陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

急な円高と日経平均株価の動き

2009-12-02 05:21:12 | 財政・経済問題
 オバマ大統領が帰米した途端にドルの価格は低落、現在は1ドル=86円である。ドルは円のみならず、他の通貨に対しても値を下げた。11月27日午前には、ドバイ・ショックもあって、1ドル=84.82円まで円は上昇、このため日経平均も300円を越す暴落を記録した。その後、株価は戻したが、ドル価格は更に下がるのだろうか。

 大企業の09年度下期想定レートは、1ドル=94円である。それより8円も円高になれば、輸出金額の大きい自動車産業とエレクトロニクス関連産業の収益にたちまち影響するし、輸出自体が難しくなる。円高が株価に反映するのは当然だ。

 ロイター記事に掲載された金融筋の意見は、

ドル一時84円台に、株価は大幅続落:識者こうみる
2009年 11月 27日 11:44 JST

[東京 27日 ロイター] 27日の東京外国為替市場では、ドル/円が一時84.82円まで下落し、14年ぶり安値を更新した。一方、東京株式市場で日経平均は大幅続落。円急騰やドバイ政府系企業の債務モラトリアムの影響への警戒感から、関連業種を中心に売られた。

 外為市場や株式市場に関する識者の見方は以下の通り。

●藤井財務相発言がドル買い戻し支援、現段階で協調介入ない

<ソシエテジェネラル銀行 外国為替本部長 斎藤裕司氏>

 ドル/円は85円を割り込んでさらに下落するとの見方が出ていたが、案外ドル売りが走らなかったことでいったんは落ち着いたようだ。藤井財務相発言などを手掛かりにドルの買い戻しになっている。財務相は、為替相場の急激な変動に対応するための欧米当局との協議に関して「臨機応変に対応する」と語ったが、ドバイの政府系企業の債務問題が浮上したことで為替問題でも国際協調をしやすい環境にはなっている。

 ただ、ドバイ問題が出ても(影響を受けやすいといわれる)ユーロの水準はまだ高く、反応もそれほど大きくない。また、ドバイ問題の展開もまだ不透明で、ここを見極めないと次のアクションにはつながらないだろう。現段階では協調介入はないとみている。

●ドバイ問題の影響は限定的、目先9000―9400円のレンジ

<野村証券プロダクト・マーケティング部マーケット情報課長 佐藤雅彦氏>

 ドバイ問題は一過性だとみている。ドバイがバブルだったことは広く知られていたことで目新しいことではない。新興国は中国やブラジルがけん引しており、影響は限定的だろう。足元円高が進んでいるが、(短期的な)投機とみられ、すぐに巻き戻されると予想する。だからといって、日経平均は足元のレベルから反発する感じではない。一段の円高警戒感やデフレ懸念、増資問題、鳩山由紀夫首相の献金問題など不安材料は他に多くある。向こう2―3週間は9000円―9400円のレンジ、年末にかけては9800円近くまで戻すとみている。

●為替の極端な動きが日本株のアク抜けに=大和証 多田羅氏

<大和証券投資情報部長 多田羅信氏>

 ドバイ政府系企業の債務返済問題が世界的な株高で忘れていた金融リスクを思い起こさせた。ドバイ単独の問題ではなく、世界的な資産価格の上昇がストップするようなことになれば、影響も長引くだろう。しかし、これにより過剰流動性が維持される確度は高まった。きょうに関しては円の独歩高が嫌気されているが、ファンダメンタルズからみて円が一方的に買われる理由は乏しい。リスク回避の動きが強まれば、ドル・キャリー取引の巻き戻しからドルが買われる可能性もある。為替市場の極端な動きは、日本株のアク抜けにつながるとみている。

●日経平均の下値めどは7月安値の9050円

<みずほ証券投資情報部 マーケットアナリスト 高橋幸男氏>

 円急騰やドバイ政府系企業の債務返済問題などを受けて、日経平均は下値支持線と目されてきた200日移動平均線を大きく割り込んだ。次は7月安値の9050円程度が下値めどとして意識されるだろうが、為替次第では9000円割れもあり得る。きょうはこれから始まる上海や香港などアジア株動向によって下げ渋るか、地合いがさらに軟化するかが決まるのではないか。

