LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

IN PARIS (6)

2007-02-20 | ENCOUNTER
劇的なドロンさんとの対面を果たすことが出来た私たちは、
その興奮冷めやらぬままシアター・マリニーの裏口から外に出ました。

1月31日も午後11時近くなり、私たちは近くで夕食を取る事にし、
そのままマリニーのすぐそばにあるレストランに入りました。

ここは3年前におばさん2号様たちがドロンさんと会食をした思い出のお店ということで、
お店の女性店長さんは何とおばさん2号様の顔を覚えていらっしゃいました。
その店長の誘導で隅の席に3人づつ向かい合わせで座った私たちは、
当時ドロンさんが食したというメニューを注文して、
食事を待ちます。

しばらくしてお料理が私たちの席に運ばれ、食べ始めた頃でした。

背後から“オオッー!”という大きな声で
薄紫のマフラーを首に巻いて、四角いサングラスを掛けたドロンさんが
他のフランス人のお客様たちには全く脇目も振らず、
私たちの座っている座席に近づいてこられたのです。

ちょうどボディーガードのD様を伴ってドロンさんもこのお店に食事に来られたのでした。

ドロンさんは手前に座っている女性陣には一人づつ肩に手を掛けて背後から挨拶し、
奥に座っている私含めた3人には右手を上げて、これまた一人づつ挨拶をして下さいます。
サングラスを掛けたままですが、にこやかに、
ジャック・ニコルソン似のスマイルが見事に決まっています。

そして近づいてきた女性の店員さんの頬にキスをしたドロンさんは
彼女の誘導で店の奥の席に向かいます。
ドロンさんの座った席の周りは他のお客様からは見れないよう、
席に着くとカーテンで仕切られました。

もしかしたらまたドロンさんがお店に来られるのではないかと
私たちが期待していたことは事実ですが、
よもや私たちの席に向かってわざわざドロンさんの方から近づいてきて下さるなどとは、
全く予想していなかったことですので、
またもや感謝感激の私たちでした。


しばらくして私はトイレに行く為に席を立ちました。
このお店のトイレは1階ではなく2階のフロアにあり、
そこに行くには店の奥にある螺旋階段を上っていかなければいけません。
私は店員さんの指示に従って、奥の階段の下まで行ったところ、
ちょうどその場所はドロンさんの座っている席の真向かいで、
ドロンさんの正面から約3メートルぐらいの距離に相対することになります。

奥の席でD様と何やらお話し中のドロンさんは、正面に私の姿を見つけると、
何と先ほどと同じような満面の笑みを浮かべて手を振って下さいました。
またまた感激の私はそのまま2階のトイレへ。

さて用をすませた私は(お食事中の方?はすみません。)
再び階段を下りて席に着かねばなりません。

私は悩みました。
このまま階段を下りて、またドロンさんの目の前を通るとき、
今一度ドロンさんに挨拶をすべきなのかどうか、と。
常識で考えたらそうすべきなのでしょうが、
きっとドロンさんはまた私に気を遣って挨拶をして下さることでしょう。
それはとても申し訳ないことです。

2階の廊下からたまたま1階の席にいるドロンさんが見えました。
私には当然気づいていないドロンさんは、
全くの無防備で美味しそうにお食事(パスタのようなもの)を
お口に運んでいらっしゃいます。

私は決めました。
このままお食事中のドロンさんのお邪魔をしないよう、
ドロンさんに余計な気遣いをさせぬよう、
すばやくドロンさんの目の前を立ち去ろうと。

とりあえず足早に階段を下りて、
黙礼だけして、下を向いたまま席に戻りかけた私は驚きました。
歩いていく私の姿をずっと目で追って下さっているドロンさんの姿が
私の左目の視界に映っているではありませんか!

ああ何ということでしょうか。
やはり私はそのときお食事中のドロンさんに気づかれてしまいました。

ドロンさんのお邪魔をしてしまったという申し訳なさと、
私に気付いて下さっているドロンさんに挨拶を怠った自分が悔しくてなりません。
しかし途中からドロンさんに顔を向けて挨拶するのは私自身の最初の意図に反します。
ですので私は自分の非礼を心の中で詫びながらそのまま席に着きました。

ドロンさんはいったいどう思っただろうかと、
残りの食事を取りながら頭の中はそのことでいっぱいになりました。
一人で悩んでいても仕方ないので、
この一連のやりとりを向かいの席のおばさん2号様にお話したところ、
こう仰ってくださいました。
「ドロンさんは全部わかってくれている。あの人はそういう人や。心配せんでもいい。」

この一言で全てが救われました。

しばらくしてドロンさんとD様はお食事を終えて、お店の外に足早に去っていかれました。
ドロンさんたちの後姿を見ながら私は感じました。
今度はドロンさんの方が、まだ食事をしている私たちの邪魔をしないよう
黙って立ち去ってくれたのだと。


こうやって1月31日の長い夜は終わりを告げました。
しかし私たちのドロンさんとの遭遇がまだあろうとは
このときは全く予想もしていませんでした。
Comments (15)
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