自らの魚雷で沈没した潜水艦

アメリカの潜水艦タングは、アメリカで最も多く、１１９５隻建造された、
ガトー級潜水艦の９５番艦として１９４３年（昭和１８年）１０月に完成しました。

排水量１５２５トン、速度２０,３ノット（時速３７キロ）、
魚雷発射管１０門、乗組員８０名の優秀な潜水艦です。
艦長は就役以来変わらずに、リチャード・オカーン少佐でした。　　　　　　　
タングの作戦海域は、太平洋の日本艦船の攻撃です。
３回の出撃で２２隻（８万トン）の日本商船を撃沈した際立った記録保持者でもありました。

１９４４年（昭和１９年）１０月、４回目の出撃。
タングは中国南部海域で、日本からシンガポール、ボルネオに、
石油を引き取りに向かう１３隻の日本油槽船団を発見しました。
この船団には駆逐艦２隻と海防艦５隻が随伴する強力な護衛です。

タングは攻撃位置に着くと６本の魚雷を発射し、１隻を撃沈しました。
この時、海防艦に発見され爆雷攻撃を受けましたが、幸い危機を脱する事ができました。
タングは再び潜望鏡深度まで浮上し確認すると、攻撃で大破させた輸送船を発見。
これにとどめを刺す為に浮上して残った魚雷２本を発射しました。

その時、１本の魚雷が突然海面上をジャンプし始め、
その直後から左方向に円を描く様に旋回を始めたのです。

そしてその先に居たのは、何と自分の艦だったのです。
オカーン艦長は仰天しました。
彼は魚雷を避ける為に潜航を命じましたが、遅すぎました。



魚雷はタングに命中しタングは急速に沈没していきました。
司令塔にいた艦長ら４名は衝撃で海上に跳ね飛ばされ、
８名は脱出し、水深が４０メートルと非常に浅かったので、
何人かの乗組員も脱出できた者がいた様です。
しかし、７０名の乗組員が死亡しました。
結果的に２隻の撃沈が認められ、撃沈記録２４隻、９３０００トンが記録され、
アメリカ潜水艦第一位の撃沈記録保持者となったのでした。

とは言っても、自らの魚雷で沈んだ潜水艦という不名誉な記録保持者でもあるのですから、
これは悲劇というより、むしろ喜劇と言うべきなんでしょうね。