 ドル/円為替が1ドル84円台に一気に突入したのは、市場が当局の介入を探ってドル売りを加速したという印象だ。一方、ドバイの問題で中東での金融不安が台頭すれば、リスク回避から資源国や新興国市場からのマネー流出を通じたドル・キャリーの巻き戻しが起きて、ドル安が修正される可能性がある。

●ドバイ問題でリスクマネー巻き戻し、日経9000円試す展開か

<三菱UFJ投信 戦略運用部副部長 宮崎 高志氏>

 ドバイ・ワールドの問題でリスクマネーがいったん巻き戻される可能性がある。マネー収縮がそれほど長続きするとは思われないが、新興国市場などに流れていた資金が引き揚げられ、ドルや円などの安全資産に回帰することになりそうだ。ドル、円ともに買われるため、どの水準にドル/円が落ち着くかを見通すのは難しいが、ファンダメンタルズからみれば、円高はやや行き過ぎだろう。 ただ、けさ発表された10月CPIで示されたように日本はデフレが続いており、実質金利の上昇を通じて対ドルでの円高が進んでいる。景気や株式には大きな重しだ。日経平均.N225はいったん9000円を試すことになろう。 ドバイ問題を消化すれば、リスクマネーが再び動き出し、いずれファンダメンタルズからみて売られ過ぎの日本株は出遅れを修正するとみているが、そのきっかけは現時点ではまだみえない。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12660520091127?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0&sp=true


 12月1日の時点で、日経平均は9572円にまで回復した。更に、日銀は10兆円の資金供給をすると発表、かなり危機感を持ったようである。

日銀、国債を担保に新たな資金供給策
2009.12.1 21:18

 日銀は1日、臨時の金融政策決定会合を開き、10兆円規模の新たな資金供給手段を急遽(きゅうきょ)導入することを決めた。金融市場に国債などを担保に期間3カ月の資金を年0.1%の固定金利で供給する。これまでの低金利政策に加え、追加の金融緩和に踏み込むことで急激な円高やデフレの克服に向け、政府と歩調を合わせる姿勢を鮮明にした。

 新たな資金供給手段は、金融機関同士が資金をやりとりする際の政策金利である無担保コール翌日物金利と同じ0.1%の固定金利で、国債や社債、地方債などすべての適格担保を対象に3カ月の期間で資金を供給する。金融機関に対し、企業への資金貸し出しをやりやすくすることで、景気下支えの効果を狙う。

 白川方明総裁は会合後の記者会見で「現在の金融緩和を一段と浸透させる。金融機関の行動が制約され、流動性が不足しないように量を供給していく。広い意味での量的緩和だ」と述べた。

 政府はデフレや円高対策を盛り込んだ第2次補正予算案の成立を急いでおり、今後、赤字国債の増発につながれば、長期金利が上昇する恐れがある。これを支えるため政府には追加的な金融緩和策を求める声があり、日銀は国債を担保にした資金供給の拡大で、こうした政府の要望に応えられると判断したもようだ。

 今回、日銀は今年3月に月1.8兆円に増額した長期国債買い入れの増額については踏み込まなかった。ただ、資金供給の担保をこれまでの社債などから国債にまで広げたことで、国債の増発が必要な政府の経済対策を下支えする格好だ。白川総裁は会見で「政府の取り組みとあいまって、経済回復をしっかり支援していく」と述べた。

 会合では、政策金利を引き続き0.1%前後で据え置く方針も決めた。
 鳩山由紀夫首相と白川総裁は2日、首相官邸で会談する。急激な円高やデフレ対策について意見交換する見通しだ。

 鳩山首相は1日夕、日銀が発表した追加の金融緩和策について「政府と日銀が認識を共有できたということは大変喜ばしい」と記者団に語った。

            ◇

日銀と国債買い入れ

 日銀による長期国債の買い入れは、国の借金である国債の発行に歯止めがきかなくなり、通貨価値の低下につながる恐れがある。このため、日銀は長期国債の保有残高を日本銀行券の発行残高以下に抑える「銀行券ルール」を持つ。

 日銀は今回、金融機関に資金を供給する際の担保として、国債も認めた。金融機関は使える資金が増えるほか、金利の低下を促す側面もある。また、金融機関が3カ月ごとに借り換えを続ければ、日銀による国債の買い入れに近い効果も予想される。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091201/fnc0912011614027-n1.htm


