陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

独VW社の排ガス不正問題が急浮上

2015-09-24 05:30:44 | 欧州関係
 読売新聞によると、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題で、マーティン・ウインターコーン最高経営責任者(CEO)は23日、「責任を感じており、CEOの職を辞する」との声明を発表したとのこと。クリーン・ディーゼルエンジンを搭載したリコール台数は1,100万台、改修費用として当面8,700億円を計上したVW社としては、まずCEOの馘首から具体的対策を始めた。

 この問題の経緯と背景については、産経新聞が詳述している。

ブランド失墜で経営に打撃 トップの経営責任も 世界販売首位遠のく
2015.9.24 00:13 産経新聞

 独VWグループが排ガス不正問題で揺れている。意図的に不正行為を行っていた疑いが濃厚で、トップの経営責任問題も浮上。VWはクルマの環境性能の高さをアピールしてきただけに、ブランドイメージへの影響は甚大だ。影響は米国のみならず世界に広がっており、経営に大きな打撃を与えるのは必至で、2015年通年に世界販売台数首位を目指す道は遠のいた。
 「顧客の信頼を裏切ったことを深くおわびする」。VWのウィンターコルン最高経営責任者(CEO)は22日に発表した動画声明で、排ガス不正問題について全面的に謝罪した。
 日本では問題のディーゼル車を正規ルートでは販売していないとされるが、日本の自動車業界関係者は「日本は環境意識の高い市場なのでブランド力が低下する恐れがある」と指摘する。
 日本自動車輸入組合によると、VWは新車投入が滞った上期(1〜6月)の国内販売が前年同期比16.5%減の2万9666台と落ち込み、メルセデス・ベンツ(3万2680台)に16年ぶりに首位を奪われた。
 このため7月以降は、高級セダン「パサート」の新型車や、主力車「ゴルフ」のプラグインハイブリッド車(PHV)を相次いで発売。巻き返しを期すつもりだったが、今回の問題で出はなをくじかれた恐れもある。
 米環境保護局(EPA)によると、VWグループは2008年以降に米国内で販売したディーゼルエンジンの乗用車約48万台に違法ソフトを搭載し、大気浄化法違反の疑いがある。違法ソフトは「試験」状態を検知すると、排ガス浄化機能がフル稼働して基準を満たすが、実際の走行時には同機能が大幅に低下する仕組みになっている。不正対象車が実際に走行した際の窒素酸化物(NOx)の量は基準の最大40倍になるという。
 米メディアによると、米国がNOx基準を厳しく設定する中、VWはこの基準を守ると燃費性能が低下してライバル車よりも見劣りするのを嫌気し、不正に手を染めたとみられている。
 ウィンターコルンCEOは「可能な限り早期に徹底的で透明な調査を行う」と述べるとともに、独メディアによると「私を信頼してほしい」とトップの座にとどまる考えを示唆した。ただ、23日に監査役会の主要メンバーによる会議が行われ、トップの責任論を協議したもようだ。
 不正問題の影響は世界に広がっている。VWグループにアウディ、ポルシェなど10を超えるブランドを持つが、ブランドイメージの失墜からこれらブランドの世界販売に影響に及ぶ可能性もある。
 また、米メディアによると、本国のドイツではメルケル首相が事態の徹底究明を求め、フランスやイタリア、韓国の当局もVWへの調査に着手。米司法省も刑事責任を問う可能性を含めて調査を始めた。
 米国では所有者らの訴訟が起きており、「VWはより長期にわたって一段と多額の費用支出を迫られる」(在米自動車ジャーナリスト)との見方が多い。訴訟の行方次第では、収益を長期間圧迫しかねない。
 VWは世界販売台数で15年上期にトヨタ自動車を抜いて初めて首位に立った。通年でも首位を狙っているが、道が遠のいたと言わざるを得ない。今回の問題でVWの先行きは見えなくなった。(ワシントン 小雲規生、会田聡)

             ◇

【用語解説】VWの排ガス不正問題
 VWの一部ディーゼルエンジン車が違法ソフトウエアを搭載し、米国で排ガス規制を不正に逃れていた問題。VWは問題車両が世界全体で約1100万台に上る可能性があると発表、対策費用として65億ユーロ(約8700億円)を今年7〜9月期に計上する。
 また、米メディアによると、米当局は大気浄化の法令違反でVW側に最大約180億ドル(約2兆1600億円)の民事制裁金を科す可能性がある。
http://www.sankei.com/economy/news/150924/ecn1509240003-n1.html


 今年(2015)6月下旬、財政問題でギリシャをユーロ圏から追い出すという強硬な方針を示したメルケル政権だが、その頑なな姿勢に欧州連合(EU)諸国は辟易していた。メルケル首相は、その悪評を挽回すべく、イスラム難民80万人を受け入れるとの人道的発言を行った所、これは逆にEU諸国へ混乱を拡散する事態を招いている。

 それに加えて、VW社排ガス問題が表に出た。環境保全には、クリーン・ディーゼル車が有効と獅子吼しながら、裏で詐欺まがいのことをやるようでは信用は地に落ちる。これは、自動車のみならずモノ作りで定評のあるドイツへの信頼を著しく毀損する内容を含む。人権問題を声高に標榜しながら、世界一の暴力国家、シナ・中共へ多大の投資を継続するドイツに対し、冷ややかな目で見る向きも多い。

 この問題をドイツの一企業が起こした不祥事として独政府が切り捨てるだけでは済まないような気がするのである。

(参考)

トヨタ車の大量リコールが世界に拡散 (2010)
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/f9f06d3bbaf190e2bf5a9f698a3e2907
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