陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

駒澤大学が金融投資に失敗、損失154億円を出す

2008-11-19 18:20:21 | 教育と研究
 今日は平地に初雪が降った。既に冬用タイヤに交換しておいたのだが、どのガソリンスタンドでも駆け込み交換で忙しそうだ。-36℃のシベリア寒気団が急に南下したらしい。愈々長い冬の始まりである。

 独立法人国立大学は、国家から運営資金の大半を得ている。だが、それは徐々に減らされる方向にあり、教育と研究を充実させる資金確保のため様々な工夫を行っている。その一つは、特許を始めとする工業所有権の利用であり、教師の研究成果を民間や地方公共団体と組んで企業展開することで利益を得ようと試みている。

 文部科学省の監督が緩い私立大学は、もっと積極的に金融投資に手を出している。米国でもそれは同様だが、2007年8月に米国ハーバード大学では基金の一部運営を委託していたヘッジファンド、ソーウッド・キャピタル・マネジメントが債券投資に大失敗し、同大は3億5000万ドル(約340億円)を失った。この時の予想利回りは年率15.2%であったらしい。

 それで我が国の話題に戻ると、曹洞宗を背景とする駒澤大学がデリバティブ取引に失敗し、110億円の損失を出したとJ-CASTニュースが伝えた。

駒澤大が金融先物取引に失敗 110億円の損失を出す?
2008/11/13

駒澤大学が金融先物取引に失敗し110億円の損失を出した。そんな情報がインターネット上に流れている。この損失を埋めるために銀行から大学の土地・建物を担保に借り入れをしたのだというのだ。駒澤大学は「この件には一切答えられない」としている。資産運用による財務基盤強化を進めている私立大学はかなりの数にのぼり、金融商品による損失が膨らんでいるところもある、と噂されている。

損失は大学の土地・建物を担保に借金?

駒澤大学の金融先物取引の失敗を明かしたのは、千葉県にある迎福寺の住職・千代川宗圓さん。自身の「曹洞宗にもの申す」というブログで2008年11月10日付けから詳しい情報を流している。

10日には「駒澤大学が投資に失敗して莫大な損失」「金融先物取引で80~120億円を失う」。翌日付けには、「今日(11月11日)午前中、駒澤大学で部長会が開かれ、その席上、金融先物取引の失敗により、『負債は110億円』と正式な報告があった」とし、既に08年10月末に大学の土地・建物を担保に、みずほ銀行から110億円を借金。金融先物取引の損失を穴埋めした、と書いている。

08年11月12日付けでは、08年9月の時点ですでに今回の資金運用が失敗することがわかり、大学の常任理事と経理部長が定年を前に、辞表を提出していた、とも明かしている。千代川住職は、宗門の関係者と駒沢大学の関係者から08年11月9日に情報を得て、その後大学の理事、職員などにもあたったのだという。

千代川住職はJ-CASTニュースの取材に対し、
「損失を出したのは外為の先物スワップで、ユーロとドル建てで運用していた」
と指摘する。これからも知り得たことはブログに全て書いていくのだそうだ。

J-CASTニュースは駒澤大学に対し、(1)110億円の損失を出した事実はあるか(2)先物取引を行った経緯は(3)大学の土地・建物を担保にみずほ銀行から110億円の融資を受けたのは事実か(4)経理部長と事務局長が辞表を提出したのは事実か。もし事実なら両者に退職金は支払われるのか、という内容の質問書を出した。

「安全確実なもので運用を」と文科省

しかし大学側からは、

「標記の件については、お答えいたしかねます」

という回答が送られてきただけだった。

「金融ビジネス」(東洋経済新報社:08年秋)によると、私立大学の資産運用は銀行預金中心から債券、仕組み債(債券とデリバティブをセットにした商品)などの運用へとシフトしてきた。少子化による学生の数減少で起こる経営難を資産運用で乗り越えようとしているわけだ。しかし、同誌に書かれている大学の資産運用の実態は、
「(資産運用の担当者は)せいぜい1人か2人いる程度で、組織としての運用になっていない。特に仕組債は、中身を本当に把握して買っているか疑問だ」(高須賀伸成21世紀大学経営協会事務局長)
なのだそうだ。

リスクのある金融商品に手を出した大学の中には失敗して、大打撃を受けたところもあるようだ。それでも高リターンの魅力には勝てず、危ない資産運用を続けている私立大学もあるという。リスクコントロールが難しく、失敗すれば「倒産」になりかねない。文部科学省はJ-CASTニュースの取材に対し、
「安全確実なもので適切に運用するように大学に対して言っている」
と話している。
http://www.j-cast.com/2008/11/13030307.html

と言うわけで、駒澤大学は1週間前沈黙を守った。そして、今日になり損失が約154億円である事を明らかにした。

駒沢大が154億円損失 金融危機で資産運用に失敗
2008.11.19 12:38

 駒沢大(東京都世田谷区)が資産運用を目的としたデリバティブ(金融派生商品)取引に失敗し、約154億円の損失を出していたことが19日、わかった。穴埋めのため大学キャンパスの土地や建物を担保に、銀行から110億円の融資を受ける。同大は17日に調査委員会を設置、文部科学省は詳細な報告を求めている。

 駒大と文科省によると、昨年度、外資系金融機関と「金利スワップ」「通貨スワップ」の取引を計約100億円で契約した。しかし、金融危機で円高が急速に進んだ今夏以降に含み損が膨らみ、証券会社が追加の担保を求めてきたため、10月末に取引を解約。損失額は約154億円に上ったという。

 駒大はキャンパスの土地などを担保にみずほ銀行から110億円の融資を受けるとともに、今月12日に文科省に事態を報告した。調査委員会では弁護士や公認会計士ら外部の専門家を入れ、事実関係に加えて関係者の責任問題や再発防止策を検討する。

 駒大は「学生や保護者に多大な不安を与えたことは申し訳ない。教育活動に支障をきたさないよう手当てを行いたい」とコメントしている。
http://sankei.jp.msn.com/life/education/081119/edc0811191240008-n1.htm

 大凡、j-castニュースの伝えたとおりである。昨年度末での同大の資産総額は約940億円。内訳は、土地建物などの基本財産が580億円、 現金預金は127億円との事(朝日新聞)。文部科学省から、毎年15-20億円の運営補助金を得ていると思うが、責任を問われて来年度は補助金をカットされるかも知れない。

 当然、駒澤大学理事会理事長、学長の進退問題に及ぶだろうし、教職員の減給は必至と思われる。卒業生へは、「奉加帳」が回されるはずだ。私は、教育機関が金融投資に手を出すのを止めるべきとの意見で、投資をするなら重点的に学内応用研究へ配分した方が良いと考える。
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