陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

消費税増税は当面延期すべきである

2013-09-29 06:38:08 | 財政・経済問題
 新聞やTVは、『安倍首相が10月1日に消費税増税を決断する意向』と盛んに報じている。果たして、本当にそうなるのであろうか。

 私は、この増税に反対である。その理由は、

(1)今年のGDP成長率は、年率換算3-4%(速報値)で回復基調にあると報道されている。しかし、GDPデフレーターの前年度差は今もマイナス値を示し、依然としてデフレ状態が続いている。

(2)デフレ状態で消費税増税をすれば、橋本龍太郎政権時代の消費税2%増税が招いた結果と同じになり、消費税税収は増えても、全体の税収は逆に減少し、上昇しかけているGDPも減少に転じる。アベノミクスは、間違いなく破綻する。

(3)国債発行額が1000兆円に達し、日本の借金はGDPの約2倍になったとマスコミは騒ぐ。これは、はっきり言って間違いだ。国債の95%は、政府が国民から借りている資金であって、僅か5%が外国からの借金である。日本全体として見れば、逆に外国に対し530兆円の債権(世界最大)を持ち、正味の政府債務は約470兆円になる。マスコミは、複式簿記を学んで欲しい。それ故、国債発行額が1000兆円ということは、消費税増税の理由として根拠薄弱だ。

(4)消費増税を行う一方で企業減税をすれば、国民の政府に対する不信感が増大する。企業減税はやるべきだが、その原資は財政規律の厳正化で生み出して欲しい。

(5)消費税増税の前に、納税者番号制度及びインボイス制度を導入して、脱税を防止すべきである。それを実施すれば、3%の消費税増額(7.5兆円)よりも税収は増えるであろう。


 計量経済学の権威、宍戸駿太郎筑波大学名誉教授は、消費税増税のシナリオは内閣府(経済官僚)の間違った経済シミュレーション・モデル選択から生まれていると厳しく批判している。


http://www.youtube.com/watch?v=aby8vaXWAZY



 一方、産経新聞編集委員の田村秀男氏による財務官僚への批判は鋭い。

アベノミクス効果を無視する官僚
2013.8.25 10:36

 ■消費増税に向け3大詐術弄す

 安倍晋三首相が消費税率の引き上げについて問うべき相手は、外部ではなく政府内部にいる。虚報を流し続ける官僚たちである。デマとは、「消費税率10%でも財政再建できない」「増税で税収が増え、デフレにならない」「増税しないと国債が暴落する」という3点に尽きる。

 最新例は8日に内閣府がまとめた「中長期の経済財政に関する試算」である。単なる「試みの計算」書ではない。1年前に国会で成立した消費税増税法案通りの税率引き上げはもとより、一層の増税を誘導するたくらみがある。2013年度以降、23年度までの税収を試算したが、今後の経済成長率平均が名目3%、実質2%であっても、国・地方の基礎的財政収支(税収・税外収入と国債費を除く歳出の収支)は20年度でも国内総生産(GDP)比で2%の赤字で黒字化を達成できない、という。が、詐術である。

 鍵は基点となる13年度の一般会計税収にある。「試算」では43・1兆円と、何と12年度の実績である43・9兆円より減る。現実には景気の好転で、税収は法人税収を中心に大きく伸び続けている。ところが、首相の膝元の内閣府がアベノミクス効果を完全無視し、財務官僚が決めた税収見込みに従った。試算の「ウソ」は筆者が8日の時点で安倍首相周辺の専門家たちに指摘したところ、「気付かなかった。まさか、そこまでやるとは」とあきれていた。

 税収は名目経済成長率の2・5ないし3倍くらいの速度で増える、というのが民間シンクタンクの間では常識である。増税しなくてもこのまま名目成長率3%を維持すれば、消費税増税込みの内閣府試算とほぼ同水準の税収が増税なしで実現する。ところが、日経新聞などは「試算」を鵜呑(うの)みにして消費税率を10%以上に引き上げなければならないと、報じる。

 グラフは1997年度の消費税増税後の政府一般会計の消費税収と消費税を除く税収が97年度に比べてどうなったか、その増減の推移を追っている。97年度以降、毎年度4兆円の消費税収が増えてきたが、所得税収や法人税収などは逆に大きく減る。98年度以来12年度までの15年間のうち2年はプラスになったが、プラス幅は極小で、いわば0勝13敗2引き分けである。

 吉川洋東大教授などは、97年度増税は15年デフレや税収減とは無関係で、97年秋のアジア通貨危機や山一証券など大手金融機関の経営破綻が主因だとしているが、当時の経済データをきちんと検証してほしい。アジア危機や山一破綻の前の97年前半、つまり消費税増税直後から企業在庫が急増し、続いて生産・出荷指数が下落し、翌年からデフレ不況に陥った。もちろん、外部要因は無視できない。今回も消費税率をアップしてデフレ圧力を呼び込んだ揚げ句、中国の不動産・金融バブル崩壊の直撃を受けると、97年の二の舞いになるだろう。

 3つ目の詐術は執拗な「日本国債暴落」説である。財務省は「国の借金」残高が6月末時点で国民1人当たり792万円の借金を背負っていることになる、と債権者のはずの国民を債務者にすり替えた。日米比較すれば、それが詐術だとすぐわかる。

 まず、政府債務だが、現代の市場経済制度では、資産と債務を対照して信用度を計るのが常識である。つまり、経済主体には債務があれば、資産があり、債務から資産を差し引いた純債務を目安にすべきだ。そこで、両国政府の純債務をみると、11年度末で日本は473兆円、GDP比97%、米国は14兆8千億ドルで同95%である。日米の債務水準はほぼ同じで、日本が突出して高いわけではない。

 日本国債の90%以上は日本国民の貯蓄で賄われているうえに、「異次元緩和」の日銀が買い増しするゆとりが十分ある。米国の場合、国債の3分の1は外国勢に依存しており、投げ売られるリスクは日本よりはるかに高い。米連邦準備制度理事会(FRB)による国債買い入れも限度に来ている。外国の投資家はそれをよく知っており、米国債よりも日本国債をはるかに安全な資産として買い続けるので円高だ。日本がデフレを進行させる増税に踏み切れば、カネは国内では国債以外に回らずに米国に流れて、米国債市場安定に貢献するだろうが、税収は減り続け、増税→デフレ→財政悪化の悪循環から抜け出られなくなる。それこそが、日本の国と若者の将来をなくし、究極的には日本売りを呼び込むだろう。

 安倍首相はもはやわかっておられるだろうが、官僚の詐術を排したうえで消費税増税実施の是非を最終決定してほしい。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130825/fnc13082510400000-n1.htm

 麻生財務相は、既に財務官僚に取り込まれているから消費増税に動くだろう。安倍首相は、閣僚達の意向に反して消費増税延期に踏み込めるかどうかかなり疑問である。

 予定通り来年4月から消費税3%増税に踏み切り、次に消費税10%とすれば、アベノミクス構想は画餅と化し、政権支持率は低下する。そして憲法改正論議は停滞を招いて、米国による日本の属国支配は継続されるだろう。
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