロンさんは私の父と同い年です。)
身長170センチの私の視線の高さまでお顔を下げて、
下手な英語を緊張して詰まりながらしゃべっている私の顔を
じっと微笑みながら覗き込んで下さっていました。
そして私が話し終えると、にっこりともう一度微笑んでその手紙を受け取ってくださり、
よく映画で見せるように右目でゆっくりと大きくウィンクをして下さいました。


マリニーの外はいつもより時間が早い為か、まだ薄暗く、
次の公演のお客様が来るまでの間しばし安らぎの空間となります。
(添付の画像はそのとき撮影したものです。)

一生忘れることのない素晴らしい思い出をそれぞれが胸に秘め
私たちはここシアター・マリニーを後にしました。
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