大文字保存会は、10日深夜に臨時理事会を開き、十分に時間を掛けて検討した上で、陸前高田の松倒木を送り火に加えることへ方針変更、併せて多くの人々に混乱を与えたと謝罪することを決めた。色々な経過があったが、保存会の真摯な態度を歓迎したい。これで、五山揃いながら慰霊を籠めて「高田の松」を送り火へ加えることになった。
京都新聞によると、
もう思い無駄にしない 大文字保存会が謝罪
岩手県陸前高田市から新たに届いたマツを送り火で受け入れる方針を決めた大文字保存会(京都市左京区)は11日、当初の中止から今回の決定までの経過について謝罪した。五山がそろって被災地のマツを燃やすことになり、慰霊と復興祈願の火をともす16日夜に向けて思いを新たにしていた。
「陸前高田市の皆さんや京都市民など、多くの皆様に迷惑と心配をかけた」。大文字保存会の松原公太郎理事長(58)は11日、京都市左京区の保存会事務所前で沈痛な表情で語った。
新たなマツの受け入れについて11日未明まで5時間以上に及んだ理事会で議論したことについては「いろんな意見もあり揺れたのは確か。心理的プレッシャー、言葉にできないものがそれぞれにあった」と説明した。
議論の中で、ほかの保存会から「五山そろってやることが良い」との呼び掛けがあり、京都市から放射能検査について「責任を持つ」との回答があったとして理解を求め、11日朝に最終決定した。
中止した当初の計画に携わった陸前高田市の関係者にも連絡し、「理解まではいかないが、了解いただいた」という。
京都市との関係について「多少の行き違いはあったが、修復したい」と述べた。被災した人たちへの思いを問われると、「点火終了後に現地におわびに行かないといけないと考えている」と何度も頭を下げた。
□「意思疎通不足」門川市長が陳謝
京都市の門川大作市長は11日、中京区の市役所で記者会見し「大文字保存会の判断に委ねたが、(実施すべきとの)市の考え方をより明確にし、強い意志を持ってお願いすべきだった」と保存会との意思疎通が不十分だったとの認識を示し、陳謝した。
門川市長は計画中止を受けて全国から風評被害を懸念する批判が相次いだことに「多くの被災者や市民に寂しい思いをさせ、傷つけた。心からおわび申し上げたい」と述べた。
また「宗教的色彩のある地域の伝統行事に行政がどこまで関与すべきなのか。そこが難しい」と振り返り、「今回の問題を教訓に、地域の意識を尊重すると同時に社会的影響も考慮して意見を申し上げていきたい」と語った。
市が新たに受け入れるマツを、五山の保存会がそろって燃やす方針を決めたことについて、「このまま放置していれば被災地の風評被害につながりかねない。京都市民の願いを受け止めていただいた保存会の英断に、感謝の気持ちでいっぱいだ」と述べた。
【 2011年08月11日 23時37分 】
8月8日には、松原公太郎保存会理事長が陸前高田市を訪問、関係者へ予定通りに高田の松を送り火に加えることが出来そうもないことを謝罪した。そして、地元の人々と共に、迎え火の薪積み作業に参加した。
松原理事長は、現地に残る凄まじい瓦礫の姿を見て、強く考え直しをする気持ちになったのだろう。7万本と言われた「高田の松原」で、たった1本だけ残った雄々しい<奇跡の一本松>の姿は、理事長に再度の検討を考えさせたのではないか。
一方で、私達は五山送り火を準備する各保存会の見えない努力を思い起こしたい。彼等はボランティアであり、無償で火路の準備、大量の薪の積み上げ、送り火の後始末を坦々とこなす。そうした伝統技術の維持に、保存会の人々は誇りと自信を持っているに違いない。
本年は、五山送り火の薪全てに「高田の松」が加えられ、東北大震災の犠牲者慰霊を含めた盂蘭盆会が行われる。様々なことを思い重ねながら、壮大な夜のページエントを眺めることにしよう。
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