漢詩<春望>(国敗れて山河在・・・)などで著名な唐代の詩人・杜甫は、47歳の時に募(つの)る鬱々とした気持を酒で晴らしていた。曲江は、唐の首都・長安の東南にある大池で、玄宗皇帝以来その周辺に大歓楽街が発展していたと言う。<安禄山の乱>の後、ようやく左拾遺の官位にありついた杜甫であったが、朝廷の雰囲気は彼の真面目さを受け入れないものがあった。
杜甫は、宰相人事の発言に関して粛宗帝の怒りを買い、乾元元年(758)に地方へ追いやられた。
移動の直前、杜甫は親しんだ曲江を題材として2つの漢詩を作った。その二つ目が次に示す内容である。4連目が70歳は当時稀(まれ)な老齢であるとした表現になっている。これが、70歳を【古稀】、現代は略字化して【古希】と呼ぶ由来といわれる。
曲 江(其の二) 杜 甫
朝 囘 日 日 典 春 衣
毎 日 江 頭 盡 醉 歸
酒 債 尋 常 行 處 有
人 生 七 十 古 來 稀
穿 花 蛺 蝶 深 深 見
點 水 蜻 蜓 款 款 飛
傳 語 風 光 共 流 轉
暫 時 相 賞 莫 相 違
(意訳:茶絽主)
朝廷から退出すれば、毎日のように春着を預けて、
何時も曲江のほとりで泥酔して戻る。
酒代のツケは毎度のこと、行く先々の店に貯まっている。
この人生、七十歳までの長生きは滅多にないから、
花の奥で蜜を吸う揚羽蝶や
水面で軽く尾を叩き緩やかに飛ぶトンボのように
今のうちにせいぜい楽しんでおきたい。
蝶や蜻蛉、春の風物に対して語り掛けようではないか。
共に流れ行く時の中、暫くの間でいいから、
お互いに誉め、争いなど忘れよう。
5連目の「蛺 蝶 深 深 見」(きょうちょうしんしんけん)、6連目の「蜻 蜓 款 款 飛」(せいていかんかんひ)の重ねた表現に、漢語のえも言われぬリズミカルな美しさを覚える。古代漢語を用いた唐詩における韻や平仄(ひょうそく)は、現用のシナ語(北京語)とは大きく異なる。大体、あの簡略体漢字にはロマンティシズムが感じられぬではないか。
杜甫は、地方官を辞した後、59歳で逝去した。牛肉の食べ過ぎとの逸話が残っている。彼の<曲江>にある様に、【古稀】まで生きることは出来なかったけれども、杜甫の名詩は永久不滅と言えよう。
杜甫は、宰相人事の発言に関して粛宗帝の怒りを買い、乾元元年(758)に地方へ追いやられた。
移動の直前、杜甫は親しんだ曲江を題材として2つの漢詩を作った。その二つ目が次に示す内容である。4連目が70歳は当時稀(まれ)な老齢であるとした表現になっている。これが、70歳を【古稀】、現代は略字化して【古希】と呼ぶ由来といわれる。
曲 江(其の二) 杜 甫
朝 囘 日 日 典 春 衣
毎 日 江 頭 盡 醉 歸
酒 債 尋 常 行 處 有
人 生 七 十 古 來 稀
穿 花 蛺 蝶 深 深 見
點 水 蜻 蜓 款 款 飛
傳 語 風 光 共 流 轉
暫 時 相 賞 莫 相 違
(意訳:茶絽主)
朝廷から退出すれば、毎日のように春着を預けて、
何時も曲江のほとりで泥酔して戻る。
酒代のツケは毎度のこと、行く先々の店に貯まっている。
この人生、七十歳までの長生きは滅多にないから、
花の奥で蜜を吸う揚羽蝶や
水面で軽く尾を叩き緩やかに飛ぶトンボのように
今のうちにせいぜい楽しんでおきたい。
蝶や蜻蛉、春の風物に対して語り掛けようではないか。
共に流れ行く時の中、暫くの間でいいから、
お互いに誉め、争いなど忘れよう。
5連目の「蛺 蝶 深 深 見」(きょうちょうしんしんけん)、6連目の「蜻 蜓 款 款 飛」(せいていかんかんひ)の重ねた表現に、漢語のえも言われぬリズミカルな美しさを覚える。古代漢語を用いた唐詩における韻や平仄(ひょうそく)は、現用のシナ語(北京語)とは大きく異なる。大体、あの簡略体漢字にはロマンティシズムが感じられぬではないか。
杜甫は、地方官を辞した後、59歳で逝去した。牛肉の食べ過ぎとの逸話が残っている。彼の<曲江>にある様に、【古稀】まで生きることは出来なかったけれども、杜甫の名詩は永久不滅と言えよう。
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