陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

カール・ブッセの詩 <山のあなた>

2011-02-28 13:54:33 | 読書・映画・音楽
 晴れた日に、西側2階ベランダから眺める斜平(なでら)山、くっきりとしたその姿、そして稜線を見ていると、何とはなく高校生の頃愛吟したドイツ詩、<山のあなた>を思い出す。






 この山の直ぐ裏側に、美人湯で知られた小野川温泉がある。その湯に浸かってのんびりしていると、得も言われぬ「幸」を感じることがある(笑)。


<山のあなた>
   カール・ブッセ 作
   上田 敏 訳  《海潮音》 (明治38年)所収


山のあなたの空遠く

「幸(さひはひ)」住むと人のいふ。

噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて、

涙さしぐみ、かへりきぬ。

山のあなたになほ遠く

「幸(さひはひ)」住むと人のいふ。



Uber den Bergen
        Karl Busse

Uber den Bergen weit zu wandern      

Sagen die Leute, wohnt das Gluck.      

Ach, und ich ging im Schwarme der andern, 

kam mit verweinten Augen zuruck.

Uber den Bergen weit weit druben,

Sagen die Leute, wohnt das Gluck.


[注]Uber, Gluck, zuruck, druben はウムラウトを 含む。


 カール・ブッセはロマン派の詩人らしいが、私の知っているインテリのドイツ人たちは、誰もこの詩人と詩を知らなかった。ワイマールのホテルでお喋りした若い女性マネージャーもこの詩を全く知らなかったが、あまりドイツ語を話せない私が"Uber den Bergen"を暗誦するので驚いていた。

 ドイツ文学の泰斗、畏友のKHも「カール・ブッセは、文学史に殆ど出て来ないよ」と言う。岩波CDブックの「ドイツ名詩選」(生野幸吉、檜山哲彦編;朗読付き)では取上げられていない。

 ドイツ人達に無視されても、東洋の一般的な日本人たちが愛唱しているのだから、カール・ブッセは悦んでいることだろう。
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