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Brugge Style
さようなら、パースハース
娘がシュノーケルを紛失したので、夫と一緒に行きつけのダイビングショップへ行った。
その時のことである。
会計時、コンピューターにポイントを加算するため、娘に会員名を訪ねた女主人、
「えっと、今までにシュノーケル、マスク、スーツ、それからダイビングバッグのポイントが溜まってるわ」
と言ったのである。
はて面妖な。ダイビングバッグは今年のパースハース(復活祭のウサギ。卵形のチョコレートととともに、子どもにプレゼントを持ってくる)が娘に持って来たのに、なぜこんな普通の店に購入記録が...
「パパ...」と娘は薄笑いを浮かべて夫の彼を見たそうだ。
彼らが帰宅してからこの話を聞いたわたしは憤懣やる方なかった。
この女主人、不用意が過ぎる。
もし、うちの旦那に不倫相手があったとして、彼女の趣味がダイビングで、色々買い与えてやっていたとしたらいったいどうするつもりなんだね。
娘いわく、今夕、この瞬間までパースハースのことを信じていたそうだ。
おそらくそれは本当だろう。なぜならば今年の復活祭の朝、いつもパースハースがプレゼントを置いて行く定位置にプレゼントがないと言って、この世の終わりのように大泣きしたのは記憶に新しいから。
こうやって世界のひみつのひとつひとつが彼女の前にベールを剥がれていくのだ、と思うと、なんだかすべてがつまらなく感じ始めた。
「パースハースが本当にいないわけではないんですよ。子どもを持ったお父さんとお母さんは誰でもパースハースになれるの。あなたに子どもができたら今度はあなたがパースハースになるんですよ。その子もまたパースハースになるの。すてきでしょう?」
前にも書いたことがあるが、事実、プレゼントを持ってくるのが魔法を帯びた3月ウサギの特権ではなく、誰もがウサギになれるとしたら、それはやはりマジカルなことである。
あるいはこれは「王殺し」のような機能だったのだろうか? 森羅万象の全き秩序を司る存在として王位に就いている人間は、その王位を保証する能力を失った時に殺害され、新たな王が擁立され、秩序を回復させる...みたいな。
上記の話を聞いたとき、確かにわたし自身が魔法を失ったように感じたし。
「うん。....でもまだ聖クラースのことは信じてる。だって本当に見たことあるの!」
娘は世界をあきらめていないかのように言った。
聖クラースをどこで見たんでしょうか...
それとも「信頼できない語り手」となって、彼女は無邪気を装っているんでしょうか...
*聖クラース サンタクロースの原型になった子どもの守護聖人。12月6日に子どもにおもちゃを持ってくる
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