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フランス映画は霧の中から突然に



17世紀、ルイ14世の技術将校、城砦建築と城塞包囲攻撃の名手、
セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバンの建てた城砦。
歴史を通してフランスと対岸の英国は戦争ばっかりやってましたから...
満潮時は海の中に佇む。


最高に天気がよかったので、ベルギーのブルージュから、フランスの海岸を目指した。


在ベルギーの友人が教えてくれた「秘密の」海岸へ行くのを思いついたのは、ブルージュが自転車レース開催で騒がしかったからだ。

フランスのカレーへ1時間、そこから海岸沿いに20分ほど南下。

彼女曰く、夏場でものんびりしていて混雑することはないし、当然ビーチは無料、路駐可能、アイスクリームも安いし、シーフードもおいしい...と。


海に続く、見晴らしのいいまっすぐな坂道を走っている時は蒼い空がまぶしかったが、車を止めると海の方向だけ春霞、いや、霧が...




釣りをする人も、まるで夢の中にいるように見える。
その向こうは別の世界...

霧笛がもうなんともいえない音で鳴る。
異国趣味といえばいいのかな、郷愁を誘うといえばいいのか、惜別の情と言えばいいのか、この懐かしさと心細さ、夢を見ているのか、わたしは。




ムール貝を採取するグループも。
まるで「夢拾い人」。そんなのがあるのなら(笑)。


4センチ以上に成長しているムール貝は一人5キロまで取って個人で食べていいんですって!!




水際で長靴着用ではしゃぐ子供達...

“the world is your oyster” 世界はムール貝。
いわく、あなたは何でもやりたいことをできる、好きな場所に行ける、その能力がある! という寿ぎ。




15分くらいで、さっとカーテンを開けるかのように霧は晴れていった。







あんなに神秘的で、夢の中を彷徨うようだった釣り人の向こう側も、なんのことはない、普通の海...

......


ダバダバダ ダバダバダ・・・ダバダバダ ダバダバダ

フランス映画 『男と女』 (Un homme et une femme, 1966) を思い出す。
ロマンティックなラブ・ストーリー。

フランシス・レイの音楽は、シンプルなメロディの反復で、登場人物の行ったり来たりのためらいの心情や、記憶の時間の方向性のなさ、波がひいては寄せるような効果を生む(霧の中を歩いているような...)。
モノクロ映像とカラー映像が交錯し、回想シーンと、時間の断片的なカットが多用される。

これは人が自分自身の記憶や、映画や小説で見た自分のものではない記憶をたぐる時の感覚に近いのか...
鮮明な記憶と曖昧な感覚が入り混じるような。
そうだ、今わたしが霧の海岸で思い出しているのは、「これは誰の記憶?」

おセンチながら、ロマンティックだと認めざるを得ないのは、巧みな映像・音楽・編集の組み合わせが、「今ここではないどこかにすばらしいものがある(あった)」という桃源郷思考を掻き立てるからか?

また、セリフの少なさや他愛なさは(わたしでも字幕なしで楽しめる)、恋愛の本質が言葉ではなく、共有する空気感や一瞬の表情に宿る ことを示唆しまいか。
余白と未完成。これ大事。


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