 この円高傾向を受けて、政府は10兆円強の第二次補正予算を新たに組み、内需を喚起する構えだ。首相の脱税や違法献金問題が露呈した状況の中で、果たして鳩山内閣に早急な実行案策定が出来るかどうか、注目したい。面白いことに、社民党までが財政出動に積極的である。同じく産経webによると

追加経済対策を大幅上積み 財政出動4兆円、事業規模10兆円超が有力2009.12.1 23:22

 政府は1日、追加経済対策の裏付けとなる平成21年度第2次補正予算案の財政規模について、当初想定していた2兆7千億円から大幅に上積みする方針を固めた。政府・与党内では国が直接負担する財政出動は4兆円近く、融資枠などを含めた事業規模ベースで10兆円超まで膨らませる案が有力だが、財政出動だけで8兆~9兆円程度を確保するべきとの声もあり、上積みの規模を詰めている。また、政府は追加経済対策の基本方針を閣議了解し、円高やデフレへの対応や規制改革に積極的に取り組むことを確認した。

 追加経済対策を検討する政府の「経済対策検討チーム」は同日会合を開き、野田佳彦財務副大臣は「メニューの項目はだいたいまとまった」と語った。詳細を詰め、週内に発表する。

 政府は第2次補正予算案の財政出動の規模を当初想定の2兆7千億円から小幅に積み増す方針だったが、大幅な増額を求める社民党や国民新党の主張にも配慮した。一方、赤字国債の一段の増発を避けるため、財源には「埋蔵金」といわれる特別会計の剰余金などを活用していく方向だ。

 具体策としては、中小企業の資金繰り支援策として1兆円を予算計上し、信用保証と低利融資を合わせた資金枠を10兆円拡大する。温暖化対策は9千億円規模を財政出動。電気自動車の充電施設整備を盛り込み、断熱材などを活用した住宅改修工事にポイントを付与する「住宅版エコポイント制度」を創設する。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091201/fnc0912012325039-n1.htm


 以前から当ブログで述べているように、地方自治体に電線地中化を働きかけて、これを強力に推進、費用は全て政府負担とすれば、弱小建設業者にも仕事が回るので、かなりの経済効果が生まれるのだが、経済対策検討チームは気付かないのだろうか?

 日本の景気が良くて、円が買われているとはとても思えない。今回の急激な円高は、何か作為的な感じがする。沖縄基地問題で進展が無い事にうんざりしたオバマ政権の仕掛けとも取れないことも無い。だが、オバマ大統領は来日時にもコメントしていたように、ドル安に誘導して米国産品の国際競争力を高める考えを以前から持っていた。過大な負債を抱え、失業率が10%を越えた現在、米国はなり振り構わぬ手段を取りつつあるように見える。

 話題は変わるが、オバマ政権登場前後に、webで噂(うわさ)になった「アメロ」(amero)通貨の導入が気になる。これは、米国・カナダ・メキシコの3国が中心となって北米経済圏を構成し、その圏内で用いられる共通通貨だ。現在の北米自由貿易協定(NAFTA;1994年発効)を更に充実させて、EU経済圏に対抗しようとの構想である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E7%B1%B3%E9%80%9A%E8%B2%A8%E9%80%A3%E5%90%88

 メキシコ・ペソはドルに比べると桁違いだが、カナダ・ドルは米国ドルの価格が低下したため、凡そ等しくなった。だからNAFTA圏内で1ドル=1アメロとしても、混乱は軽減されるだろう。

 怖いのは、北米経済圏外で流通しているドルに関して、アメロとの交換比率を恣意的に変えられることだ。外国が保有するドルや米国債に関して、2ドル=1アメロと設定されれば、シナ・中共の保有する2兆ドル相当、日本の保有する1兆ドルの米国債価値は半減する。逆に、米国の債務は激減するわけだ。

 そんなことになれば、シナ・中共は黙っていないから、米国へ経済戦争を仕掛けるだろう。だから、シナ・中共へは何か特別な代替措置を米国は考えるに違いない。オバマ大統領が主要閣僚を引き連れて、3日間も北京に滞在したのはそのためか?酷い目に遭うのは、日本、ロシア、EU諸国と言う事になる。

 来年1月、オバマ大統領の就任1周年記念に、「アメロ」導入の発表があるかも知れぬ。ダウ平均は1万ドルを超えているけれども、実質的な米国経済はかなり困難な状況にある。それを打開し、アメロを新たな基軸通貨に据える狙いはあると思う。
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