熱心に、おせんではない、誰か他の人にでも語りかけているかのように話します。
「一緒に探すって、そんなことできしまへんやろ、第一、なんと言わはっても身分が違うさかい。でも、うれしうおす。そんなこと思っていてくれはったなんて」
じっと、おせんは政之輔の一言一言を、下を向いたまま、ただただ、聞きながら思いました。
そんな無味乾燥な朴念仁な政之輔の話が続いているのですが、段々と聞いているうちに、切ないような胸が何かに締め付けられるような、それでいて、子供の頃に野原で転がり込んだ時のような、躍るような心地よいい気分が、じわっと心の奥底に浸り来るように、おせんは、思えるようになりました。そして、政之輔の話がこのまま、ずーと何時までも続いて欲しいようにも思われます。
「おせんさん。約束してくれますか。それを聞けへんかったら長崎なんかへは行けしまへん」
政之輔は、突然、おせんの前にやってきて、手を取るようにして、
「おせんさんなしでは、これからは生きてはいけまへん」
硬く硬くおせんの手を握り締めたまま言います。
おせんは、余りの、このとっさの政之輔の振る舞いに戸惑いながらも、ただ、顔を上げて政之輔を見つめたまま、何か言おうと思うのですが、言葉が見つからず、ただ、黙ったまま、目にはいっぱい涙を浮かべて頷くのでした。
「ありがとう。これで安心して長崎にいけます。帰るまで待っていてください。何があってもです。女も決して損をしないということを、是非、おせんさんに知ってもらいたいのです。連理の枝となって試したいのです」
「はい」
一段と硬く硬く握られた手から伝わる政之輔の心の甘ずっぱいような温もりを感じながら、かすかな声にはならないように、やっと声が出ました。このまま政之輔の胸に飛び込んでいけたらと思ったのですが、その時、政之輔は元の座に返り、後ろにある、何か、何時ものとは違った包みを取り出します。
「是非、おせんさんに、今、お頼みしたい事がございます。この包みを当分の間、長崎から帰ってくるまで預かって欲しいのです」
でも、この包みは、それからずーとおせんの元に預けられたままになりました。
「一緒に探すって、そんなことできしまへんやろ、第一、なんと言わはっても身分が違うさかい。でも、うれしうおす。そんなこと思っていてくれはったなんて」
じっと、おせんは政之輔の一言一言を、下を向いたまま、ただただ、聞きながら思いました。
そんな無味乾燥な朴念仁な政之輔の話が続いているのですが、段々と聞いているうちに、切ないような胸が何かに締め付けられるような、それでいて、子供の頃に野原で転がり込んだ時のような、躍るような心地よいい気分が、じわっと心の奥底に浸り来るように、おせんは、思えるようになりました。そして、政之輔の話がこのまま、ずーと何時までも続いて欲しいようにも思われます。
「おせんさん。約束してくれますか。それを聞けへんかったら長崎なんかへは行けしまへん」
政之輔は、突然、おせんの前にやってきて、手を取るようにして、
「おせんさんなしでは、これからは生きてはいけまへん」
硬く硬くおせんの手を握り締めたまま言います。
おせんは、余りの、このとっさの政之輔の振る舞いに戸惑いながらも、ただ、顔を上げて政之輔を見つめたまま、何か言おうと思うのですが、言葉が見つからず、ただ、黙ったまま、目にはいっぱい涙を浮かべて頷くのでした。
「ありがとう。これで安心して長崎にいけます。帰るまで待っていてください。何があってもです。女も決して損をしないということを、是非、おせんさんに知ってもらいたいのです。連理の枝となって試したいのです」
「はい」
一段と硬く硬く握られた手から伝わる政之輔の心の甘ずっぱいような温もりを感じながら、かすかな声にはならないように、やっと声が出ました。このまま政之輔の胸に飛び込んでいけたらと思ったのですが、その時、政之輔は元の座に返り、後ろにある、何か、何時ものとは違った包みを取り出します。
「是非、おせんさんに、今、お頼みしたい事がございます。この包みを当分の間、長崎から帰ってくるまで預かって欲しいのです」
でも、この包みは、それからずーとおせんの元に預けられたままになりました。
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