私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

おりおりのさまをいふとき

2013-05-18 13:26:01 | Weblog

 四季折々の自然や人々の動きを詠むときは、目の前に実際に展開されてさまを少しも違わないように詠んで、聞く人が出来上がった歌を“あはれげ”に、本当だ、実際そうだなと感動を与えるような歌でなくてはならない。要するに、情がこもった歌とは自然の為せるわざを、そのまま言葉に言い表わばいいのだと。その例の歌として
  
    きのふこそ年はくれしか春霞かすがの山にはやたちにけり
 をあげています。
 そして、「きのふこそ」というのは、「きのふのようにおもえる」ということで、昨日、現実にここてあったと云うことではない。 “きのうこそさなへとりしかいつのまにいなばそよぎて秋風ぞふく”から見ても分かると云うのです。だから、この“きのふこそ年は・・・”は、はやくともむつきの七日八日に詠んだことになります。歌が出来た日まで言い当てています。たいしたものじゃあございませんかね。!
 春霞は、毎年、むつきの初めには立たないのだが、年のくれしはきのふのようなれど、今年は早くも春が来たなあ、もう霞が立っていると云う、春の景色をみそめて驚き喜んでいるの情がよく分かる歌であり、大変めでたく、あはれげなる歌だと。