
戦艦長門(ながと)は長い間、日本海軍の象徴であり、日本国民の誇りでもありました。
1920年(大正9年、完成)全長225メートル。39000トン。
完成時には、世界の戦艦ビック7と言われた巨艦でした。
(写真、長門の艦首の背景に、戦艦大和が見えます)
長門型の2番艦に陸奥(むつ)がありましたが、
陸奥は1943年に広島湾に停泊中に謎の爆発で沈没してしまいました。
故に日本国民は戦艦長門を海軍の象徴として永くあがめていました。
後に、1941年(昭和16年)に世界最大の戦艦(大和・武蔵)が完成しますが、
その戦艦(大和・武蔵)の存在を知っているのは一部の海軍上層部だけであり、
一般国民は全くその存在を知らず、知ったのは戦後になってからでした。
さて、映画「トラトラトラ」・・ハワイの真珠湾奇襲攻撃を描いた、
1970年公開のアメリカ映画です。
日米合作と思っている方もいるでしょうが、合作ではなくアメリカ映画です。
当時のレート(1ドル360円)時代では、100億円前後の制作費だったそうです。
つまり途方もない大金をかけた映画だったのです。

私がこの「トラトラトラ」をDVDで観たのは、かなり前です。
映画館で観たのではなく、あくまでDVDだったのです。
その時は映画として、ストーリーだけを追っていたのでした。
あの、黒澤明監督という事で興味を持ったファンも、きっと居たと思うのですが、
これはアメリカ映画であり、日本映画の黒沢作品ではないのです。
黒澤明は、製作途中で監督を降りて(降ろされ)てしまいました。
アメリカ的な合理主義と黒澤流の完璧主義とに温度差があったのでしょうか?


以前から、山村総演じる山本五十六中将とその背景にある戦艦とに、
「あれ?何か変だな」とは思っていましたが、
改めて映像を観ると、やっぱり戦艦の大きさが半端ではない。
1970年といった時代にはCGも無かった筈なのに・・?
だったら、このリアルな戦艦はどうなってるの?
答えを知って私はビックリしました。
何と実物大の戦艦を全部、木で造ってしまったのです。
そんな事知らなかった~。


私が、実物大の戦艦大和を観に尾道に行ったのは2006年の事でした。
対岸には尾道の観光名所、千光寺があり、そこから一望出来たのです。
しかし、戦艦大和の全長263メートルの内、
右後ろには何もありません、主に左側2/3位が再現されそこで撮影されたのです。
そして鐘楼の上部構造物はありません、それは映画にする時にはCGだったのです。
でも、世界最大を肌で感じる事は充分に出来ました。

それに比べて戦艦長門は完全な復元だったみたいです。
船体の下には不要になった大量の電柱で支え、上は全部木とべニア板で造ったのです。
長門の横には、航空母艦赤城も造りました。
しかし、赤城は完全復元ではなく主要部分のみの再現でした。
飛行甲板と艦橋があれば、それで良かったのです。



福岡県の芦屋海岸には大勢の観光客が観光バスで訪れたそうです。
1969年頃と、37年後の2006年だと、
情報量の差で、観光客の数は比較にならない差だったと思われます。
その頃の私はそれほどの軍艦オタクではなかったし、
もし、それを知ったからといって、遠い九州まではきっと行かなかったと思います。


航空母艦、赤城は本来は戦艦になるべき艦でしたが、空母になった巨艦です。
映画では長門ほどの利用価値は無かったので、
航空機が発艦する姿を撮れれば良かったのでしょう、完全復元ではありませんでした。



赤城には27機の戦闘機を甲板に載せて撮影しましたが、
日本の戦闘機ではなく(そんな機体は残っていなかった)
アメリカのノースアメリカンT-6という機種だったそうで、
この機種は色々な形で映画にはよく使われたそうです。
戦闘機が空母に着艦する時は、かなりな低高度での着艦になる訳ですが、
その低高度が実際に出来ないと映画のシーンとしては不完全であり、
それが出来たのは、海軍出身パイロットと陸軍出身パイロットでは、
まるで勝負にならない確率で、海軍パイロットが優秀だったそうです。
やはり海上で狭い航空母艦の甲板に着艦できないと話にならない海軍パイロットは、
その点での練習量が陸軍とは違っていたのでしょうね。
戦艦長門は、終戦時まで生き残った戦艦4隻の中の1艦でしたが、
伊勢、日向、榛名の3艦は大破し着底した状態でしたが、
長門だけが中破で航行可能でした。
しかし、1946年(昭和21年)アメリカの核実験により、
ビキニ環礁で沈没し、日本国民の象徴は遂にその姿を消していきました。
しかし、私がまだまだ若かった時に、遠い福岡県で、
これほどの実物大戦艦が再現されていたとは、驚きでした。
軍艦好きの方は、きっと口を揃えて「見たかったな~」っとため息をつきますね。
これから先、これほどの軍艦の再現があるとは、
予算的な事もあり、また時代的な背景もあり、チョッと無いのでしょうね。
残念だったな~、本当に見たかったな~。
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